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物語創作に役立つ書評:「人に頼む技術」

ご覧いただきありがとうございます。この書評は以下のnoteで示したフォーマットで書かれています。詳しく知りたい方は是非、参考にしていただけると幸いです。

物語創作に必要な3つの要素(コンセプト・人物・テーマ)を「人に頼む技術」から抜き出します。

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コンセプト→(ストーリーの土台となるアイデア。「もし~だとしたら?(what if ?)」という問いで表すとはっきりわかる。)

もし、どうしても人に助けを求めなくてはいけなくなってしまったら?

人は助けを求めたがらない…….
自分では出来ないのはわかっているし、人に頼んだほうが早いと知っているのにも関わらず、どうして素直に助けを求めることができないのでしょうか。人間は、ほんの些細な頼み事をするのを想像するだけで、ひどく不快な気持ちになることが知られています。

本書では、コーネル大学の組織行動学教授バネッサ・ボーンズさん、共同研究者のスタンフォード大学のフランク・フリンさんの「人はどのように誰かに助けを求めるか」の研究が紹介されています。

被験者に見知らぬ人に近づき、頼み事をするよう指示します。頼み事の内容は、「簡単なアンケートに記入する」「キャンパス内の建物を案内する」「携帯電話を借りる」といった無害なものであり、「お金を貸す」「献血をする」「赤ちゃんを預ける」といったハードルの高いものではありません。にもかかわらず、ボーンズは「実験内容を伝えるとすぐに、被験者が明らかに恐怖や不安に襲われているのが感じられた。部屋全体の空気が変わり、まるで私たち実験者が、これ以上想像できないほど最悪のことを指示したかのような雰囲気になった」と述べています。

思えば、助けを求めるという行為自体、あまりしたことがないために不安を感じるという側面がありそうです。
結果をうまく予想できないという不安、嫌われるのではという不安、いやな顔をされるのではないかという不安が、助けを求める人に付きまとっているのです。人に助けを求める重要性についてスティーブジョブズも以下のように語っていたそうです。

僕は日常的に、助けを求めれば人はそれに応えてくれる、ということを実感している。この真実に気づいている人は少ない。なぜなら、めったに誰かに助けを求めようとしないからだ。誰かに何かをお願いしても、それを無下に断られることなんてめったにない。(中略)僕が頼み事をしたときに、「嫌だね」といって電話を切る人はいなかった。その相手から同じように頼み事をされれば、僕も力を貸す。相手に恩義を返したいと思うからだ。でも、電話をかけて誰かに助けを求めようとする人は少ない。それが、何かを成し遂げる人と、夢を見るだけで終わる人との差になることもあるのではないかと思う。

本書では、人に頼みごとをするということにフォーカスし、心理学的側面から読者が頼みごとをしやすいようにサポートしてくれる本になっています。

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人物の世界観→(人の世界観は社会の価値観や政治、好み、信条などに培われ、その人の態度や習慣に表れる。)

助けを求めたら、相手からよくない印象を持たれるかもしれない….

「面倒ごとを持ち込みやがって……」と相手に思われてしまうのではないか。人は助けを求めることで相手に悪い印象を与えてしまうと思い込んでいます。過去に、誰かに何か面倒ごとを押し付けられたことがある人ほど、自分から助けを求めることに対して抵抗があるようです。

しかし、人間には「認知的不協和」という特性があり、人の頼み事に応じると、その人への好意が増します。例えば、嫌な印象を抱いている人の頼み事に応じることで、その相手への嫌な印象が薄れるという効果も報告されています。それだけではなく、さらに大きな頼み事に応じると、その相手が良い人のように思える効果が生じます。

与えるものが多くなればなるほど、相手への好意も増します。
私たちは通常、嫌いな相手には何かを与えようとはしないため、何かを与えているということは、自分はこの相手に好意を持っているのだと考えるようになるのです。そう理解しなければ、辻棲が合わなくなります。

本書では、人が頼みごとに引け目を感じてしまう人間の世界観が実際の世界とは異なっていることを、科学的な視点も交えながら、教えてくれる内容になっています。

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人物のアーク→(ストーリーの中で体験する学びや成長。自分にとって最も厄介な問題をいかに克服するか。)


人は助けてなんかくれない → 私たちが思っている以上に人は誰かを助けてあげたいと考えている

人は、誰かに直接的に頼み事をするときに、相手がそれを受け入れてくれる確率を実際よりも大幅に低く見積もる傾向があるようです。
当然、頼まれた相手の視点に立てば面倒だなと思うかもしれないことは容易に想像がつきます。

ですが、基本的に人は誰かに頼み事をされたとき親切で協力的であるべきだという考えを持っています。いい人でありたいと思っているため、基本的には、助けを求められて「イエス」と答えるはずなのです。

さらに、一度「イエス」と言った相手からの依頼には「ノー」と答えにくくなる特性もあります。「私は人助けをする、親切な人間だ」という自己認識を保ちたいという根底があるためです。

一度、誰かに助けてもらえたら、次はだれかを助けようと思う。
外からは見えない事象であるけど、誰かを助けてあげようと思っている人のネットワークは無数に広がっているようです。

本書は、人がうまく人に頼みごとができるようになるためには、意識を変えて抵抗をなくすことが重要であると教えてくれます。

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人物の内面の悪魔との葛藤→(心のネガティブな側面。認識や思考、選択、行動を左右する。「知らない人と話すのが怖い」といった欠点は内面の悪魔の影響で表れる。)

誰かに頼み事をするのが苦痛で仕方がない

人に頼みごとをする際に、抵抗があるのはなぜか。
それは、社会的脅威に晒されるからである。
本書では、人に頼みごとをする際に感じる苦痛が説明されています。

人は他者に何かを頼むとき、無意識にそのことで自分のステータスが下がると感じやすくなります。それが自分の知識や能力の不足を意味し得るものである場合には、馬鹿にされたり軽蔑されたりするかもしれないという不安を覚えるからです。相手がこちらのリクエストにどう応えてくれるかがわからないので、確実性の感覚も下がります。また、相手の反応を受け入れなくてはならないので、自律性の感覚も低下します。相手に「ノー」と言われたとき、個人的に拒絶されたように感じることがあるため、関連性への脅威も生じます。そしてもちろん、「ノー」と言われたときに、相手との関係に特別な公平性を感じることはめったにありません。

助けを求めることで、社会的な脅威にさらされると信じてしまっている。
その信念によって必要な時にも助けを求めることに恐怖を感じてしまうのである。

本書では、人に助けを求める際に感じる「なんか嫌だな….」という感覚を紐解く手助けをしてくれる本になっています。

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テーマ→(簡単に言えば、テーマとは「ストーリーが意味すること」だ。世の中や人生との関わりだ。)

人に助けを求めるのは怖くない。ただし、頼み方も重要だ。

本書では、人に頼みごとをする際の「障壁」は人が思っているより低いことを明らかにしてくれる。さらに頼み方にも気をつけることで、人にもっと助けてもらいやすくなる。

1.「仲間意識を活用する」:「一緒に」という言葉を使う、共通の目的に目を向ける、共通の(外集団の)敵を探す、共通の客観的特製ではなく共通の経験や感情について話す。
2.「自尊心を刺激する」:これはあなたにしかできないことです。だからこそ是非お願いしたい。
3.「有効性を感じさせる」:求めている助けがどんなモノで、それがどんな結果をもたらすかを、事前に明確に伝えている。→フォローアップする

本書では、人に助けを求めるという一つのアクションについて科学的エビデンスをもとに考察を行いながら、ノウハウとしてまとめています。

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本書は以下の本です。


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