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藤代冥砂×紀尾井町

有名写真家の藤代冥砂さん。100%記憶ベースの話で恐縮なのですが、むかーし、藤代さんがどこかの雑誌に連載されていたフォトエッセイが好きでした。

「紀尾井町」というタイトルの回では、文字通り、藤代さんが紀尾井町で、道に向こうにいる誰かに知り合いだと思って遠くから声をかけたら他人だった、というエピソードを綴ったものなのですが、私はその話がとても好きで、それをきっかけに、ついでに紀尾井町が好きになり、紀尾井町から東京タワーあたりをぐるぐるドライブしたり、ニューオータニにコーヒーを飲みに行ったりしたものでした。

紀尾井町の文章は一目惚れならぬ、一読惚れでした。理由は明確で、起伏のない、自分好みの優しい内容だったから。誰も傷つかず、人の内面もえぐらず、殺人鬼もいないし、意地悪な人も出てこない。でもちゃんと、読み物として成立し有名誌に載っていることが嬉しかったのです。私は紀尾井町を読んで、都会特有のくぐもったような空と、カッコいい旧車と、ロン毛の藤代さんを空想して、時代の寵児みたいな、こんなにもイケてるひとのさりげなさすぎるエピソードにほっとしたのでした。

当時はどちらかというとわたしにとっては、奥さまでモデルの田辺あゆみさんのほうが有名で、すごいカップルが誕生したなあと驚いたものでした。ミーハー心で近況をググると、今も仲睦まじく、息子さんが1人、いらっしゃる様子。ウチと一緒だ、とまたミーハーに嬉しくなったのでした。

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