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#011 愛はお互いに与えるもの|ベッシー・ヘッドの言葉|Novel

Love is two people mutually feeding each other, not one living on the soul of the other like a ghoul.
(A Question of Power, 1973)
愛とは、ふたりの人間がお互いに与えるもの。片方が、グール(食屍鬼)のように相手の魂に巣食うものではない。

作家ベッシー・ヘッドの愛に関する文章の中でもおそらくいちばん有名なものなのではないかなと思う。この文章はネット検索すると山ほど出てくる。

三作目の長編小説「A Question of Power」は、ベッシー・ヘッド作品の中でもっとも強烈で印象深い作品である。そして、難解であるといえる。彼女の自伝的小説で、実際にボツワナで精神分裂症に苦しみ入退院を繰り返し、神や悪などの力を持った幻影に悩まされる遍歴を描いている。一部フィクションもあるようだが、ほとんどが彼女の経験から来ている。そして、幻影といっても、彼女本人にとっては、この社会の悪や善、人々の社会と土地から生まれてくる力が形となり、「リアリティ」として存在するのだ。

ちなみにこの本はずいぶん昔に日本語に訳して出版された方がいらっしゃるが、率直にいってその労力はすごいと思う。読んでいるだけで難解、ことばも難しいしイメージも展開も深すぎて考えさせられる。

この言葉は、そんな中でも盛り込まれている美しい文章のひとつ。作家としてのベッシー・ヘッドの恐ろしい手腕と、人間離れ(?)した感覚が圧倒的だ。彼女はずっと、いわゆる「セオリー」を嫌う恐ろしい直感の人間だった。

もっと生きていて欲しかったとつくづく思う。

作家ベッシー・ヘッドについてはこちらのマガジンをご参照。

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