久々に星野源の恋を聞いて感じたこと

※今回はマニアックな邦楽解説になります。

Mリーグお疲れ様でした!麻雀の話が続くかと自分で思っていたのですが、ホットな話題が出たので回り道!

結婚のことはさておき、恋は2016年ですってもうそんなに経ちますか。この曲は音楽的に新しいとか実験的では無いので短めにちゃっちゃと終わらしましょう。

●目次

○テンポが早い

○全部うるさい

○うるさくても歌が届く理由

○イントネーションとメロディの関係性←ここだけ読んで頂ければ幸い

○恋でのイントネーション

●テンポが早い

インタビューにもありますが、この曲不自然に早いです。なのにここからテンポを変えると全然違う曲になる絶妙さがあります。ダンスミュージックが好きな人は実感すると思いますがテンポは曲にとってめちゃくちゃ大事です。

恋ダンスが脳内でMIXされるので今では何も違和感が無いですが、フラットな姿勢で聴くと家でも外でも微妙な塩梅ですね。それぐらいテンポに個性があるのは珍しい。

●全部うるさい

低音ベースから高音ストリングスまでまず音域が広い、その上に全部前に音を出しているので音量を上げて聴くとすぐ耳が疲れます。かと言って左右に音を広げてまろやかにしているでは無く、音の塊がどかんどかんくるんですね。

この全然うるさい技法は日本独特のMIXで、浮世絵MIXと名付けています。やっていることが漫画やアニメなんですね奥行きを完全にシャットアウトしています。

※ネガティブな意見に思われたかも知れませんが褒めてます笑!もちろんこの曲はわざとそうしているので。

●にもかかわらず

歌がちゃんと聞こえるのはMIXの技では無く編曲の技です。他の楽器も好き勝手やっている様に見えて、ボーカルのメロディには被らない設計になっています。

被らない上に楽器単体で聞いても楽器のメロディが口ずさめるぐらいの、違う曲を同時に弾いてる感は昔のプログレなどで目立ちましたが2010年代の邦楽にしては珍しいのでは無いでしょうか。

●音符の配置について

和音とメロディの関係についても一通り分析しましたが、専門用語バリバリにならざるを得なかったand私がそんなに詳しくも無いダブルパンチだったので記載しません。が、星野源のメロディは難しすぎず簡単すぎず次に述べる

日本語と音符の関係が素晴らしいです。

●星野源の単語配置の強さ

ここからが今日の本題です。彼は歌詞が良いとか悪い関係なく、歌詞の配置の仕方が絶妙に上手い人と言う印象があります。

邦楽に大事なのは、歌詞にリスナーが乗れるかどうかです。感情移入ってことですね。そのために大事なのは、

日本語のイントネーションとメロディを合わせる

ことです。方言がありますので絶対はありませんが、例えば、かまぼこの『か』にアクセントをつける日本人は少ないと思います。ダイソンじゃねぇんだからそこにアクセント置くなよ!ってツッコミが入りそうですね。

特に歌詞に感情をのせる場合は作曲者は音符を丁寧に配置します。

もう少し細かいことを言うと、どれくらい文章として聞かせるかも大事になります。分かりやすい例だとアンジェラアキの手紙がそうでしょう、彼女だからこそ日本語と音符の関係を分けて繋ぐことが出来たと思います。和音やメロディ単体が美しいのではなく、手紙に合うメロディをのせたこそ美しくなりました。

それを逆手に取ったのが西野カナです。トリセツは歌詞を聞かせたいはずなのに、イントネーションがちぐはぐです。こうする事でただの説明文にインパクトがのります。元々説明文なのでメロディがおかしくても脳内で修正され新しい方言の様に入ってくる。まぁ皆さん歌詞に踊らされすぎてこんな事言っても伝わらないわけですが笑

ちなみにこのイントネーションずらしの発見は昔から国内でもブームがありましたが、Kポップから逆輸入された再発見の技法です。現在ではイントネーションずらしは当たり前の技法でもっと発展し、誰にも気付かれないまま新曲としてリリースされています。

●すいません星野源に戻します

アンジェラアキと西野カナは文章というまとまりで聞かせる事に重きを置いていました(そう言う時代です)、星野源の場合は単語単位で配置しています。恋の歌詞だけ記憶を頼りにスラっと言える方少ないのでは無いでしょうか。

彼は日本語を大切に歌う人でもありますが、歌詞を物語にはしない歌詞を作るセンスがあります。そうする事でミュージックとして曲を進めるスピード感と曲にクールさが宿ります。かといって分裂しているわけでも無いし遠くで韻を踏んだり部分的にイントネーションをずらす遊び心満載の人です。

この絶妙なバランスを保っているのが星野源が売れ続ける理由ですね。良い曲なのに何が良いか分からない状況にするのが名曲と呼ばれるものです。

●恋のイントネーション注目ポイント

書いてるうちにイントネーションの話になったので最後に恋のイントネーションずらしを紹介します。

まず、1番の『カラス』。アクセントおかしいですね、カラスの代わりにカモメだと合いますが、ここでカラスに違和感を与えて2番で白鳥を置く事で白と黒の対比を分かりやすく表現したのがグッドポイント!

次に2番の出だし、『みにくいと秘めた想いは』みにくい、と、秘めた想いはを逆に配置するとイントネーションが合いますね。暇な方は『秘めた想い、みにくければ』と歌詞を変えて歌ってみて下さい。合いましたがどうでしょう全然インパクトが出ませんね。ここで聞いてもらいたい単語『みにくい』を色付きしないといけないので、秘めた色付きじゃ何かむっつりスケベなニュアンスになっちゃいます。

●まとめとおまけ

こんな感じで今回はメロディとイントネーションの歴史は邦楽を語る上で欠かせない要素なのですが、今では外国語も入り混じる歌詞が圧倒的に多く、ぜひ2010年代以前の音楽を聴く際の参考にして貰えればと思います。

また、恋はキーの設定も絶妙なのでカラオケでキー変更するとめっちゃ変な調子になります。キーを変更すると例えばビオラからチェロにしないといけないなどの楽器変更や、和音をバラして再配置しなければならない場合が多く、これは歌った人が悪いとかじゃないんですけどキー変更した歌ってみたを聞いて頂くと違和感に気づくと思います。

次回は宇多田ヒカルとBTSの共通点を話題にします!今度こそ一瞬で終わります!たぶん!!!



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