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クレマチスの新芽

HAPPYマインド・ダイアリー P. 6


あ、これ死んだかも。
そう思ったのは、葉っぱがすべて落ち、まるで枯れ木と化したクレマチスのツルを、オベリスクに巻きなおした瞬間だった。

きちんと世話をしなかったせいで、オベリスクのてっぺん目指して真っすぐ伸びっぱなしだったクレマチス。今年こそはツルを丁寧に導いて、行儀よくオベリスクに巻きついてもらおうと、下準備のつもりでカラカラのツルを巻きなおした。

巻きなおした瞬間、水分をほとんど失っていたツルの表面がバリッと裂け、中の芯が露になってしまった。
裂けた表面は茶色く乾燥していて生気のかけらもないが、露になった芯は真っ白で、みずみずしく、「ちょっと! まだしっかり生きてるんですけど」と主張している。
よりによって、裂けたのは分岐前のメインのツルだった。

やってしまった。
私がトドメを刺したのか?
そう動揺しながらも、ここまできたら後戻りはできないし、掴んでいたツルをオベリスクの下部に巻きつけた。
「どうせその枝は枯れてるよ。毎年、新しい芽は地面から生えてくるから」
彼はそう言ってフォローしてくれたけど、私はむき出しになった真っ白な芯から目が離せず、「いや、この子はまだ生きてるよ。私が死なせちゃったかもしれないけど」と悔しがった。

フラワーパークに行った記念に買って帰ったクレマチスを庭に植えてもう3年になるのに、この子の1年のサイクルをいまだに把握しきれてない。
春、いつの間にか緑色をした新しいツルが伸び始める。
秋が深まってくるころ、気づけば枯れている。
真冬、完全に枯れたフリをして、地面の中では芽吹きを待って眠っているらしく、新芽はいつも地面から新たに出てきていた。そこだけは把握できているのだけど。

今回、枯れ木のようになったクレマチスをまじまじと眺めていた私は、ツルの節々に芽のような物体があるのを目にとめた。
なんだ、これは?
よくよく見ると、なんだか固く閉じた芽のようだ。色は枯れ木色に近いが、表面に産毛が生えていて、触ると柔らかい。
まさか、と1つもぎ取って解剖してみると、中は葉っぱの層だった。中心は緑色に近い。
この子、生きてるじゃん!

そういうことなら新芽が出ていない今のうちに、とオベリスクに巻きつけなおしたのだ。
まさか、トドメを刺すことになろうとは。


そんな経緯があったせいで、この冬はいつも以上にクレマチスをチェックする日々を送った。
今朝、新芽がしっかり伸びてオベリスクに手を巻きつけているのを確認したときには、本当に嬉しかった。

よかった、生きててくれて。
よかった、トドメを刺していなくて。

さて、これからが勝負。
今年こそは、行儀よくオベリスクに巻きついてもらおう。

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