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小さな戦争

戦車や銃がある訳ではない。窓を開けば街は太陽に照らされ、青色の空が広がる。風の音だけが響く世界は平和そのものだ。

この世界には数え切れぬ程の苦難がある。言葉、精神、逃亡、金、愛。様々なものを武器にして、人には乗り越えていく。そんな過去や現在から変化を求めて声を大にする人もいれば、何も語らぬまま闇に葬り去る人もいる。この世には見えないだけで幾つもの戦争がある。
まだその当時は名古屋に住んでいて、行きつけの飲食店やクラブがあって、友人と集まって遊んでいた。非日常のような愉快な日々が日常的に続く世界。その世界は多くの人で支えられている。アーティスト、お店のスタッフ、イベントのスタッフ、飲食物の仕入先、彼らの家族など、目に留まる以上の人々がそこには介在する。
2020年の春。新型コロナウイルスが流行し、緊急事態宣言が発令された。
遊んでた場所がなくなり友人とも会えない。ひとりでコッソリ遊びに行った近所の飲み屋は寂しく、いつも強気な店主がとても疲れていて悲しい顔をしていた。知っているライブハウスやクラブが閉業をする事になった。駅前の飲食店は営業を自粛したまま、二度と開かれることはなかった。

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見えなかっただけでこれまでも個人の戦いというのは幾つもあったのだろう。けれどこのパンデミックの中で、戦わなければいけないものがどんどん大きく増えて、自分の周囲も自分自身も取り込まれていった。自由に行動する事が出来る事、それが精神に与える幸福と経済の巡りは余りに大きいと気付くまでに時間はかからなかった。

小さな戦争が始まっていたのだ。

場所を存続させること、失われた職を生み出すこと、闇が覆う世界の中で光を見出すこと。きっとこの時代を生きることそれ自体がそれぞれの戦争だろう。2021年を迎えられなかった人もたくさん居る。

だからこそ思う。生き延びれて良かった。

戦争中の人も、戦争を経た人も、戦争から逃れた人も、すべての人が2021年を迎えられる事に、誇りを持ってよいのだろう。

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本当に多くの人が亡くなった。それぞれの戦争の中で自ら落とした命や、事故で落とした命。受け入れる事は出来ないけれど時は進み、世界は強制的に前を向かせる。それが救いでもあった。
後ろを振り向かず駆け抜けて来た。ふと、年の暮れに振り返ってみると、必ず誰かの愛を感じていて、他者の大切さを強く知った自分がいる。闇の中だからこそ初めて知ることもあり、2020年は良くも悪くも、忘れられない1年だった。

まだ激動の時代は続く。小さな戦争を乗り越えて来年の暮れにまた、生きて会えますように。

2021年もよろしくお願いします。

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