#002 不意に太陽はひとつのこらずもつれた影を一掃した|ベッシー・ヘッドの言葉|Novel 2 横山仁美 |【雨雲出版】Amelia 2021年4月6日 20:19 At first not a thing stirred around him. It was just his own self, his footsteps and the winding footpath. Even the sunrise took him by surprise. Somehow he had always imagined the sun above hills, shining down into valleys and waking them up. But here the land was quite flat, and the sunshine crept along the ground in long shafts of gold light. It kept on pushing back the darkness that clung around the trees, and always the huge splash of gold was split into shafts by the trees. Suddenly, the sun sprang clear of all entanglements, a single white pulsating ball, dashing out with one blow the last traces of the night. So sudden and abrupt was the sunrise that the birds had to pretend they had been awake all the time. They sent up a shrill piercing clamour all at once, thousands of them. 最初、周囲に動いているものは何もなかった。自分と足音と、曲がりくねった小道だけだった。日の出さえにも不意に驚かされるぐらいだった。いままでずっと、連なる丘の上から谷に射し込む太陽の光がすべてを目覚めさせるのだと思っていた。しかしこの大地は平坦で、朝の陽射しが金色の長い光の線のように地表を這っている。朝の光は木々のまわりにまとわりついた暗闇を次々と押し除け、木々の枝から金色の線が大きく宙に拡散していった。不意に太陽はひとつのこらずもつれた影を一掃し、脈動するたったひとつの白い球体が、夜の名残をすべて吹き飛ばし飛び出してきた。あまりに突然日が昇ったので、鳥たちはいままでずっと起きていたふりをしたくらいだ。いっぺんに何千羽もの鳥が甲高く耳をつんざくような鳴き声で騒ぎたてる。“When Rain Clouds Gather”, 1969ボツワナに亡命して最初に出版された小説When Rain Clouds Gather「雨雲の集まるとき」より。南アフリカで政治犯として投獄されていたジャーナリストの青年が、ボツワナの農村に亡命する物語。国境のフェンスを超えた翌朝、ひたすら歩いている情景を描く。夜明けの描写は、本当に美しい。ベッシーの好きな時間帯もまた夜明けだった。作品紹介はこちら ベッシー・ヘッドの作品一覧。 africanwhale.net 作家ベッシー・ヘッドに関してはこちらのマガジン ベッシー・ヘッドとアフリカと|横山仁美|あふりかくじら_Amelia|note 南アフリカ出身ボツワナの作家ベッシー・ヘッド(Bessie Amelia Head 1937-1986)の生涯やその作品、 note.com このマガジンについてはこちら ダウンロード copy #小説 #海外文学 #海外小説 #ボツワナ #ベッシー・ヘッド #bessiehead 2 言葉と文章が心に響いたら、サポートいただけるとうれしいです。 サポート