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デジタルで薬局をもっとスマートに!待ち時間ゼロ&ミス防止の3つの秘訣

デジタル技術で現場の課題を解決する

現場で働く薬剤師として、毎日いくつかの課題に直面しています。例えば、膨大なマニュアルから必要な情報を探す時間、調剤ミスを防ぐための細心の注意、そして待ち時間の長さへの対応。これらの問題は業務効率に影響を与えるだけでなく、スタッフや患者のストレスにもつながっています。

特に直近であったような医療事故(調剤過誤)は絶対に起こしてはならないものです。この事故を通して、現場の安全性を更に高める必要性を強く感じました。

↓直近で発生した医療事故(調剤過誤)の報道記事


忙しくなるとこんな感じになります。余裕がない(笑)

業務が忙しくなると、どうしても安全管理の細部が疎かになりがちです。こうした問題は、私たち薬局の運営にとって深刻な影響を与えます。では、どうやってこれらの課題を解決できるのか? いろいろと考えを巡らせると、実現可能なアイデアもあれば、夢のような話も浮かんできます。

アイデア発散段階の記事

今回は、現実的に実現可能かどうかまで落とし込んだアイデアになります。
広がったアイデアを収束させ、現場の実情と照らし合わせながら、最終的に3つの具体的なデジタル解決策を導き出しました。
これらのアイデアのうち、少なくとも1つは必ず実現したいと考えています!


アイデアをより具体的に収束させる

アイデアって無限に広がっていくので、どこかでアイデアをまとめていく作業が必要になります。

そろそろ結論が必要だ!

今回は、スパーリング法を用いて同僚とともにアイデアを収束させました。スパーリングでは、基本的に否定的な意見を積極的に出してもらうことで、アイデアの現実性を高めることが目的です。
デジタル技術に詳しいわけではない同僚からの率直な意見は、非常に貴重であり、現場で実際に使えるかどうかの検証にも役立ちました。

複数店舗を巡回している薬剤師2名とスパーリングを行いました。
彼らは現場の運用に精通しているため、新しいシステムを導入する際に起こりうる問題点を鋭く指摘してくれました。最初に考えていたプロトタイプと比べ、最終的な形はかなり異なっています。

それぞれ店舗巡回していて会えないので、LINEのグループチャットで行いました。

課題解決に向けた3つのデジタルプロトタイプ

具体性を持たせた3つのデジタルプロトタイプ

1. Google AppSheetを使用したマニュアル検索アプリ

背景
現場では、調剤を含む多くの部署のマニュアルが膨大で、新しいスタッフやITに不慣れなスタッフにとって、必要な情報を探すのが大きな負担となっていました。また、頻繁に更新されるマニュアルを、常に最新の状態で入手できる仕組みが必要とされていました。

マニュアル検索アプリ

初期アイデア
Google AppSheetを使用して、マニュアルを簡単に検索できるアプリを作成

スパーリングでの指摘

  • 調剤部署以外のマニュアルも検索できるようにする必要がある(現状では検索範囲が限定的)。

  • ジャンルごとに分類されていないため、特定のカテゴリーや部署ごとの検索ができない。

  • 検索結果が見つからない場合に「マニュアルがない」と即座に判断できるような完成度が求められる。

改善点

  • 全社的に調剤部署以外のマニュアルも検索対象とする。

  • マニュアルをジャンル別に分類し、カテゴリーや部署ごとの検索機能を追加する。

  • 検索結果が「マニュアルが見つからない」場合でも対応し、ユーザーにわかりやすいフィードバックを提供する。

5Sというのは、簡単に言うと凄い綺麗にするという意味です

最終的な形

  • 全社対応: 全部署のマニュアルを検索対象にする。

  • ジャンル検索機能: 部署やカテゴリー別に分類し、検索精度を向上。

  • 高精度検索機能: 「該当するマニュアルがない」場合の対応を改善し、ユーザーが迷わないようにする。

使用ツール

  • Google AppSheet

  • Google Drive

  • Google Sheets



2. 機械学習を使った待ち時間予測の自動化

背景
特定の店舗において、患者の待ち時間が長くなることがあり、これは患者満足度の低下や業務効率の低下につながっていました。スタッフの配置が適切でない場合や、患者の来店パターンが予測できないと、ピーク時にリソースが不足し、逆に閑散時には余剰リソースが生じるといった問題が発生していました。

語句説明
「チャンスロス表」

調剤現場で、業務の遅れやミス、機会損失を記録するための表です。これに基づいて、どの時間帯に問題が発生しやすいかを把握します。
「まちみる」
番号表示、番号発券機器になります。受付から調剤完了までの時間データの蓄積も行っています。

笑顔で患者さんに接したいですよね

最初のアイデア
過去のデータ(チャンスロス表)を基に、未来の待ち時間を予測・分析し、シフト調整やリソース配分を自動化する。


スパーリングでの指摘

  • チャンスロス表が正確に記入されていない場合、信頼性が低くなる。

  • 「まちみる」のデータが既に蓄積されているため、チャンスロス表のデータでは正確な予測ができない可能性がある。

  • 処方箋枚数が少ない店舗では、チャンスロス表の効果が限定的。

  • 時間帯ごとの処方箋枚数が考慮されていない。

改善点

  • 「まちみる」のデータを使用、既存の正確なデータで予測モデルを強化。

  • 時間帯ごとのデータを収集し、予測精度を高める。

  • チャンスロス表の記入精度向上のため、スタッフ教育やサポートを強化。


全ての店舗がちゃんと作ってる前提で話を進めてしまってました
イレギュラーの数字をどうするかも考えてませんでした

最終的な形

  • 「まちみる」データ活用: データとして「まちみる」のデータを活用。

  • 店舗別の処方箋データ: 処方箋枚数が多い店舗のデータを優先活用。

  • 時間帯別データの活用: 時間帯ごとの処方箋枚数を取り入れて、予測精度を向上。


使用ツール

  • scikit-learn: 過去のデータを基に、待ち時間の予測モデルをトレーニング・実行。

  • Power Automate Desktop (PAD): データの収集とモデルの実行を自動化。

  • Microsoft Teams / Outlook: 予測結果をスタッフに通知し、リアルタイムで情報共有。



3. Teachable Machineを使った調剤事故防止システム

背景
薬剤の取り違えや調剤ミスは、薬局業務に重大なリスクをもたらします。手動確認はヒューマンエラーを引き起こしやすく、より確実な監査システムが求められていました。現行のJANコードや重量による監査システムでは限界があり、画像認識技術を使った高度なシステムが必要とされています。

医療事故は全ての関係者の笑顔を無くします

初期アイデア
薬の画像認識を使って、調剤ミスを防止するシステムを導入。薬剤師が薬の写真をLINEに送り、システムが正確に薬を識別。

スパーリングでの指摘

問題点:

  • 現行のJANコードや重量監査システムに比べ、画像認識システムのメリットが限定的。

  • 流通規制の確認機能がない。

改善点:

  • 画像認識でリストにない薬を検出し、誤って混入した薬を弾く機能を追加する。

  • 流通規制の有無を確認できる機能を追加し、事務スタッフにも使いやすいシステムに改良する。

調剤事故撲滅のために、力を貸してくれました

最終的な形

  • 違う薬を検出する機能の追加: 処方リストに含まれない薬品を識別し、誤りを防止。

  • 流通規制確認機能の追加: 薬品の流通規制や取り扱い規制を確認し、事務スタッフにも使いやすく改良。

使用ツール

  • Teachable Machine:

  • Google Drive

  • Google Sheets

  • LINE Bot



プロトタイプの実現へ:次なるステップ

今回、「スパーリング法」を活用し、3つのデジタルプロトタイピングアイデアを収束させました。各アイデアは、現場の課題を具体的に解決するためのものであり、Google AppSheet、機械学習・PAD、Teachable Machineといった実際のツールを活用しています。

これからは、今回収束させたアイデアをもとにプロトタイプを作成し、現場で実際に試験運用を行います。フィードバックをもとに更に改善を重ね、最終的には業務の効率化と安全性の向上を実現していきたいと考えています。

絶対にプロトタイプを作成して、業務改善に繋げます!

疲れた自分の癒しです。頑張ります!


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