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生命力
HAPPYマインド・ダイアリー P. 10
特別養護老人ホームに入居中の祖母が、チェーンストークス呼吸をはじめた。
今週の月曜日の朝、電話してきた母がそう言って、私は「なにそれ?」と眉を寄せた。
通話しながらググッてみると、終末期に見られる症状の一つと説明されている。
ついにこの時がきたか、と胃が鉛のように重くなった。
祖母は御年94歳(だったと思う)。
2年前に帰省したとき会いに行って、ずいぶん認知症が進んでいるけど元気そうだな、と思ったのを鮮明に覚えている。
私のことを自分の孫だと理解しているのか非常に怪しいながらも、「会いに来てくれて、こんなに嬉しいことはない」と泣き出して、胸がギュッと締め付けられた。
実は今月のはじめに母から「おばあちゃんの食欲がないらしい」と聞いて、季節の変わり目だからかな? と思うやり取りがあった。
祖母はそのまま、食べるのも飲むのもピタッと止めたらしい。止めて2週間で、チェーンストークス呼吸をし始めたことになる。
月曜の朝、電話してきた母の話をよくよく聞くに、昨夜チェーンストークス呼吸をはじめたとホームから連絡があり、それから夜明けまで祖母に付き添って様子を見守っていたとのことだった。
少し寝たから大丈夫、と言う母に「もう少し休んだほうがいい」と伝えて、電話を切ってからは、もう明日にでも帰省したほうがいいんじゃないかという焦りばかりが頭を占領した。
月曜の午後3時、また母から電話があった。
力のこもった嬉しそうな声で、「点滴してくれるんだって」と教えてくれた。
延命治療はしないと以前からホームに伝えていたので、私も母も驚いたが、ありがたい話だ。チェーンストークス呼吸をしていても意識ははっきりしていて、それを見た回診担当医師が「酷なことだ」と点滴を勧めてくれたようだった。
それから5日目の今日、祖母の呼吸は落ち着いている。
点滴をはじめてすぐ落ち着きはじめ、少し元気を取り戻しているようだ。
生命力って、本当に不思議で神秘的で力強いもの。
そういえば、祖母は胃癌を克服しているんだった、と思い出し、ますます祖母の生命力を感じたのだった。
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