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【まとめ】徳川家康の広告をまとめてみたら、戦国大名の地元ミスマッチが見えてきた。

大河ドラマ「麒麟がくる」のOAを記念して、これまでアドパブリシティの本拠地・愛知県出身の英傑「織田信長」「豊臣秀吉」が出演している広告をまとめてみました。この流れで行くと、やはりこの人をやらないわけには行かないでしょう・・・というわけで、今回は「徳川家康」が出演する広告についてまとめてみたいと思います。

まずは最初に、静岡県のディスティネーション・キャンペーンから見てみましょうか。

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こちらは静岡県とJR東海が2019年4~6月に展開した観光プロモーションで、旅行会社9社が協力しています。徳川家康を務めるのは、浜松市出身の筧利夫さんでした。

ただ、ここでちょっと疑問が・・・家康は愛知県の岡崎城(松平家)の生まれで、静岡に居住していたのは、今川義元の人質になっていた7歳ごろから元服までの期間と、浜松城に居城した17年間です。73年の生涯(数え年では75歳で没)のうち静岡にいたのは25年程度なので、地元・静岡の殿様という意味合いであれば、桶狭間の合戦まで地元・静岡で強大な勢力を持っていた今川義元のほうが適任じゃないのかな?と思えるんですが・・そのへんは 後ほど。

次も観光関連の広告です。静岡の公式キャラクター「出世大名 家康くん」と、アサヒ飲料「十六茶」のコラボ広告。

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ガッキーに目線が固定(笑)。

かわいい💛  思えばこの頃、「ゆるキャラ」が各地で増殖し、都道府県の観光課が「ゆるキャラ全国コンテスト」を制するため、凌ぎを削っていました。「家康くん」はそうした流れに乗るべく作られたキャラクターのようです。しかし、2018年に投票の不正操作(組織票)の問題が発覚し、「ゆるキャラブーム」は一気に沈静化してしまいます。「観光プロモーションの闇」って、各地に有るんですよね・・・。私も過去の広告業務で体験したんですが、それはまた別の機会に。

さて、ここまでは静岡県が取り上げた家康を見てきたのですが、次は家康の生誕地である愛知県が取り上げた広告を見てみましょう。

まずは名古屋市内の地下鉄・バスに掲出されている名古屋市交通局のマナーポスターから。

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前回の記事で「信長」「秀吉」版もUPしましたが、「家康」版も「鳴かぬなら・・・ホトトギス」の俳句をモチーフにしたマナーポスターになっています。ちなみに「ぜってゃあ ゆずったれせんわ」は名古屋弁で「絶対譲らなかったよな」と、家康を攻める意味合い。「でぇらあ わかかったもんで かんわ」は「とても若い頃だったので」を意味します。平仮名で読むとカタコトになってしまいますが、実際には前後を繋げて、音便化させて読みます。他県の方には、ちょっと聞き取りにくいかもです。

次にこちらは、家康の生誕地である岡崎市の観光ポスター。

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出典URL: http://www.giin.biz/oota/blog/post-253.html

岡崎市の観光プロモーションとして、幼少時の家康(幼名:竹千代)を起用したポスターです。キャッチの意味は分かります?「こりん」と言えば「こりん星」から来たこの方ですが、もちろんこっちでないです。

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三河弁で、「いっぺん、来りん。」は「一度来なさいよ」を意味します。イラスト版のSP広告も存在したようですが、こちらは方言無しでした⤵。

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三河弁では語尾に「じゃん」「だら~」「りん」が付くのが特徴で、通称「じゃんだらりん」と呼ぶこともあります。よく名古屋弁と三河弁は混同されるのですが、江戸時代の愛知県は尾張藩と三河の5つの藩に分かれていこともあり、比べてみるとかなり違います。

ではいよいよテレビCMに逝ってみましょう!最初はサントリーBOSSのCMから。

家康はなんとタモリさん!

サングラスもそのままです。石田三成役に野村萬歳さん、戦場でタフに戦う足軽役にはトミー・リー・ジョーンズさんとタカ&トシさんが出演しています。設定は関ヶ原の合戦。自軍の大将である小早川秀秋が寝返ったために現場で混乱させられる足軽たちを、現代の会社員に見立て共感を訴求する内容です。確かに企業の中では、上司の方針変更で社員が迷惑を被ることってありますよね。「ブラック企業」という名称が出始めた当時の、世相を反映したCMかと思います。

続いては、勤怠管理システムのCMです。

こちらも舞台は関ヶ原。西軍が兵員の管理を紙で行ったために混乱したのに対し、東軍はデータベースでPC管理していたため、統制が取れて有利に戦えた!とうオチ。企画は面白いんじゃないでしょうか。ただこの家康、髷を結わない散切り頭で描かれているのが珍しいです。顔の造作は「見取り図」の盛山さんに似てるような。

3つめは2014年にOAされたトヨタの企業広告、「ReBORN」のCM。

ようやく国内が東北大震災のショックから立ち直った時期に、「Fun to drive again」を謳っています。ストレートに言ってしまえば、「そろそろ車を買ってね」というCM。現代に蘇った徳川家康を堺雅人さんが演じています。

ローカルCMにも面白いのがありました。こちらは静岡で6店舗を展開する文具店のCM。地元では「コバブン」で通るそうです。

使い込まれた家康の鉛筆の実物を見せることで、文具を大切に使うよう啓蒙しています。販促最優先で使い捨てを推奨するCMが多い中、「モノを大事に使おう」というメッセージは貴重じゃないでしょうか。

ここからは「広告ではないのですが、見つけてみたら面白かったおまけ」を追記します。まずはこちらはどうでしょう?

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若き日の舟木一夫さんが謳う「竹千代音頭」。実に55年前!の1965年の発売です。歌詞が聞きたい方は以下でどうぞ⤵。「シャンシャン・シャシャンと松平!」とお囃子が入り、愛知県側から家康が描かれています。実は舟木一夫さんは愛知県一宮市出身。私も知りませんでした。

最後はYoutuberのこの方を紹介します。「たけちよ倶楽部」で旅行ネタをUPしている山中竹千代さん。徳川家康の幼名と同じ名前は本名で、岐阜県羽島市出身だそうです。親御さんが家康推しだったんでしょうね。

この方が面白いのは・・・・・・

Youtuberなのに雨男!

だということ。撮影が雨に祟られることが多いのは、やはりご本人が「持っている」としか言いようがありません。例に挙げた動画では、傘を持っているのに強風で傘が壊れ、ズブ濡れになっています。そんな不運なところが特徴になって視聴者を楽しませた結果、人気が出た!という、面白いケースのYoutuberさんです。ちなみにこの竹千代さん、リサーチ力が凄い方なので、企画が面白いです。

【まとめ】

今回「徳川家康」の広告をまとめてみると、家康に限らず戦国大名は、あちこちで「現代の地元とのミスマッチ」が起きていることがわかりました。

例えば家康は75歳まで生きたのですが、生誕地である愛知県で過ごしたのは約6年。静岡で過ごした期間も約25年。愛知・静岡を合計しても人生の半分以下です。しかし、後世になって積極的に広告に使っているのは生誕地である愛知県と、人質時代を過ごした静岡県に限られます。最も長く住んだであろう東京都では事例が少なく、「東京の英傑」として広告に取り上げられるケースは無いようです。

そういえば先日も、「麒麟が来る」の舞台である岐阜城(稲葉山城)を訪れた際に気づいたのですが(記事はこちら⤵)・・・

地元・美濃出身の城主だった斎藤道三ではなく、その後齊藤氏に勝って岐阜城に入った尾張出身の城主・織田信長をメインにした展示がなされています。地元と縁の薄い武将であったとしても、「地名度の高い人と地元を結びつけたほうがメリットが多い」という地域の思惑が見えてきます。

こうしたミスマッチは三英傑に限らず、全国の多くの戦国武将にとって「あるある」じゃないでしょうか。明日の命さえ保証されない時代を、文字通り「命懸け」で生きぬいた戦国時代の武将たち。そんな「地元の英雄」たちを、後世の地元の人たちが出来る限り推してあげて欲しいなと思いました。ちなみに、大河ドラマ「麒麟がくる」で徳川家康を演じているのは、こちらの風間俊介さんです。

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出番はもうちょっと先になると思いますが、ぜひ注目して見ましょう。では今週も大河ドラマ「麒麟がくる」を楽しみにします。 (RYU)

※シリーズ3部作「信長の広告まとめ」「秀吉の広告まとめ」はこちらです。