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【歌詞翻訳・解説】La déclaration d’amour(1974)【フランス・ギャル】


※今回の記事はフランス・ギャル&ミシェル・ベルジェ夫妻の馴れ初めに重点を置いた内容になっております。ご了承の上お読みいただくことをおすすめします。



①概要

 今後は個人的に気に入っている曲に関するエピソードや歌詞の翻訳を不定期で投稿していく予定です。

 なお、このnoteのテーマは「語学」ではなくあくまで「フランス・ギャルの音楽、人生、エピソード紹介」ですので、歌詞に関しては「正確さ」より「雰囲気重視」で翻訳しています。予めご了承いただければと思います。(あまりにも…な誤りがある場合は忌憚なくご指摘ください)

 まずは後に夫となるシンガーソングライター兼プロデューサー、ミシェル・ベルジェからの初提供曲であり、フランス・ギャルの歌手人生における大きな転機となった一曲"La déclaration d’amour"(1974)を取り上げたいと思います。

 "La déclaration d’amour"(愛の告白)は1974年5月にシングルA面曲として発売されました。B面曲は"Si l’on pouvait vraiment parler “(「もし本当に話せるのなら」。こちらも次に解説します)

 こちらが公式音源(2004年にリマスターされたもの)

 こちらが1974年、発売当時の生歌唱の動画です。歌詞を途中で間違えて(噛んで?)苦笑いしているのが分かります。それにしても74年の映像がこんなに綺麗に残っているのが凄い。

 後で歌詞と日本語訳を載せますが、曲の内容は要約すると「あなたのことが好きだけど告白できない」という切ない恋心を歌ったもの。ギャルの透明感ある声と囁きかけるような歌唱が非常に印象に残るラブソングとなっています。


②エピソード紹介

 この曲を語る上で欠かせないのがギャル・ベルジェ夫妻の馴れ初めだと思いますので、紹介しておきます。

 これまでの記事にも書きましたが、ギャルの「アイドル」としての人気は1967〜68年頃から次第に低迷してしまいます。それ以降の彼女はレコード会社を何度も移籍したり、ドイツやイタリアに出稼ぎしたり、たまにTVで昔のヒット曲を歌う「落ちぶれたアイドル」状態だったようです。その間もたくさんレコードは出していますが、ヒット曲に恵まれない日々が続きました。
 
 そんな彼女にとって転機となったのが、1973年の春、ミシェル・ベルジェの曲を偶然カーラジオで聴いたことでした。当時のベルジェは歌手活動も行っていましたが、主にヴェロニク・サンソン(ベルジェの元恋人です)やフランソワーズ・アルディ等への作詞作曲やプロデュース業に携わっていた、どちらかというと「裏方」として有名な人物だったようです。

 ベルジェの才能に強く惹かれたギャルは早速彼に曲の提供を依頼しますが、彼は「自分の作る曲とこれまでギャルが歌ってきた曲とはイメージがあまりに違いすぎる」と考え、最初は断ったそうです。しかしその反応に「彼は自分のことを真剣に考えてくれる初めての人だ」と感じたギャルは、何度もマネージャーを通じて彼にアプローチし、ついには家まで押しかけたとか…。相当ベルジェの才能に入れ込んでいたのが伺えます。のちにギャルは「私がずっと探していたのは彼、他の誰でもない。彼が書いてくれないならもう歌うのをやめようと思った」と語っています。

 ギャルからの一方的な要請によって始まった2人の関係でしたが、音楽について語り合ううちに彼らは意気投合し、次第に仕事上でも、また男女としても親密になっていったようです。

 その後、ベルジェは自身のアルバムの中の一曲”Mon fils rira du rock’n roll”(僕の息子はロックンロールで笑うだろう)にギャルをゲストボーカルとして参加させます。

 そして74年3月のある日、ベルジェはギャルの前で"La déclaration d’amour"をピアノで弾き語りして聴かせます。「これは君のことを想って書いた曲」と言いながら…。"La déclaration d’amour"はベルジェからギャルへの本当の「愛の告白」だったのでした。とてもロマンチックな話ですね。

 どうやらベルジェはこの曲を自分で歌うつもりだったようですが、結局ギャルのシングル曲として同年5月に発売されることになりました。そしてこの曲のヒットにより、ギャルは「落ち目のアイドル」から「大人の女性シンガー」として復活を果たし、その後2人は公私共にタッグを組んで活動していくことになるのでした。まるでドラマか映画のようなエピソードだなと思います。


③歌詞翻訳

 ここから歌詞と翻訳です。

 ベルジェからギャルへの告白の曲、ということで、今回は男性目線で訳してみました。なお、最後の台詞は「レコーディングの際にベルジェがギャルに即興で書かせた」とのことです。こちらは女性からの答えということにしました。
(注:あくまで個人の解釈です!)
"déclaration”は直訳すると「告白」ですが、「想いを伝えること」等と意訳しております。

La déclaration d’amour

Quand je suis seule et que je peux rêver
Je rêve que je suis dans tes bras
Je rêve que je te fais tout bas
Une déclaration, ma déclaration

ひとりでいる時空想するんだ
君の腕の中にいることを
そして小さな声で君に伝えるんだ
僕のこの想いを

Quand je suis seule et que je peux inventer
Que tu es là tout près de moi
Je peux m'imaginer tout bas
Une déclaration, ma déclaration

ひとりでいる時頭の中に描くんだ
君が僕のすぐそばにいるって
そしてこっそり想像するんだ
君に想いを伝えることを

Juste deux ou trois mots d'amour
Pour te parler de nous
Deux ou trois mots de tous les jours
C'est tout

たった2つか3つの愛の言葉
僕たちのことを君に話すために
飾らない言葉を2つか3つ
それだけでいいのに

Je ne pourrai jamais te dire tout ça
Je voudrais tant mais je n'oserai pas
J'aime mieux mettre dans ma chanson
Une déclaration, ma déclaration

だけど決して言えないんだ
とても言いたいけど勇気がないんだ
だからこうして歌に込めるよ
僕のこの想いを

Juste deux ou trois mots d'amour
Pour te parler de nous
Deux ou trois mots de tous les jours
C'est tout

たった2つか3つの愛の言葉
僕たちのことを君に話すために
飾らない言葉を2つか3つ
それだけでいいのに

Quand je suis seule et que je peux rêver
Je rêve que je suis dans tes bras
Je rêve que je te fais tout bas
Une déclaration, ma déclaration

ひとりでいる時空想するんだ
君の腕の中にいることを
そして小さな声で君に伝えるんだ
僕のこの想いを

(セリフ)
Je t'aime quand tu es près de moi
Je t'aime quand tu n'es pas là
Je pense à toi
Je t'aime quand tu souris

私のそばにいるあなたが好き
そばにいない時も好き
あなたのことを想っているわ
あなたの笑顔が好き

Je veux des souvenirs avec toi
Des images avec toi
Des voyages avec toi
Je me sens bien quand tu es là

あなたとの思い出がほしい
あなたと一緒に写真を撮りたい
あなたと一緒に旅がしたい
あなたがそばにいると幸せ

Je t'aime quand tu es triste,
que tu ne dis rien
Je t'aime quand je te parle
et que tu n'écoutes pas
Je me sens bien quand tu es là

悲しんでいるあなたも好き
あなたは何も言わないけれど
私と話している時のあなたも好き
あなたが何も聞いていなくても
あなたがそばにいると幸せ

1974年のギャルとベルジェ
すぐに恋愛関係になった2人は76年に結婚した
(Photo by Patrice PICOT/Gamma-Rapho via Getty Images)


 次回はB面曲"Si l'on pouvait vraiment parler"(もし本当に話せるのなら)を紹介したいと思います。
 


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