会社がなくなる?-大企業とタテ型組織の未来-
会社がなくなるという。
堀江貴文さん風に、「会社はいらない」ではなくて
会社自体がなくなってしまうというのだ。
私も会社員なので、会社がなくなっては困る。
しかしこの本のタイトルは何だ??
会社がなくなる!
しかもエクスクラメーションマーク「!」まで付いている
おどしているのか?不安を煽りたいのか?あるいは単なるハッタリか?
これは買って読んでみるしかないと思い、4泊5日の北陸出張に持参し、空いた時間でコツコツ読んでみた。
結論から言うと、世の中の全ての会社がなくなるのではなく、
大企業がなくなると著者は言っているのだ。
つまり「大企業の中小企業化」が進むのだと。
どういうことかというと、大量生産によって作られる同じ仕様の製品を低価格でという需要が減り、これからは多品種少量生産の時代が来るのいうのである。
そうなった時に、大企業はコストパフォーマンスがわるいのだと。
なるほど。言っていることは当たり前といっちゃ当たり前だし、何ら新しいことでもない。
要するに、膨れ上がった大企業は分社化・スリム化していかないと、多様性と多品種が求められる時代では無駄ばかりが増えて、とてもやっていけないよということだ。
しかし何ゆえに、「会社がなくなる!」なんていう過激な(いささか行き過ぎた)タイトルを著者は付けたのか?
出版社(編集者)が本を売りたいという意向で、このタイトルを推奨したことももちろんあるだろうが、著者のキャリアにも関係しているのではないかと私は思う。
というのは、この著者、丹羽宇一郎さんは、天下の伊藤忠商事の元社長・会長であり、社長就任当時、約4000億円あった不良債権を処理し、翌年度の決算で同社史上(当時の)最高益を記録したという、輝かしい経歴の持ち主だからである。
その丹羽さんが、大企業はなくなり、中小企業化するというのだ。
これには大きな説得力がある。
本というものは誰が、何を書くのかが最も重要であると言われるが、この本のマッチングはそういう意味では王道なのである。
この本の中で特に著者が力説しているのは、「タテ型組織を変革して会社を新生せよ」ということだ。
組織にかかわらず、このタテ型社会というのは、いわゆる「依存社会」である。上は下を支配することで所属感を持ち、下は上に守られることで安心感を得る、相互依存の関係なのだ。
丹羽さんは、これではダメだという。
つまり、このタテ型社会にもムダと弊害が多すぎるのだと。
大企業になればなるほど、こういうことがよく起きているであろうことは想像に難くない。つまり大企業にはびこる「タテ型病」をなんとかしなくてはいけないのだ。
しかし著者は、伊藤忠商事という大企業のタテ型組織の改編に、失敗したのである。
実に素直だ。
のである。
そして著者が出した結論はこうだ。
著者が言う「下」とは、いわゆるZ世代(1990年代中盤から2000年代終盤までに生まれた世代)のことである。
Z世代は、少子化や核家族変化の影響で、生まれた時から家父長制や年功序列や年功制、上座・下座と縁が薄かった若い世代であり、いわゆるタテ型の刷り込みがない。それゆえに社会を、組織を変革できるのだと著者は言うのである。
まとめよう。
会社がなくなるとは、これまでのようなタテ型組織と、その構造で作られた大企業がなくなっていくだろうということだ。
インターネット(テクノロジー)によって加速化した現代では、タテ型組織には無駄が多く、そのスピードに対応しきれないからだ。
様々な無駄をなくしていくためにも、大企業の分社化・中小企業化は続き、会社はよりスマートな形になっていくだろう。
そして、Z世代の活躍によってこのタテ型組織(タテ型意識)が変わっていくならば、これまでのような、いわゆる「会社の形」はなくなるのかもしれない。
つまり、会社はなくなるのだ。