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ハートに火をつけろ 〜 選手の情熱を掻き立てる言葉とは

(トップ画像は the WORLD より)

先日、Twitterでこんな言葉を見つけました。

もしも船を造りたいのなら、男たちをかき集めて森に行かせ、木を集めさせ、のこぎりで切って厚板を釘で留めさせるのではなく、男たちに海へ漕ぎ出したいという情熱を教えなければならない(サン・テグジュペリ)

サン・テグジュペリのこの言葉は恥ずかしながら初めて知ったけれど、これはまさにそうだなって。

サッカーに置き換えて考えれば、選手たちに技術や戦術などを教えることも大事だけれど、でもそれ以上に、いやそれ以前に、サッカーに対する情熱をどう引き出せるか、そのためにどう伝えるかのほうが大事ってことだと思うのです。

今回は、そんなコラムです。

情熱とは

サン・テグジュペリは「情熱を教えなければいけない」としているけれど、これは訳の解釈の問題かな⋯やはり情熱は教えるものではなく、それぞれから自然に生まれるもの、沸き立つもの、溢れ出すものであってほしい。

つまり僕らコーチは、サッカーが好きだという情熱、うまくなりたい、強くなりたいという情熱が選手たち自身から生まれ、そしてその情熱を絶やすことなく、萎ますことなく、燃やし続けてくれるような環境づくりと、声がけや接し方をしていかなければいけないなと思うのです。

《情熱》いう言葉ですが、練習の場においてはもう少し具体的に言い換えたほうがいいですね。

「自分の意思で走り出す、走り続けられる」

走るという言葉には、考える、工夫する、向上心を持つことも含まれます。オシムさん大リスペクト。

自分の意思で走る

これを、選手たちの内発的動機に呼びかけたい。

自分もそこは前から考えていて、様々な工夫をしているのですが
せっかくなので、自分が実際に選手たちに対し、彼らの情熱を掻き立てるために、自分の意思で走ってもらうために⋯
普段の練習の中でどんな伝え方をしているかを、ここで少しだけ紹介したいと思います。

全部書いたらたぶん10,000字超えるので、今回は2つだけにしときます。

① 自分だけでなく、チームメートをうまくする

練習するときに、自分がうまくなるだけでなく、チームメートもうまくなるようにすること。
チームメートがうまくなれば、チーム全体のレベルも上がるので、結局は自分も得をする。
自分だけがうまくなっても、他のチームメートのレベルが上がらなければ自分も損をする。

例えば相手に寄せるような練習でも、練習ではつい力を抑えてしまう(最後はジョグになっちゃうとか)になりがちだけれど、そこは、今そのボールを受けようとしている仲間をうまくするためだと思って、全力で寄せるんだと。
これを、当たり前の習慣にすること。

今しかない、というタイミングで走り出した仲間を見つけてあげてそこにパスを合わせてあげれば、その仲間は走った甲斐があるし、成功体験にもなる。
その反対で、今!というタイミングで走り出してあげれば、ボールを保持している仲間にタイミングの選択肢を教えてあげることにもなるから、その仲間のレベルはきっと上がる。

他にもたくさん例はあるでしょう。
こんなふうに、自分だけでなくお互いがお互いをうまくするんだ、それが結局は自分のためにもなるんだということを選手たちに伝えて、それを選手たちが受け取ってくれれば、緩さのない、密度の濃い練習になります。

自分のためだけでなく、人のため。
走り出す理由には、これが一番のような気がするのです。

② やったことある練習をやるときのマインド

以前までは、やったことのある練習はあまりやりたくない。つまらんし!と思って、目的は同じだとしても毎回違うメニューを考えていたりしてたんですが
これは最近、ちょっと待てよ、と思うようになりました。

初めてやる練習って、新鮮味もあるし刺激もあるから、結構うまくいくんですよね。
で、昨日この練習でうまくいったし良い雰囲気だったから今日もこれをやろう、と思ってついつい同じメニューをやりたくなっちゃう。
そうするとたいてい、ぬるーい感じになります。笑
やり方もわかってる、大体こんな感じと最初からわかってる、だから新鮮味も刺激もない。

人間は、どうしても「慣れる」生き物。だからやったことある練習をやろうとすると「あぁこの練習か、じゃこれをこうやっとけばいいよね」と、ついついなっちゃう。

そこを、自分の手で、自分の情熱で乗り越えてほしいと。

1ヶ月前にやった、先週やった、昨日やった⋯そんな練習でも、以前の自分はここまでしかできなかったけれど、今日はそれ以上にこんなことやあんなこともできるようになろう、と思えれば。

前にはできなかった工夫を今ならば思いつくかもしれないし、前よりも今のほうが間違いなくうまくなってるのだから、前にはできなかったことも、今ならばできるかもしれない。

最新の自分が最高の自分であるように。やったことのある同じ練習でこそ、自分で自分をアップデートする絶好のチャンスでもあるんだと、よく伝えてます。

そう伝えると、何回もやったことがある定番の練習メニューだとしても、毎回、新鮮味が生まれて刺激もある状態で行うことができる。
だから選手たちの顔つき、走り続ける姿、そしてクリエイティビティが毎回アップデートされてくのが、本当によくわかります。

同じ練習で、一人一人の違う姿が毎回見られる。一人一人の情熱を、強く掻き立てることができる。

これ、一番おすすめかもしれないです。

以上です。いかがでしょうか。これを読んでくださった方々が、それぞれ、いろんな伝え方を独自に考えてくれれば嬉しいです。

練習メニューを考える前に。

・選手たちの情熱を引き出す
・選手のハートに火をつける
・その火を絶やさず、さらに燃えさせる

そんな視点で選手たちへの伝え方、振る舞い方を考えてみるのは、メニューを考えることよりも絶対に必要なことと思います。精神論にはならないように。

これは、サッカー指導の教科書には載っていない。
SNSにも、作戦ボードの上にも、分析屋さんの言葉にも答えは見つかりません。

目の前の選手たちのことを一番知っているコーチ自身だけが、考えられることなんですよね。

最後に

そして僕は、選手たちと一緒に走り、戦うコーチでありたい。
偉そうにマイチェアーにどっしり座ってふんぞり返って試合を見るような、指導者ヅラしたおじさんにはなりたくない。

選手たちを鼓舞しながら、一緒に一喜一憂しながら、ときには選手以上にレフェリーに文句を言いながら、ときにはピッチに入っちゃいながら(これよくやるw)選手たちと一緒に戦うコーチでありたいと思ってる。
たぶんこれは、コーチを辞めるまで変わらないと思う。

シメオネとかクロップとかモウリーニョとかペップとか、だから好きなんだよなぁ。あの人たち、めっちゃ一緒に戦ってる。その姿を、おそらく選手たちに意図的に見せてる。

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選手たちに情熱を要求するのなら、自分の情熱も見せないといけないんだ。

ハートに火をつける言葉として「仲間のミスに対して◯◯すること」も実は書こうと思っていたのだけれど、これはこれだけで一つのコラムが書けるくらい長いので、また次の機会にでも書きますね。





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