『MARU』という作品はベッシー・ヘッドが発表した二作目の長編小説だ。1971年アパルトヘイト時代に南アフリカ人としてのベッシーは、ボツワナの農村を舞台にした小説を書いた。これは、多数派であるバンツー系のツワナ人と、彼らが差別してきた南部アフリカのサンの人々(ブッシュマンは蔑称)について描いた物語だ。
プロットとしては、美しい恋愛物語にも捉えられないこともないが、やはり強烈なのは奴隷として差別されてきたサン(現地語でマサルワ)の子どもが教育を受けて成長後に教師となり、さらに伝統的首長の息子と恋愛をするというストーリーだ。この時代にこれはセンセーショナルだった。
つまり、人種差別というのはアパルトヘイトだけではなく誰の心にも住む悪魔であることを物語を通して伝えた。ボツワナでのそのことを鋭く指摘したフィクションは話題をさらった。
ちなみに、マサルワというのはボツワナにおける「ブッシュマン」への蔑称だ。ベッシーは、この少女にわざと「わたしはマサルワなの」と言わせている。
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