短編集"The Collector of Treasures"より、表題作。
この物語は、ボツワナの農村で小さい頃に両親を亡くし、虐げられて育ったディケレディという心の美しい女性の話だ。ディケレディは、若くして半強制的に結婚をさせられることとなり家を出るが、夫は酒を飲み「女遊び」をし、家にお金を入れず嫉妬深いという典型的なDV男だった。
そんな中、裁縫の技術を身につけ何とかお金を稼ぎ3人の子供を育てるディケレディであったが、ある時、この夫を殺してしまう。
この一節は物語の冒頭、ディケレディが刑務所に連れられていき、最初の1日を過ごすシーンである。心優しいディケレディは同じ囚人のケボニェや他の女性たちと出会うが、彼女たちもまた夫を殺した罪で受刑しているのである。
『宝を集めるひと』の宝とは、農村で虐げられている暮らし(かならずしもそれは女性とは限らない)の中で、美しいものをたくさん知っているのだというディケレディの心の中を語っている。
この作品は本当に魔法のように美しく、しかし描いているモチーフは非常に悲劇的で読んでいて涙が止まらなくなるくらい。
この短い物語で、これだけのものを美しく彩り、詰め込むことのできる作家ベッシー・ヘッドというひとは、恐ろしい力量のある本当に優れた作家である。
この短編は、今わたしが翻訳出版をしたいと考えている長編よりもずいぶん後に書かれたもの。この短編も、どこかで訳したいと思っている。
作家ベッシー・ヘッドについてはこちらのマガジンをご参照
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