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ジョブズが愛した禅〜私たちはいつから答えを外に求めるようになったのか〜

こんにちは。Q&Qのあどにゃーと申しますにゃ。

著名な起業家や偉人は心のあり方として禅を参考にしていることが多いと聞きます。スティーブ・ジョブズの厳選された本棚にも"弓と禅"が並んでいたそうです。今回は、そんな禅について解説したいと思います。

禅というと坐禅禅問答などの言葉や、選挙に当選したら目玉を塗る達磨はお馴染みではないでしょうか。しかし、禅とは何か?と問われると難しいですよね。禅を考える上で、まずは仏教について知っていきましょう。

仏教とは

飛鳥時代頃に政治的な民心の統治目的などもあり、徐々に仏教が日本に広まっていきます。仏教は、仏陀が作った宗教で「苦しみを取り除くにはどうすればよいか」が教義の原点となっています。他の宗教は幸せになるために徳を積むようなプラスを目指していく教義が多い中、マイナスから0を目指す宗教というのは特徴的と言えます。

達磨による禅

禅宗の元祖は達磨と言われています。達磨は、仏教において最も大事な部分は悟りを開くことであり、悟りを開くプロセスに価値があると考えました。その中でも仏陀が悟りを開いたプロセスを下記としたのが達磨です。

1. 坐禅を行う
2. 瞑想の自問自答を行う

この2つを重視することが、自らの心を調和して悟りに向かう上で大事だよね、というのが禅の考え方になります。
達磨の考えは、「真理は言葉や文字で伝えられるものではないから、自問自答を通じて自己を見つめることで道が開ける」とするものです。要するに答えは外ではなく、自分の内にしかないよということです。洋服を例にとると、購入する服が美しいかどうかを決めるのは周囲の意見ではなく、自分の心だということですね。

日本と禅

日本における禅の宗派として有名なのは臨済宗曹洞宗だと思います。臨済宗は達磨の悟りに至るプロセスの自問自答が重要だよねと考えた仏教で、栄西という貴族階級の人が日本に輸入して、貴族の間で流行しました。一方で、曹洞宗は達磨の悟りに至るプロセスの坐禅の方が重要だよねと考えた仏教で、道元という人が日本に輸入して、武士の間で流行しました。
禅宗が武家や貴族階級に受け入れたのは、自己を見つめる宗派だったからと言われています。他の宗教は、崇拝する"神"が存在し、その神を至高の存在とするため、その時代の至高の存在にならんとする統治者たちにとっては都合が悪かったのです。一方で、禅宗は答えを自らの中に見つめるので、統治者たちの政治の邪魔をしませんでした。

自己を見つめる禅の考え方は政治の邪魔をせず広く受け入れられた

科学宗教と偉人と禅

科学革命以降、我々は科学宗教に属するようになりました。科学宗教は、万物は物理法則に従い検証可能性・再現性があると考える宗教です。この宗教は最強で多くのモノに適応できました。車も、飛行機も、大量生産も、再現性を重視する科学宗教のおかげです。しかし、科学宗教は心のあり方を選択する自己決定には、指針を示しませんでした。具体例を上げてみましょう。

具体例: 仕事の満足度が下がってきている、転職するべきかどうか
回答例:

古典宗教:神が与えてくれた仕事を変えるべきではない
科学宗教:35歳年収500万のエンジニアの女性が転職した場合、転職後の年収は600万になる可能性が高いので転職すべき
:あなたがどうありたいかなので、あなたの心に従うべき

科学は今や宗教化しているので、自分の心のあり方の問題さえも科学宗教に当てはめて決定してしまっている場合もあるかもしれません。しかし、問題の原因を理解ができていないと科学宗教は役に立たない結果をもたらすでしょう

偉人たち・クリエーター・デザイナーにとっては、このことは重大な問題です。なぜなら彼らは新しいプロダクト・サービス・絵・デザインなどの新規価値を創造する存在だからです。彼らの実施する新しいことを決める際には、科学宗教が得意とする過去の人たちの大量の検証データはありません。自分にとって何が美しいと思うのか、どうあるべきかを考えて生み出すしかないのです。そして、生み出したものを検証に回す段階で初めて科学アプローチをとることができるのです。
この所作は自己を見つめる禅と非常にマッチしており、それ故に偉人たちは禅を愛したと考えれられます。創造活動においては、答えを外に求める(科学)のではなく、その問題に向き合い自分の答え(禅)を出すことが大事という考え方です。

エンジニアと禅

科学の申し子のエンジニアたちにとっても禅は他人事ではありません。「この寸法を1mm縮めるにはどうすればよいか」を答えられるHWエンジニアはたくさんいますが、「寸法を1mm縮めることによって犠牲となる性能を考慮した場合、お客様にとってどちらがうれしいか?」に答えられるHWエンジニアはめったにいません。「このUXを実現するためにどのような実装をするべきか?」を答えられるSWエンジニアはたくさんいますが、「このUXの実装は本当にお客様にとってうれしいか?」に答えられるSWエンジニアはめったにいません。科学ばかりに頼ってしまうと、お客様の心のあり方や自分の心のあり方を忘れてしまい、お客様に価値を届けるという本質的な意味で良い製品を作ることができなくなってしまうのです。製品・サービスのどこが好き・嫌いを答えられなくなってしまったエンジニアは要注意だと思います。

偉人の具体例

スティーブ・ジョブズ
スタンフォード大学でのスピーチで「Follow your heart」と言ってます。「あなたが感じ取ったままに行動しなさい」という意味で、禅の教えそのものですね。

山口周
山口さんも下記のように言っています。

今は、「解決能力が過剰」な時代だ。正解がコモディティ化すると、答えに大差がなくなるため、「正解を出す力」は急速に価値を失う。代わりに価値を増すのは「問題を発見する力」だ。

要するに科学的な再現できる正解は価値を失って、価値を創造できる力が必要になるってことですね。禅ですね。

キングコング西野
完璧な答えが出るまで動かない人は、結局、最後まで動かない、いきなり答えが出せるわけがないんだから、間違ってでも、まずは一歩踏み出さなきゃいけない
って言ってますね。完璧な答えが出るというのは、科学的に検証可能性が周知の状態になるということですね。その時点で希少性を失って価値を失ってしまうということですね。自分で考えて一歩を踏み出す、禅ですね。

まとめ

自己決定や価値創造においては、自分の心のあり方を問わなければならず、外に正解を求めるのではなく、自分自身の内を見つめて答えを出していく必要がある。このプロセスを問いた禅は偉人たちに愛されている。

自己を見つめる練習に

禅では禅問答によって自己の研鑽し、自己の理解を高めました。Q&Qでは、創造性や自己理解を高めるために、自らの問いに問いを重ねて自分で答えを導いていくサービスを作っています。興味があれば、ぜひ使ってみてください。


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