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浅草ランチ

バックシートが心地よすぎるのも問題だ。微睡の口に触れぬよう、とりあえず運転手に話しかけてみる。
「なぁ秋山。お昼にいい店紹介しろよ。敷居は低い方がいい」
「並びますよ」
「かまわん」
「浅草寺の近くに・・・」
川向こうに大きな金色のうんこがたなびく、この景色も久しい。雷門をくぐり、しばらくして路地に入った。秋山の地図は正確だ。
思いの外空いている。カウンターから店を見渡し、店主の鋭い眼光を素通りして目を落とすと、そこにメニューはあった。
特上、上、並、エコノミー。「特上を一つ」
「特上ですと二匹になりますがいいですか」
耳を疑った。「こちらは天丼屋ですよね」
「はい。カエル二匹にご不満でも?」
「秋山!てめー」車中で大声を上げていた。

*金色のうんこ(金うん)は浅草駅から隅田川を挟んだ対岸です。
画像はN.O.T.Eさんの記事をご覧ください。


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