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人生に必要なことは全てスマホの中にあるのか?-紙の雑誌という、精選された情報とその専門性-

紙の雑誌というものを、久しぶりに買いました。

ホント何年ぶりだろう。
お金を払って雑誌を買ったのは。もしかしたら10ぶりくらいか、あるいはそれ以上かもしれない。

私も20代の頃は(つまり2000年代前半の頃とかは)、ファッション誌とか男性誌とかカルチャー誌みたいなものをわりあいよく買っていたのだけど、いつの日からかすっかり買わなくなってしまった。

理由はいわずもがな、タブレットやスマホの普及で、ネットで手軽に情報を掘れるようになったからです。

つまりネットが、雑誌の代わりになってしまったんですよね。しかも、それは無料(タダ)なんです。



しかし、これは雑誌を作っている(プロの)編集者なんかにしてみたら、まことに情けないことだと思うんですよ。

お金と時間をかけて、あーでもない、こーでもないと必死こいて、ライターさんとか写真家さんと協力しながら作った誌面が、売れないどころか読者の目にもふれないなんて…


でもね、今回改めて(紙の)雑誌をお金を出して買ってみて、しっかり時間をとって読み込んでみたんですが

やっぱり雑誌ってすごいなあと、改めて思ったんですよ。


私が今回買ったのは、マガジンハウスから出ているBRUTUSという雑誌(2冊)なんですが、まるで一冊の本を読み切ったくらいの充実感がありました。

大好きな作家である村上春樹さんの特集号だったんですが、よくぞここまでまとめてくれたなと。

私がびっくりしたのは、その情報量と整理の仕方、そしてマニアにはたまらない(興味をそそられる)切り口と、その内容の濃さであり深さなんです。


休日の一日を、私はたっぷりその2冊に費やして(ホント、それ以外は何もしなかったな)、読み終わった後の心地いい疲労感と倦怠感を感じながら

(もう一度言いますが)雑誌って本当にすごいなと思ったんです。



例えばですよ。
村上春樹さんは「ノルウェイの森」や「ねじまき鳥クロニクル」、あるいは「1Q84」などの長編小説が有名ですが、実は海外小説の翻訳なども(それもかなりの量を)手がけられていて

村上さんの日本語訳(英語から日本語に訳したもの)がいかに秀逸か、プロの翻訳家の視点からそれを語らせる企画とか

抜粋された英語の原文と、村上さんの翻訳を並べて表示して、「この箇所は、自分だったらこのように訳してしまうが、村上さんはこう訳している。文の切り方がすごい」みたいな。(こういうのって、たぶんネットとかブログのような媒体ではとてもできないと思うんですよね。)



あるいは、村上さんが好んで聴いている音楽を、なぜかクラシックのアルバムだけにしぼって(全部で50枚くらいあるんですが)、それを一枚一枚、村上さんが「これでもか!」というくらいのマニアックな解説を加えていたりとか。



これは言うなれば、系統立てて作られた、村上春樹という人物の専門書なんですよ!

それを雑誌でやってしまうとは…


確かに、今は雑誌のデジタル版もあり、Kindleやその他のアプリなんかでも読めるようになっています。

そう、今や雑誌はスマホで読めてしまう時代なんです。


コロナ禍の影響もあり、休刊・廃刊がとどまることがないファッション誌業界について、こんな記事を見つけました。

この著者はおそらくバブル世代で、雑誌が全盛期の頃に青春を送られたのでしょうね。

人生で大切なことは、全て雑誌から教わったという人たちが、確かにいたという事実。


しかし今は、大事なことは全てスマホの中にあるのでしょうか?


かさばるけど、ネットにはない、紙の雑誌の希少性。

(プロの編集者による)精選された情報と、その専門性を紙という媒体で見せることの価値を、もう一度見直したいと思う今日この頃なのです。


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