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甲府での、あの夜のこと

「宮澤!!宮澤!!!」

ゴール裏自由席の最上段に陣取っていたコールリーダーは、挨拶を終えてロッカールームへ引き上げる10番の背中に大きな声で呼びかけながら、小走りで階段を駆け下りる。

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*このnoteは、2022年6月22日(水) 天皇杯3回戦 甲府対札幌に現地参戦していた一人のサポーターの日記です。完全なる個人の感想であり、ご意見等には一切お答えしませんので、ご了承の上お読みください。

また、本件について概要的に記されている以下の北海道新聞の記事に客観性を担保してもらった上で……というスタンスで書きますので、事前にお目通しいただくことをおすすめします(無料会員登録で全文読めます)

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声を出しての応援が禁じられている今、このような形で選手に近づこうとする行為はご法度だろう。ただ、その様子に違和感を覚えた者は、あの場には誰一人としていなかったはずだ。

90分間応援し続けた100名ほどのサポーターはもちろん、宮澤もチームのキャプテンとしてその必然性、そしてリーダーの熱を感じたからこそゴール裏まで戻ってきたのだと思う。伝えるべきことを、伝えるべき人が伝えに行った。そんな"当然"の光景にしか見えなかった。

そこから始まった二人の話し合いを、僕らは静かに見守った。何について議論されたのか、その内容はわからない。しかし、「未来に向けて建設的な話し合いが持たれた」ということだけは、時間にして2~3分ほど言葉を交わし続けた後、両者が肘を突き合わせる様子が語らずとも教えてくれた。

「戦う姿勢」

あの夜、キャプテンを呼び止めてまでコールリーダーが伝えたかったこと。そして、禁じられている声を上げてまでゴール裏のサポーターたちが選手たちに対して伝えたかったこと(声を出していたのは一部だけど、気持ちは全員同じだったはず)は、この一言に集約される。

ここ数試合の大量失点について、ペトロビッチ監督も「戦術とは関係のない部分」と困惑の声明を出していたが、天皇杯3回戦の甲府戦はその象徴のようなシーンが散見されたように思う(犯人探しのようになるのは好ましくないので具体的には書かない)

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「気持ちの問題」というのは、ときにテクニカルな問題よりも修正が難しいものだ。頭で思っていることと心の中の潜在的な感情が乖離することもよくあるし、自分の力だけではどうにも出来ないことも多々ある。サッカーというチームスポーツでは、特にそうだろう。

逆に言えば、「気持ちの問題」はきっかけ一つで好転することもある。10年間サポーターをやってきて、そんな瞬間を何度も見てきた。一つの試合が、一つの勝利が、一つのプレーが、後から振り返ったときに「あれがあったからこそ今がある」というターニングポイントになる。

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「甲府でのあの夜があったから、今がある」

シーズンが終わったときに振り返り、そう言えるようにするために。今日の試合はとても重要だ。

勝ちという結果を、何が何でも掴み取りたい。でもその前には、一つひとつのプレーが必要で、その根底には選手一人ひとり、そしてサポーターの「戦う姿勢」が不可欠だと思う。

僕は、今日も札幌ドームのゴール裏に行きます。

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