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【雑記】『モンスターハンターワールド』の思い出 ~「教え魔」と駆け抜けた新大陸~

今年の頭ぐらいから、Steam/PSストアでの大幅セールと、2025年発売予定の最新作『モンスターハンターワイルズ』の新情報発表によるモンハン熱の世間的な再燃をきっかけに『モンスターハンターワールド』(以下、MHWと略記)のリバイバルブームが起きていることは皆さんご存知だと思う。
自分はこのリバイバルブームには乗っていないものの、自分のよく見るVtuberやストリーマーが、かつて自分が駆け抜けた新大陸を冒険する様子を見て楽しんでいる。

今回はこのモンハンブームに乗っかって、僕の新大陸での思い出を語っていきたいと思う。時間のある方はどうか、このインターネット老人の思い出話に付き合ってほしい。


◆狩猟体験との出会い

僕がMHWに出会ったのは、大型アップデート『アイスボーン』が実装された後の2020年。その頃、僕とその友人たちは「皆でプレイできるゲーム」を探していた。
僕と友人たちはオタクとしての気質こそ合っていたものの、オタク趣味の傾向はバラバラで、プレイするゲームもバラバラだった。なので当時の僕らはディスコードで顔を合わせては「何かみんなで遊べるようなゲームがあると楽しいんだけど」と悩み、Coop(協力プレイ)機能のある楽しそうなゲームをSteamの海で探す日々を続けていた。
そんな中始まったのが、MHWのセールだった。これに乗じ、僕にMHWを強く布教してきたのが、友人の田中くん(仮名)だ。友人グループの中ではMHWはある程度市民権を得ており、僕がMHWの輪に入れば上記の悩みは解消される、というのが田中くんの言い分だった。

だが、僕は素直にMHWを購入することに二の足を踏んだ。理由は、当時の僕がMHW、というかモンハンシリーズそのものにあまり惹かれていなかったからだ。
僕はPSP/ニンテンドー3DSを楽しんだ世代で、様々な人が携帯機モンハンをプレイするのを横から見ていたが、個人的には地に足のついた、嫌な言い方をすればモサッとしたアクションが全然楽しそうに見えず、「もっとダンテとかベヨネッタみたいにシュパシュパ動けないの?」と常々思っていた。なので、MHWも面白そうには見えなかったのだ。
だが、田中くんの熱意は僕の屁理屈に負けなかった。
「モンハンは絶対面白い!保証するから!」
そう断言した彼の熱意に僕は負け、セール中の『アイスボーン』とセットになったバンドルをしぶしぶ購入した。

そうして始めた新大陸でのハンター生活は、予想以上に楽しいものだった。
危惧していた「プレイヤーキャラクター(ハンター)の動きの遅さ」も、双剣という動きが軽めの武器種を選んだこともあってそこまで感じなかったし、強大なモンスターの攻撃をいなしつつ、チャンスを見つけて攻撃を差し込む緊張感のあるバトルは面白かった。
何より面白かったのがCoopしての狩猟体験だった。友達とワチャワチャ言い合いながらモンスターを狩るCoopプレイの楽しさは、かつて我々が幼少期に味わった「放課後、友達の家に集まってゲームをする」それと同質のものであった。
時に笑い、時に愚痴りながら強敵に挑んだCoopプレイは、本当に楽しかった。

◆教え魔の田中くん

だが、残念ながら上記した新大陸の楽しい思い出は、嫌な思い出とセットになっている。
その原因は、凄まじい熱意で僕にMHWを布教してきた先述の田中くんにある。彼はいわゆる「教え魔」「教えたがり」だったのだ。
なんとなく立ちふさがるモンスターをハントし、『ワールド』のストーリーを後半くらいまで進めた頃、田中くんがディスコードで話しかけてきた。

田中くん「モンハンどこまで進んだ?」
僕「もうすぐクリアっぽい雰囲気かな」
田中くん「クリアしたら教えてね。そっからマスターランク上位まで俺が連れてってあげるから
僕「えっ?」
田中くん「このゲーム、マスターランクからが本番だからさw」

先程は書かなかったが、田中くんにはMHWの発売以前から僕に何度もモンハンを勧めてきた過去がある。MHW以前は僕はその誘いを理由をつけて、数年単位で断ってきた。
そんな僕がハンターへの道を歩みだしたことがよっぽど彼は嬉しかったらしく、その日から、彼によるマスターランクへの最短ガイドが始まった。

「『アイスボーン』のストーリー、俺と一緒にすぐクリアしよう!」
「◯◯を倒して、××装備を作ろう!」
「◯◯を倒せるようになったら、次はこの装備にステップアップしよう!」

1から10まで行き届いた彼のありがたいアドバイスに従って、彼と一緒にゲームを進める日々は、サクサクゲームが進むという恩恵を感じる反面、僕はマイペースに、最初は攻略サイトなどを見ないでゲームを進めたいタイプの人間だったので、彼のガイドは窮屈でもあり、身も蓋もない言い方をすればストレスを感じていた。
だが、彼に「もうちょっとゆっくりゲームを進めたい」と言い出すのは憚られた。田中くんは、ゲームはやることがなくなるまでやり込むタイプの重度のゲーマー(トロフィーや達成率は100%にしたいタイプ、と言えば伝わるだろう)で、当時はその熱意がMHWを含むモンハンシリーズに向いており、言うなれば当時の彼は「モンハン博士」と形容できる存在であった。つまり、彼のアドバイスは120%正確で正しく、断る理由の見当たらないものだった。
例として「まずマスターランクを上げよう」というアドバイスは実際正しかった。大型アップデート『アイスボーン』以降のコンテンツはマスターランク到達を前提にしていたし、マスターランクになればマム・タロト討伐で手に入る「皇金武器」やムフェト・ジーヴァ討伐で手に入る「赤龍武器」「龍紋防具」を筆頭に強力な装備が手に入り、MR以前に比べて飛躍的に装備の幅が広がって、組み合わせの楽しみが生まれる。
そもそも、アイスボーン実装以降は『ワールド』のストーリーを手早くクリアするための、公式チートと言える強力武器、通称「防衛隊装備」を公式サイドが破格の安価で提供しており、ゲーム全体で「MR以前は前哨戦、みんな早くMRに到達してモンハンを100%楽しもう!」という雰囲気が作られていた。

だが、「正しい」ことと、それを受け容れられるかは別の話だ。繰り返しになるが、 僕はマイペースにゲームを進めたいタイプの人間だった。ゲーマーの方なら覚えがあるだろうが、ゲームプレイ初期の「装備も資金も揃わない中で、工夫してその時点での最善を目指す」時期が好きなのだ。彼のアドバイスは、僕のプレイスタイルを真っ向から否定していた。
一度だけ、「もうちょっとゆっくり進めたいんだけど」と控えめに言ったことはあったものの、笑顔で「早く◯◯にもマスターランクの楽しさ、味わってもらいたいから!」と言う彼を前にして、「アドバイスを止めてくれないかな」と言えるはずもなかった。

『アイスボーン』編のクリア後も彼の1から10まで行き届いたガイドは続き、「双剣をやってるんだけど」と言った僕を最強にすべく彼は「じゃあ◯◯と××と△△を倒して装備を作ろう!それが双剣運用の最適解だから!武器はムフェトを倒して赤龍装備を作って…」と息巻いて、僕はそんな彼に連れ回されて様々なモンスターをハントした。
そんな具合だったので、僕にMHWの細かい知識は殆ど残っていない。僕のモンハン生活に自力で情報を調べて装備を吟味したり、戦うモンスターの知識を得る、と言った過程はほとんどなく、ほとんどの装備は田中くんに言われるままに作り、モンスターとの戦いは田中くんのガイドのもとに行われたからだ。

田中くんに悪意があったとは全く思わない。むしろ120%善意の行いであったろう。だが、僕のプレイスタイルを否定する彼のアドバイスを、僕はどんどん鬱陶しく思うようになっていった。

◆狩猟生活の終わり

そんな、主に田中くんとともに駆け抜けた新大陸での狩猟生活は唐突に終わりを告げた。双剣用の理想装備を作っていた時、MHWがエラーを吐いて、オンラインに接続できなくなってしまったのである。
それを聞いた田中くんは、エラーを食らった当の本人である僕よりも精力的にエラー解決に奔走した。だが、その時の僕の心には「友達とモンハンができなくて残念」という気持ちと「これでもう田中くんとモンハンをしなくていいんだ」という安堵が同居していた。

もう、田中くんにあれこれ言われながらモンハンしたくない。
自分は田中くんの想定通りのプレイをできているだろうかと、怯えたくない。

そう思った僕は、僕とモンハンをするのが心底楽しそうだった田中くんに申し訳無さを感じつつも、エラーを機にモンハンをしばらく休止することを告げた。

田中くん「そんな事言うなよ!まだ装備も作れてないし、アルバトリオンもミラボレアスも倒してないじゃん!」
僕「少し休むだけだよ。エラーはこっちでなんとかするから」
田中くん「わかったよ、なんとかなったら教えてね!」

田中くんには「少し休む」と言ったが、その後僕が新大陸に戻ることはなかった。田中くんには大変申し訳ないが、モンハンのない生活には開放感があった。
こののちに、次作である『モンスターハンターライズ』が発売したのは皆さんご存知のとおりだが、田中くんの教え魔ムーブがこびりついていた僕はまた彼と顔を合わせたくなくて手を出せず、田中くんのオタクパワーがモンハンから『ファイナルファンタジーXIV』に向いたこともあって、友人間のモンハンの輪は自然消滅した。

◆おわりに

ネット上で「教え魔がそばにいるとこんなにウザい!」という言説を聞いたことは何度もあったが、自分がそれを体験することになるとは思わなかった。
繰り返しになるが、友人とCoopしてのバトルは、今まで自分がモンハンに抱いていた偏見が馬鹿らしくなるほど面白かった。だが、それ以上に田中くんの教え魔ムーブを受け続ける狩猟生活はつらいものがあった。
自分も他人に何かを教えることで気持ちよくなってしまうタイプの人間であったが(でなければnoteなどやってはいない)、田中くんの典型的な教え魔ムーブを見てからは、彼を反面教師に「誰かが聞いてきた時、初めてアドバイスをしよう」と自制するようになった。

現在世間のモンハン熱を再燃させている『ワイルズ』にも興味はあるが、また田中君と顔を合わせると思うと素直に購入することには躊躇いを覚える。
願わくば、『ワイルズ』が田中くんの約20年モノのモンハンノウハウが通用しないぐらいの抜本的な改革を施された作品であることを祈るばかりである。そうすればみんなゼロベースでのスタートになるからね。

『アーマード・コアⅥ』ぐらい、過去作のノウハウが通じない新作になってほしい

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