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【危険な遊び1】子どもの健全な成長に必要な理由

私たち大人は、子供を危険から守ろうとします。それは当然のことですが、これを読んでいるあなたは、子供の頃どんな遊びをしていましたか?どんな危ない遊びが好きでしたか?

子供は本来危険な遊びが大好きです。自由の喜びと適度な恐怖が組み合わさることで、スリルと爽快感が生まれるからです。

私も「危険な遊び」が大好きでした!
通学路途中で、フェンスや壁をよじ登っては「抜け道」を探したり、工事現場に忍び込んで、重機やベルトコンベアで遊んだり…。そんな遊びばかりしていて、危うく命を落としそうになったり、近所の大人に叱られることもありましたが、当時はそれが日常だったので、危険なことをしているという意識さえありませんでした。

今思えば、当時の子供たちは、想像力や創造力を存分に発揮し、自分たちで作り上げた遊びの世界で遊んでいましたので、大人の介入は一切許しませんでした。五感や感情を解放して、全身全霊で遊んでいたように記憶しています。

さすがに今の子どもたちにも私と同じことをしてほしいとは思いませんが、大人の目が届かないところで、友達とちょっと危険でちょっと悪いことをするスリルや達成感、楽しさやワクワク感を、体験する機会はあるだろうか、子供だけの世界で全身全霊で遊ぶ機会はあるだろうかと考えることはあります。
私個人的には、これは子供時代だけの特権だと思っています。大人になってしまうと、あんなに純粋にバカバカしい遊びをして、お腹を抱えて大笑いするような遊びはもうできないだろうと思うからです。

【科学的根拠】自由な遊びこそ、最良の早期教育

私は「子供にとって自由な遊びこそ、最良の早期教育だ」と信じ、我が子にも実践してきました。
実際、研究でもその影響は裏付けられています。

危険な遊びは子供にとって楽しいだけでなく、成長と発達に欠かせないものであることが示されています。なぜ危険な遊びが重要なのか、なぜ子供からそのような経験を奪うと思わぬ結果を招くのか、その理由を探っていきましょう。

子供が好きな危険な遊び6種類

ノルウェーのクイーンモード大学のエレン・サンセター教授は、世界中の子供たちを魅了する危険な遊びを6つに分類しています。

1. 高いところに登る

子供は、木やその他の構造物に登って、恐ろしい高さに達し、そこから世界を見下ろし、スリリングな感覚と「やった!」という達成感を得ます。
恐怖を乗り越え、自由を満喫することで、自信とたくましさが育まれます。

2. 速いスピードで走る

ブランコ、滑り台、自転車やローラースケート等の猛スピードは、子供にとってコントロール不能になるほどのスリルを味わうことができます。このような状況を乗り切ることで、子供は危険性を判断し、自分の限界に挑戦し、重要な協調性やバランス感覚を身につけることができます。

3. 危険な道具を使う

子供はナイフや包丁、ノコギリなどの危険な道具に触れることがあります。使用できることに大きな喜びを感じる一方で、失敗すると痛い目に遭うことを知りながら、それらをコントロールするスリルを味わいます!

4. 危険なものに触れる

火遊びや水遊びは、危険な要素を含んでる、子供にとっては魅力的な遊びです。

5. 乱暴な遊びをする

追いかけっこ、ケンカ、レスリングなど、子供は身体的な危険にさらされます。このような遊びを通して、子供は自分の体の限界を知り、自制心、共感力、協調性を身につけます。恐怖を克服し、体の限界を理解することは、人間の感情や社会性の発達に不可欠な要素です。

6. いなくなる・迷子になる

幼い子供はかくれんぼをして、仲間から一時的に離れるスリルを楽しみます。年長の子供は大人と離れて、1人で迷子になる危険性のある、新しい危険や想像に満ちた場所を探検すします。このような経験は、一人でいることの恐怖に直面し、新しい環境に適応し、問題解決能力を伸ばすのに役立ちます。子供に自律的に探索できる空間を与えることは、子供の自立心を育みます。

危険な遊びの進化的意義1:人間の成長と発達

進化の観点から見ると、危険な遊びや冒険を好む傾向は、私たちの祖先にまでさかのぼることができます。
人類の歴史の中で、好奇心旺盛で冒険心が強く、危険を顧みない子供は、生き残るための重要なスキルや知識を身につける確率が高かったのです。木に登ったり、新しいテリトリーを探検したり、道具を使って実験したりすることで、子供は貴重な経験を積み、環境を効果的にナビゲートすることを学びました。

さらに、こうした活動は子供の認知的、情緒的、身体的発達にも貢献します。危険な遊びは、問題解決型学習、レジリエンス、リスクを査定し管理する自信を子供に与えます。自分の能力を試し、因果関係を学び、自分の限界や能力を認識する機会にもなります。

危険な遊びの進化的意義2:動物の成長過程

危険な遊びは人間だけのものではありません。サルやヤギなどの動物の子供たちも同様の行動をとるようです。このことは、危険な遊びには進化上重要な意味があることが研究で示唆されています。

研究者は、哺乳類の子供たちは、危険な遊びを通して、幼い哺乳類は、生存に不可欠な恐怖や怒りの感情を調節することを学んでいると言います。自分で対処できるレベルの恐怖にさらされ、感情をコントロールする練習をすることで、子供は困難に直面しても、自分の感情を効果的にコントロールできる力を身につけることができるようになります。

成長過程で「遊び」を奪うと?

子供にとって遊びの大きな影響は、動物実験でも裏付けられています。

ねずみの赤ちゃんから他の社会的経験を奪うことなく、遊びだけを奪って育てると、感情障害のあるねずみに育つことがわかっています。新しい環境に馴染めず、恐怖で過剰反応し、通常のねずみのように適応したり探索したりすることができませんでした。慣れない仲間に囲まれた時、恐怖で固まったり、不適切で効果のない攻撃行動をとったりします。

幼いサルが遊びを奪われた実験でも、同様の結果が得られています。この結果は、遊びの主要な機能の1つが、幼い哺乳類に恐怖と怒りを制御する方法を教えることであるとする、遊びの感情制御理論に合致します。

遊びを奪われた今の子供たち

年齢に応じた危険な遊びの欠如は、社会における神経症や精神疾患の原因となる可能性があります

研究によると、子供が危険な遊びをする自由が減るにつれて、小児精神障害が急激に増えているそうです(Sunseter, 2011)。

米国の臨床評価質問票のスコアの分析によると、1950年代に比べ、5~8倍の若者が臨床的に大きな影響を与えるレベルの不安やうつに悩まされていることが明らかになりました。

つい先日発表された、CDC(米国疾病管理予防センター)の2021年の青少年リスク行動調査によると、米国の10代の女子のうち約 5人に3人(57%)が「持続的に悲しいまたは絶望的」と感じていると回答しました。この割合は過去10年間で最も高い水準であり、自殺を真剣に考えたことがあると回答した女子の割合も30%となり、これは過去10年間で約60%上昇しています。

こうした精神的な問題は複雑で、いくつもの要因に限定することはできません。しかし、多くの要因のひとつは、幼少期の遊びの喪失かもしれません。

実際、アメリカでは、どの州でも「子供の放置防止法」という法律があり、13歳までは子供を親の目がない場所に1人で置いてはいけないことになっています。これは大人たちが子供を危険から守るために作られた法律です。

しかしこれは諸刃の剣だったのかもしれません。子供たちから自由で危険な遊びを奪ってしまった結果、子どもたちを精神的な危険にさらしているのかもしれません。

遊びは自由であるべきで、大人によって強制されたりコントロールされたりするものではありません。子供は大人よりもはるかによく、自分の能力や限界を知っているので、自分に合った危険な遊びを自分で見つけることができます。大人がお膳立てした遊びは、その子の能力やニーズに合わないかもしれません。

おわりに

大人が子供を危険から守ることは大切なことですが、遊びの自由を奪われることで子供たちの精神的な健康にも影響を与える可能性があります。遊びこそが子供たちにとって最良の早期教育であり、成長と発達に重要な役割を果たしています。危険な遊びは子供たちの創造力や想像力を刺激し、自信や自律心を育みます。進化的に見ても、人間や動物の成長過程で遊びが重要な役割を果たしてきたことが示されています。

遊びの自由が減る中で、子供たちの精神的な問題が増加していることが研究で示唆されています。精神障害や不安、うつに苦しむ若者が増えており、これには遊びの喪失が一因として考えられます。大人が子供の遊びをコントロールし、危険な遊びを制限することは、子供たちの自主性や成長を妨げる可能性があります。

子供たちは自分自身の能力や限界を理解し、自分に合った遊びを見つけることができるので、大人が遊びを規制することは慎重に考える必要があります。子供時代だけの特権として、純粋に自由で危険な遊びを楽しむ経験を持つことは、子供たちの成長にとって非常に意義深いものです。

最終的には、子供たちが成長する過程で、遊びを通して学ぶ貴重な経験やスキルを大切にし、彼らが安全かつ適切な方法で自由に遊べる環境を提供することが重要です。子供たちの自主性を尊重し、自由な遊びを支援することで、彼らの心身の発達と幸福を促進することができるでしょう。


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