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~ひとまわり~のはじまり

書こうか書くまいか、最近心の中で考えていたことがありました。今回は、そこから書くと決めた始まりの話です。

バールノートの存在

以前にも記しましたが、私にはパティシエの経験を重ねる途中で、バリスタとして勤めた頃が数年ありました。そのきっかけは、エスプレッソに興味を持った事で始めた「バール巡り」であり、自身の記録用にと付け始めた「バールノート」です。

パティシエに戻ってからも、エスプレッソが好きなのは変わらず、バールへも時々通ったり、親しいバリスタさんとは繋がっていて、近況報告等もしていました。ただそれも、月日を重ねる中で、転職するバリスタさんや、他の地域で独立するなどあり、徐々に私も行く機会が減っていきました。

そんな中でも、唯一思い出せたのは「バールノート」の存在でした。バールノートはいつも、本棚の定位置に収めていて、年に数回程、ふと見たくなり眺めるものとなっていました。見る度に、「懐かしいなぁ、こんな事思って書いてたのか」と、本当に初心者だった頃の自分を思い出させてくれる存在でした。

気付けば12年

そして、最近もバールノートを見る時があり、ふと思ったのが「そういえば、この時から丁度12年経ったな…」という事でした。よく、5年、10年毎に節目として企画やイベントは開催されますが、この時は何故か「12年」という数字がとても引っ掛かりました。

一回り、干支一周。年齢を伝えたり互いの情報を知った時、ジェネレーションギャップの様な感覚を覚える言葉。「気付けば、私がエスプレッソを知り、バリスタさん達と出会ってから12年経っていたのか…」早いものだと感じると同時に、「今の状況」を凄く知りたくなってきました。

覚えているか?

もう一度、バールノートを見直すと、しっかり情報を記録した二十数人のうち、今居る所を知るのは8人程でした。バールノートを記しているのは私だけですし、比べるという訳でもなく、一回りした今をまた記録したい、そう個人的な思いが先立つのと同時に、「彼等は私を覚えているのだろうか?」という疑問が浮かびました。

会っていない期間は、長い人では正に、バール巡りで伺って以来の、12年近い人もいました。「その人に会いに行って、どう切り出そう…?迷惑になってもいけないし…」と勝手な不安が過ります。

私が残したい、その一択

その不安がある中で、つい昨日の話ですが、5年程音信不通だった人が勤めていると知った、レストランへ行きました。理由は単純に、会いたくなったからです。喫茶で利用後に、彼が今も居るかスタッフさんに伺ったところ、残念ながら彼は本日休みで居ないとの事。

そのスタッフさんは、「ご友人ですか?」と伺ってきたので、「友人というか、古い繋がりで…」と知り合ったバールの名前を話すと「そんな前からのでしたか!彼は今…。」と、近況を教えてくれました。そして「お名前を教えて頂けませんか?明日、その者と一緒に勤めるのでお伝えします」と言って下さりました。

彼の近況を聞いた後、私は物凄く嬉しい気持ちになりました。自分が何かを成し遂げた時よりも、色々頑張っていた12年前の頃を知る人が、その努力が結果となり実って今も居ることが、心の底から嬉しかったのです。

例え会えなくても、例え私を忘れてしまっていたとしても、ちゃんと努力が報われている、それを知れただけで、幸せな気持ちで胸がいっぱいになりました。そして、「やはり記録に残そう」という気持ちになりました。これは、私の完全なる自己満足です。でも、12年前を記録しているからこそ、出来る事でもあります。


これから、少しずつですが休みを使って、バールノートを手にしながら、彼等の今に会いに行きます。タイトルは「ひとまわり」。それぞれの12年後の今を、バールノートとは違う形ですが、写真に残し、記録していきたいと思います。


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