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2020年上半期お気に入り音楽


 2020年の上半期で良かった音楽をまとめてみました。作品を知るのは、Spotifyのおすすめから曲を聴いて、というパターンが増えていますが、それに加えてライムスター宇多丸さんのラジオ「アフター6ジャンクション」の企画「月刊ミュージックコメンタリー」でハマる音楽も多くなっていて助かっています。
 順番は、出た順でもお気に入り順でもなく、何となく並べただけです。


Everything Else Has Gone Wrong/Bombay Bicycle Club

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 活動休止・ソロ活動などを経て再開後初のアルバム。活動休止といっても3年くらいだそうなので、普通に新作出たんだー、という感覚で聴きました。 
 ボンベイバイシクルの魅力って、宅録的なチマチマしたオタク臭い上物と、バンド的なダイナミズムが合わさっているとこだと思うんですけど、今作はややオタク寄りの音に思えました。
 大傑作『So Long See You Tomorrow』の後ということも考えると、あまり肩の力入れずにリラックスした内容になっているのは、やはり活動休止したのが良い効果になっているのかなと思います。ジャーマンプログレの影響も随所にあって好み。


Deleter/Holy Fuck

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 前作『Congrats』もメタクソにカッコ良かったんですけど、新作も同じ路線ながら、ハチャメチャにカッコ良いですねー。生ドラムのひたすら4つ打ちディスコパンクで、シンプルでも飽きずに聴かせてくれる。
 ディスコパンクといえば、!!!(チック・チック・チック)が思い浮かぶんですけど、最近の!!!はバンド感があまりない、洗練されたダンスミュージックになっていますね。その反面、このホーリー・ファックには、洗練されていないアングラ感があって、そこがカッコ良いんですよね。


Man Alive!/King Krule

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 名前は何となく聞いていたSSWの新作、今作で初めてちゃんと聞きました。ジャズやR&B、クラウトロックなどの影響がそこかしこに見られるものの、どれにも当てはまらないサウンドで、本当に独特。陰鬱で、あまり繰り返し聴きたくなるような作品ではないんだけれど、1曲目を再生すると、最終曲まで聴いてしまう不思議な魅力があります。
 リズムトラックやメロディもカッチリしている現在の音楽とは、全く離れたとこを歩いている、ルーズではみ出したような音像は、何か癖になる音楽ですね。現代における「オルタナ」の位置にあるんじゃないかと思います。
僕はこの音楽を正直、理解出来ていないと思うんですけど、いつか理解るんじゃないかと思ってまた聴いてしまいそうな気がします。つげ義春のシュール漫画みたいな作品。


Suddenly/Caribou

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 今までのカリブーのアルバムでは、最もバラエティに富んだ内容だけど、ちゃんとアルバムの統一感もあります。ヒップホップ的なサンプリングが特徴的だけど、アッパーな感じではなく、とても静謐。
 カリブーの曲は静かでも、ライブでのバンド編成だとかなりフロア向け仕様に化けるので、早くライブを見てみたいです。


Mutable Set/Blake Mills

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 ブレイク・ミルズは、フォークやカントリー、ブルースなど伝統的な音楽に、エレクトロニカの要素を少し混ぜるのが特徴だと思うんですけど、この新作ではかなりアンビエント的な音を取り入れている印象でした。このアルバムの前にアンビエント作品のEPを出しているようなので、その延長なんですかね。アルバムとしては前作にあたる『HEIGH HO』と比べると、かなり憂鬱な世界観に聴こえます。
 何といってもハイライトはM⑥「Vanishing Twin」。静かなメロディと後半の暴力的なフィードバックギターソロの美しさにやられて、何回でも繰り返し聴いてしまいました。


狂(KLUE)/GEZAN

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 前作『Silence Will Speak』を聴いた時、アングラなハードコアの匂いの中で、「DNA」という曲のポップさが異様に際立っていて、いずれはこのポップさが前面に出るとは思っていたんですけど、こんなにも早く多くの人に刺さる作品を作るとは思いませんでした。全曲、BPM100で統一しておきながら、バリエーション豊かなグルーヴになっているのも素晴らしい。
 全曲がシームレスに繋がっているので、ダンスミュージック的な陶酔感もあるんですけど、Voのマヒトの歌詞は、現実を見ろと言わんばかりに覚醒を促しているんですよね。欲を言えば、ギターなどの音域と歌声がぶつかって詞が聴き取りにくいのが難かもしれません。けど、その合間にVoが聴こえた時に言葉がパンチラインとして刺さるようになっているので、狙ってやったことなのかもしれないとも思います。


Mordechai/Khruangbin

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 いやー、クルアンビンはいつどういうシチュエーションで聴いてもハマりますね。楽に流しても良いし、じっくり集中して聴きこんでも楽しめる。今まではインストの印象が強かったけど、今作は歌を全般的に入れているのが大きな変化ですね。そのせいか、聴いた時のイメージが、今までは風景画だったのが、物語性が強くなった気がします。それを象徴するのがM⑨「So We Won’t Forget」のPVですよね。こんなん、泣いてしまう。


Truth or Consequences/YUMI ZOUMA

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 ラジオ「アト6」で紹介されていて、一発で好きになってしまったバンド。現代風なアレンジを押さえているものの、正直新しい音ではないと思うんですよ。けど、そんなことよりもこの楽曲そのものの良さに、メロメロになってしまうんですよね。たまにこういう、「普通のアレンジで、ただただ良い曲」を聴きたくなるんです。来年のフジロックでは必ず観たい‥。


Heaven To A Tortured Mind/Yves Tumor

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 こちらもラジオ「アト6」で紹介されて初めて聴いたアーティスト。この人の音楽も独特でかなりハミ出していますね。何から影響を受けて出来た音楽なのか、全くわかりません。でもハミ出しているだけでなく、アルバムの統一感もあり作品としてきっちり仕上がっているんですね。キング・クルールと同じく「オルタナ」に位置しているように思えます。


KiCk i/Arca

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 ベネズエラ出身の鬼才が、今作でも飛躍した傑作を聴かせてくれました。前作から、歌を大きく取り入れていましたが、今作ではさらに聴きやすく、かつ異形な世界観はそのままで、尖った刺激もあります。今までの作品と比較すると、出身の南米ぽい音楽要素も感じられる曲もありますね。どんなライブでやるのか観てみたい。


Be Up A Hello/Squarepusher

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 今のところ、今年一番繰り返し聴いている作品かもしれない。前作『Damogen Furies』から、バンドプロジェクトのショバリーダー・ワンを経ての新作。一応、初期の機材を使ってレコーディングしたので、原点回帰とか言われているようですが、確かにM①、M②の聴きやすいクラシック曲に乱打するリズムトラックを掛け合わせたようなポップさは90年代から00年代の音楽的(というかWARPレーベルぽい音)なんですけど、その後の硬質で善意の欠片もないビートは、前作からの進化版という感じですね。M⑦からM⑧の流れなんかは最高に興奮します。

シン・スチャダラ大作戦/スチャダラパー

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 相変わらずのスチャダラ節全開で聴ける快作。けど、トラックはしっかりアップデートされているし、リリックも現代の事象を上手く使っていて、今の音楽になっているのは流石ですね。特にM⑩「サマージャム2020」なんかが顕著で、名曲「サマージャム‘95」の雰囲気をしっかり継ぎながら、ここまで別な形に出来るのかと驚き。ライムスターとのコラボも勿論最高。


What Kinda Music/Tom Misch 、 Yussef Dayes

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 飛ぶ鳥落すトム・ミッシュの新作はジャズドラマー、ユセフ・デイズとのコラボアルバム。相当なバカテクのドラミングなんですけど、全く曲を邪魔することなく溶け込んでいるんですよね、めちゃめちゃ手数多いのに。
トム・ミッシュの他のアルバムと比較すると、かなり暗いというか、太陽のイメージがあったんですけど、今作は夕暮れみたいな淋しさがあるんですよね。そこにこのドラムがあることで、何かとても低い位置で浮遊しているような感覚があります。


The Prettiest Curse/Hinds

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 前作でハインズを初めて聴いたときは、曲の良いガレージ・ガールズバンドという印象で、1枚聴けば良いかなくらいだったんですけど、新作聴いたらちゃんと進化していてビックリするほど良かったです。スタジオレコーディングでの遊び方を覚えたような音処理もハマっているし、リズム隊の面白さも格段に良くなっているんですよね。
 そもそも、陰鬱だったり、実験的だったり、つげ義春みたいなんて音楽を聴いている人間に、こんな陽のエネルギーを良いと思わせる時点でハインズは凄いんですよ。一生口聞くことないと思っていたクラスのギャル女子と、たまたま喋ったら意外と良いヤツだったみたいな爽やかな感動がハインズにはあります。


操/岡村靖幸

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 今の音楽って、洋楽はリズムなどの低音部分に音圧があって、邦楽はメロディなどの高音部分に音圧があると思うんですけど、岡村ちゃんの曲は全音域に圧があって、それでいてちゃんとポップスとして成り立っているのが凄いと思います。
 新作も相変わらずのクオリティでしたが、スチャダラでも出てきたライムスターとのコラボ、M⑦「マクガフィン」が強烈。めちゃめちゃヘビロテしてます。​

Future Nostalgia/Dua Lipa

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 ダフパンの『ランダム・アクセス・メモリーズ』辺りから、80年代音楽の再評価が始まって、リバイバルブームみたいになりましたが、この作品がもう80‘sリバイバルというお題の大正解みたいな傑作ですよね。どの曲から再生しても楽しめるし、ちゃんと1曲目から通して聴いても流れがしっかりあるという。アルバムトータルの時間は37分と短いのはサブスク時代ならではだと思うんですけど、それでも聴き終わった時の満足感はしっかりとあるんですよね。とても現代を象徴している作品だと思います。



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