給与が上がらないのは、経営者がパラレルワールドに住んでいるから。
私とあの人たちではなぜこんなにも"格差"が感じられるのだろう?
仕事の悩みランキングでは上位に《給与が低い(37.8%)》と、全世代が答えている。では、なにと比べて低いと感じているのか?
私やあなたが低いと感じる時、そこには必ず比較対象がある。「俺はあいつより背が低い。」「私はあの子より鼻が高い。」など、なにかと比べなくては私やあなたが自分の何かを低いと認識することはない。
つまり給与が低いとは、他のなにかと比べなくては低いと思わないはず。つまり仮想敵がいる。比較対象となる給与が高いものがいることを示唆している。
それが非正規と正規の差に目を向けられることは多いが、正規の社員でも給与が低いと悩んでいる。
つまり悩みは基本給与の低さなのだ。それなら経営者はもう少しでも給与をあげれば良いのではないか?そう考えてもおかしくは無いのではないか?それでも給与は横ばいだ。
ではなぜ私やあなたの給与は上がらないか?それは彼ら経営者が基本的にパラレルワールドに住んでいるからだ。
コストコやイオンの事例から紐解いてみよう。
コストコやイオンが誘致される際に必ず話題になるのが、客を奪われる、雇用者(人材)を奪われることだ。中には反対運動まで起こす人たちもいる。
中小企業や飲食店からすれば本当に死活問題。パートを集めたくとも時給につられてみんながいってしまう。
当然ではあるのだが。
コストコの最低時給が1175円。この金額を出している企業がどれほどあるだろう。地方の最低賃金は900円台で到底たちうちできない。
それに対して文句を言う経営者は多い。本来なら900円で使えたはずなのに、コストコが価格破壊している。そう思うのだろう。
確かに雇われる側からすれば「何を言っているんだ?」だろうことは想像は容易。だが経営者は本気でそう思う。
地元でもこんなことがあった。仕事が溢れて仕方ない時に、2社だけ1400円の時給を出して人を集め出したのだ。その時多くの経営者は「お金で釣るなんて最悪だ!」そう口々に罵っていた。
「お金で動くやつなんてその程度だ。どうせ他のところがあげたらそこに移るだろう。」
そう口々に経営者は本気で言っていた。正直な感想を言えばお金はベース(土台)なのだから当然良い条件であるならば人は動く、当然だし当たり前の行為。
それをなぜ経営者は本気で当然のように否定するのか?それはやはり彼らがパラレルワールドに住んでいるからだ。
経営者は利益を出すことを考える。だからこそ無駄にお金を使わないし、社員の出張費や経費にも口を出す。それは当然のことだろう。しかしながら従業員が給与が良いところに移ろうとすると、「お金だけじゃないんだよ?」と本気で言ってのける。
自分は利益を出すことを意識しているが、従業員が自分の利のために動くことを嫌う。それはなぜなのだろうか?
答えは犯罪と貧困のデータから読み解けるかもしれない。
都道府県別のデータから、犯罪と社会経済情勢の関係について単回帰分析および重回帰分析を行った前田泰伸氏のレポートによると、犯罪率と完全失業率の関係は有意とはならないが、犯罪率と現金給与総額および大学等進学率の関係は有意であるという結果が得られたと述べている。
また、最近10年分のパネルデータから分析を行ったところ、完全失業率では犯罪率との有意な関係が見出される一方で、現金給与総額については、固定効果モデルでは有意とならないという結果が得られた。
結論としては、完全失業率及び現金給与総額の犯罪率に対する関係を肯定できるとともに、経済的な格差が大きくなることで犯罪率が高まる可能性も考えられると述べている。
想像しやすいのだが、もし自分が明日食べるものがなく、隣人が超え太っていたらどうだろうか?おそらくそこから奪うのではないだろうか?もしくはお恵みを、と懇願するかもしれないが。
貧困者が犯罪を犯した時あなたはどう思うだろう?「お金がないなら働けば良いのに。」そう思うのではないだろうか?もっといえば理解し難いのではないだろうか?お金が無いから犯罪を犯すというのが。
それと同じで、持っている人間は持たざるものの気持ちをおもんばかることは難しい。「モテないやつは声をかけることを怖がっているだけ」論に近いものがある。
経営者も同様だ。私やあなたが給与が少ないことが悩みというのが理解ができない。感覚としては子供にお小遣いをあげてから1週間後に「お小遣いもう無いんだけど」と言ってくる感覚に近いのかもしれない。
基本的に中小企業の話をしているのだが、経営者の給与は大体従業員平均の5倍〜6倍くらいだ。それ以上になると、とりすぎにあたる。
そんな人たちが、給与が低いと従業員が悩んでいることに気づくだろうか?おそらくそれは無い。そのうえ、自分が2代目、3代目だったらどうだろう?
中小企業における二代目3代目の数は、中小企業庁の調査によると、2019年時点で約50万社でした。これは、中小企業の約10%に相当します。
しかし、一般的には家族経営会社のほとんどが3代までで消滅すると言われており、初代で生き延びる確率は16%。 受け継がれた会社のうち2代目以降も生き残るのは30%で、3代目のビジネスも半数しか残りません。 つまり、4代目に到達できるのは100社あたり2~3社にすぎない。
つまり運良く残っている会社にあなたは勤めていることになる。そんな運良く続いている経営者も2022年の平均年齢は63歳。63歳まで経営してきた人が普通のサラリーマンの感覚があるはずがない。
そして2代目、3代目に至っては考える必要もないくらい普通の人の感覚はない。つまりなぜそんなこと(給与の低さ)で悩むのか?わからない。
まさに「パンがなければケーキを食べれば良いじゃない」だろう。
ちなみにこんなデータもある。
経営者報酬の推移は、デロイト トーマツ グループが実施した『役員報酬サーベイ(2021年度版)』の結果を基にしています。この調査では、東証一部上場企業を中心に1042社から回答を得ており、役員報酬サーベイとして日本最大規模の調査となっています。
この調査によると、売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額水準は、中央値で9,860万円(前年比-0.3%)でした。また、株式関連報酬を既に導入している企業は74.0%(前年比-3.9ポイント)でした。
従業員の給与の推移は、国税庁が公表した『令和2年分 民間給与実態統計調査』2の結果を基にしています。この調査では、全国の約1,800万人の給与所得者のデータを集計しており、日本人の平均給与の動向を把握するための統計となっています。
この調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与(年収)は、令和2年分では518万円(前年比+2.1%)でした。また、平均給料・手当は411万円(前年比+2.1%)、平均賞与は107万円(前年比+2.1%)でした。
これらのデータを比較すると、経営者報酬と従業員の給与には大きな格差があることがわかります。
具体的には、売上高1兆円以上の企業における社長の報酬総額は、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与の約19倍に相当します。また、株式関連報酬を含めた経営者報酬の比率は、社長の場合は約6割、執行役員の場合は約4割に達していますが、従業員の場合は株式交付制度等の価値を含まないため、その差はさらに拡大する可能性があります。
大企業だとこのくらいの格差が生まれています。しかし経営者はリスクをそれだけとっており、その差は仕方ないものでしょう。
これらが経営者はパラレルワールドに住んでいるの理由です。私やあなたが想像できない、つまりパラレルワールドなのだ。
しかしながら、格差の拡大はどのようなことを招くのだろうか?
答えはパラレルワールドに住む人々にしかわからない。
それでは、また、次回。
あどりでした。
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