【#NIKKEI】COCOA不具合は、DXレポート(2025年の崖)の写す未来

 引用した内容としては、そのタイトルの通りだが、COCOA(厚労省のCOVID-19感染者関係のスマートフォン向けアプリ)開発に関して、多重に委託した結果、責任の所在が曖昧になっているというもの。
 しかし、意外とこうした状況を予見していた人も多いのではないだろうか。経済産業省の発表しているDXレポート(2025年の崖)にも象徴されるように、デジタル技術が社会やビジネスに浸透すれば、今までのデジタル戦略を続けることは危うさを意味することになる。

参考)経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

ユーザ企業からベンダー企業への丸投げ

 要件定義から請負契約を締結するケースも少なくなく、何を開発するかをベンダー企業に決めてくれと言っているのと同じ

 新聞などの各メディアでも言及されてはいるが、不具合の主たる要因はコレである。ユーザ企業(厚労省)側にITに関する知識がないために、ベンダー企業(システムの開発・運用などを担当する企業)に任せっきりにしたために、明確な指示が出せず、また不具合の指摘も無視し続けた結果となった。
 気になるのは、あれしたい、これしたい、と要求して、どうすればできるのかが明確になっていない状態で開発に臨んだ可能性がある。一般的には、機能が増えたり複雑な構造は、不具合をおこしやすくなる。例えば、コンビニのコーヒーサーバーは暖かいコーヒーしか出ず、アイスの場合は、カップ側で温度が下がるようになっている。そのため、ある程度、ベンダー企業側と話し合って、何が必要なのか、を明確にした上で、不具合の発生しにくい仕様を目指すべきだったのだと思う。

ユーザ企業とベンダー企業の責任関係

 ユーザ企業とベンダー企業との間の責任関係や作業分担等が明確になっていな炒めに、損害賠償請求の訴訟などに発展する可能性がある

 今回、受託会社の「パーソル プロセス&テクノロジー」が自主返納をし、以下のリリースを出している。

当社はこれまで本アプリの開発及び保守・運用において、その重要性と緊急性を十分に認識し、契約に則って真摯に業務を遂行してまいりましたが、約4か月間Android版アプリの不具合を発見できなかったことで国民の皆様にご心配をおかけしたことを重く受け止めており、受託金額の一部を自主的に返納させていただくことに致しました。

国民の皆様に多大なるご心配ご迷惑をおかけいたしましたこと、改めて深くお詫び申し上げます。

参考)新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」受託金額の一部自主返納に関するお知らせ
https://www.persol-pt.co.jp/news/2021/04/16/5024/

 気になるのは、契約に則って真摯に業務を遂行して参りましたが、という点だ。契約に則って真摯に業務を遂行した結果、約4ヶ月間の不具合を見逃したということになる。本来であれば、不具合の窓口は厚労省なのだから、ベンダー企業は指示を受けなかった時点で、無関係であるし、そもそも契約になければ対応する必要がないことになる。おそらく、こうした点が分担の不明瞭な点だろう。
 消費者からの不具合や問い合わせ、システム周り(Android/iOS)のアップデート情報、などの対応について、役割分担をし、情報の連携が取れていれば今回のケースは免れたのかもしれない。

アジャイル開発における契約関係上のリスク

 要求仕様が不明確な状態で小刻みな開発を繰り返すことで具現化していく開発手法(アジャイル開発)に沿った契約形態が整備されていない

 上記と関連するものであるが、要求仕様が不明確で役割分担が不明瞭で、基本ベンダー企業に任せっきりとなると、何をして良いか分からず、結果的に開発は進みにくい。
 DXレポートには、完成物責任を伴う請負契約では、仕様を不明確としたまま開発を進めることが行いにくく、他方で、完成物責任のない準委託契約で進めようとするとベンダー企業側にインセンティブが不足する、とある。
 これに準ずれば、仕様を不明確としたまま開発を進めることが可能な、完成物責任を伴う請負契約、を開発することが求められるのだろう。もし、ユーザ企業に知識のない状態を前提とするならば、単的にKPI(重点目標)を伝え、予算を多めにとり、ややベンダー企業の言いなりになりながら開発を進めるのが現実的なのかもしれない。割高な金額は勉強代として割り切るしかない。

まとめ

 結局は、いまさら顕在化した問題、ということでしかない。スマートフォンの普及に伴い、アプリケーションは身近な存在となり、とりあえずアプリ作る、という選択をする企業も少なくないと思う。しかしながら、実際には簡単なものではなく、アプリ提供を終了する企業も少なくない。今回でいえば、ITに関する知識がないのならば、ITについて学ぶという姿勢が求められることが必然であるのに、それを怠った結果と言える。また、今回の件で、専門家を拡充する、と一部報道であったが、専門的知識を内部に保有せず、外部から調達するという判断が正しいとは思えない。その結末が気になるところである。

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