「インフィニティ・プール」新世代エログロ女優、ミア・ゴスの鬼畜っぷり◎
どうも、安部スナヲです。
奇才デヴィッド・クローネンバーグから、そのド変態DNAを受け継いだブランドン・クローネンバーグの、えげつなぁーい最新作、観て来ました。
【あらましのあらすじ】
売れない作家・ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)は、次回作のインスピレーションを得るべく、妻、エム(クレオパトラ・コールマン)とともに、リ・トルカ島という孤島の高級リゾート地に来ていた。
ある日、ジェームズは自分の小説のファンだという女性、ガビ(ミア・ゴス)と出会い、「お近づきになりたい」とディナーに誘われる。
それぞれの夫婦が集い、4人で会食となったその場の盛り上がりにまかせ、観光客の立入が禁止されている危険な地域へ行ってみようということになる。
惨劇はそこから始まる。
酒気帯びで夜道を運転していたジェームズは、人を跳ねて死なせてしまう。
警察に連行されたジェームズは、この島では過失であっても、殺人は死刑に処されることを知り愕然とする。
が、一つだけ死刑を免れる方法があるという。
それは、大金を払って自分のクローンを生成すれば、処刑の身代わりに出来るというもの。
かくしてジェームズはクローンを生成するのだが、意識をも丸ごと移植したクローンはまるで自分自身であることに、さらに慄く。
そして、世にもおぞましい死刑が執行される…
その後、エムは帰国し、ひとり島に残ったジェームズに、ガビが恐るべき〈秘密〉を明かす…
【感想】
〈悪夢のような〉という形容が、これほど相応しい映画はない。
実際、映画を観ている最中、何度も「頼むから夢であってくれ」と半ベソになり、終わって劇場を後にした時には本当に悪夢から解放されたような安堵感があった。
つまり、比喩としての悪夢ではなく、目覚めた時にグッショリとイヤな汗をかくようなアレ、つまり悪夢。そんな映画だ。
まず序盤。
リ・トルカ島でジェームズとガビが出会った成り行きから行動をともにし、事故を起こしてジェームズのクローンが処刑されるまで(もっとも、処刑されたのがクローンの方だとは限らないのだが…)
ここまでの展開の目まぐるしさと、あまりに過激な処刑シーンに、既に息切れしそうになった。
さらに、処刑の後のジェームズとエムに生じた最悪な軋轢。
この時、2人でベッドに横たわりながら、エムはジェームズに対し、「処刑されている自分を無表情で見ているあなたに心底ゾッとした」と、溜め息まじりに言うのだ。
あのショッキングな処刑シーンで散々心を掻き乱されたところでのあのセリフには、それこそ心底ゾッとした。
エムが帰国し、ジェームズはリ・トルカ島へしばらく残ると決めたところから、ガビはジェームズを毒牙にかける。
ガビは「話したいことがある」と、ジェームズを誘い、2人は夜のテラスで向かい合う。
あのシーンが悪夢への入り口だった。
あれ以降は映像的にも、暴力とセックスとドラッグによる幻覚をオーバーラップさせたようなイメージが交錯しまくり、正に寝ている時に見る夢のような、不整合で不条理な感覚に弄ばれる。
そんなサイケデリックなムードのなか、ガビの邪悪さに拍車がかかる。
益々襲って来るイヤぁーな気持ちに身悶えながら、実はこのような邪悪なミア・ゴスこそ、この映画に期待していたことだった。
ミア・ゴスについては、タイ・ウェスト監督の「X」「Pearl」で、完全にそっちのイメージが出来上がっていて、もはや彼女がただそこにいるだけで、何もしてなくても不埒なのだ。
そんな〈新世代エログロファム・ファタール〉とも呼ぶべき彼女の堂々たる鬼畜っぷりは本作でも存分に発揮されていた。
つくづく、この人は性=リビドーが持つ醜悪な側面を表現する天才だなぁと思った。
象徴的なのが、おそらく観た人が全員のけぞったであろう、あの立ち小便をしているジェームズのナニを背後からゴシゴシするシーン。
ああいう行為が、似合っちゃうんだからまいる。
以前、こちらにも書いたが、ミア・ゴスには、ポリコレムードに縛られがちな今の映画界に、中指をおっ立てているような気骨を感じる。
とにかく、本作のような人間の理性とモラルの崩壊を描いた映画に、これほどハマる女優はそういないと思う。
そして、狂った奴らが散々狂ったバカンスに興じた後、何食わぬ顔でリゾート地を去ってからの、あのラストシーン。
やっぱり悪夢は終わらないのだ…
と、私は捉えました。
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