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花を運ぶ人、になったサッカーコーチの話

突然カミングアウトしますが、私、実は花屋さんやってます。
もちろん自分で経営しているわけでもなんでもなく、花屋で働いているだけです。
花に関してはこれまで興味も知識もまるでなかったし、人に花をあげたことは人生でたぶん1回だけ、もらったことはなかった(たぶん)

そんな自分がこの歳になってからまさか花屋さんで働くことになるとは思ってもいなかったけれど、これには理由がありました。

もちろん本業はサッカーコーチで、LINDA SMILES というクラブを運営している身でもあります。

花屋で働き始めたのは、この LINDA SMILES のためだけ。理由はそれしかありません。
今年から始めたこのクラブ。立ち上げ初年度だから最初は実体も何もなかったのにこのクラブをあえて選んでくれた選手たちのためにも、このクラブを絶対に潰すわけにはいかないし、何としてでも軌道に乗せたい。

つまり、資金がもっと欲しい。それだけでした。
実は夜中にもう一つ仕事をしているのだけれど、それももちろん、同じ理由から。でも、まだ足りない。

クラブチームだから夕方までは時間がある。それまではクラブの事務処理仕事、また睡眠時間の補填のためにこの空き時間を使っていたけれど、もうそんな流暢なことは言ってられない。時間を利用してもっと金を稼ぐ。選手のため、クラブのため。もう背に腹は変えられない。そう決めたのが、6月くらいのこと。

そこで
毎回の練習日の前の時間、少しでも練習場所に近い場所で働ける環境を探した結果、ヒットしたのがこの花屋さんでした。
クラブのことも正直に話し、練習があるから練習時間までには絶対に退勤しなければいけないことなども伝え、それも了承していただいた上で、ここで働くことが決まったわけです。

花屋といっても自分はお店で花を売るわけでもなく花束を製作するわけでもなく、注文を受けた花を各地に配達するお仕事。
なのでクラブの練習日、朝の5時に家を出て店に出勤し、その日配達する花を車に積み、神奈川県だけでなく東京都内、遠い時は千葉や埼玉までも行く。圧倒的に一番多いのは都内なんですけどね。

それで夕方にまた店に帰ってきて、片付けや報告などの後処理をした後、店から歩いて3分の練習場所にそのまま向かうという日々を今は繰り返しています。

正直なところ、こんなに恵まれた環境に出会えたのは奇跡だと思ってます。
ちゃんと練習時間に帰ってこられるような配達ルートを毎回組んでくれるし、急に試合が入ったり夏休み中の合宿などで平日に休まなくちゃいけなくなった時も全て許してくれる。

このようにこちらの本業のことを丁寧に配慮してもらえて働かせてもらってるので、本当に本当に、今は感謝しかないのです。

花を運ぶという職業上、よく行くのがライブ会場。
ライブに行くと、関係者やファンから贈られた花のスタンドが入口やロビーなどにたくさん飾られていますよね。アレです。
だから日本武道館や横浜アリーナなどに花を運ぶこともあるし、乃木坂46が真夏に行う恒例の神宮球場でのライブにも、スタッフ総出で花を運びに行ったり。

でもライブ以上に圧倒的に多い配達先は「今日(明日)開店する」というお店。
受け取ってくれる人たちはみんな夢を叶えた人だったり、これから事業を始めるという喜びやエネルギーに満ちている人ばかり。だからみんな本当にいい顔して受け取ってくれるんですよね。それが、なんだかとても嬉しくて。

開店祝いのお花を持って行くときは、必ず「おめでとうございます」って言うようにしてる。朝からみんなハッピー、みんなほっこり。謎の連帯感w

他にも、地方に住んでいるおじいちゃんおばあちゃんが東京に住んでるお孫さんの誕生日に贈る花だったり、地方に嫁いだ娘さんが、東京で一人暮らしをしている高齢のお母さんへ贈るお花だったり。

自分はただ花を運ぶだけの存在だけれど、でもその花は、どこかの誰かが、その人にとって大切な人へ向けて「おめでとう」の想いを込めて注文した花。
それを自分が届ける。だから花と一緒にその人の想いも一緒に届けてるわけで、そう思うとこれはとてもやり甲斐のある仕事だし、幸せな気持ちにさせてくれる仕事でもある。そう思えたときから、朝早くても全然つらくなくなりました。

人の人生におけるほんのワンシーン、人の想いに触れることができる。そしてそれを運んでる。こんなに幸せな仕事はないよね、と思う。

そうして、すっかり【花を運ぶ人】になっていったある日
練習の場所に、選手が花束を持ってきてくれたことがありました。

「学校の授業で花束つくった」
「もういらないからあげる!」

こんな感じでぶっきらぼうにくれたのだけれど、彼女のおかげで人生で初めて「花をもらうのってこんなに嬉しいんだな」って実感したんですよね。年甲斐もなく、心がしみじみほっこりしてしまったあの日。

ただ紙でくるんであっただけだったけど、その日の帰りはその花を大切に抱えて帰った。早く家に着きたい、早く水の入った花瓶に入れなくちゃ、って思いながら。花をもらってけなげに喜ぶ僕を見て不憫に思ったのか、後日、違う子も花を持ってきてくれました(笑)

花瓶がなかったから結局お酒の瓶に入れたけど

花を運ぶ幸せはもう実感していたし、その花には人の想いが乗っかっているということはわかっていたけれど、
その反面「なんで毎日毎日こんなに花の注文が入るんだろう、花ってそんなに需要あるのか」なんていう思いも実はあったのは確かで。

でも僕に花束をくれたあの彼女たちのおかげで、花をもらうことの嬉しさも、身をもって実感することができたんです。
それからはなおさら、花を運ぶ毎日が楽しくなりました。人生は本当に巡り合わせだなぁ、とつくづく思う。

ちなみについ先日は【 祝・天皇杯優勝 】のお花もフロンターレ事務所に届けました。事務所内には、同じJリーグの他クラブからの花がすでにたくさん。こういうときって、他のクラブもみんな優勝チームに花を贈る風習があるんですね。
フロンターレには知り合いのスタッフがいるから「実は副業で花を運んでるのよ」ってびっくりさせてやろうと思っていたのだけれど、残念ながら会えませんでした。

以上、花を運ぶ人になったサッカーコーチ、の話でした。
まぁこれだけ運んでいても、花の名前は一向に覚えられないのだけれど。

クラブの選手たちのために、これからも花粉まみれになりながら頑張ろう。
みなさんも、誰かに花を贈ってみませんか。ご用命は私まで(礼)

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