ADHD児を持つご家族へ:ペアレントトレーニングのメリットと私の体験
ADHD児の育児は超むずかしい
子育てって大変ですよね。
そんな中でも、ADHDのお子さんを育てる場合は、さらに身体的・精神的負担がかかります。
研究によると、ADHDの子どもを育てることは、定型発達の子どもを育てることに比べて、ストレス、不安、うつ、子育てへの不満、身体的・精神的苦痛が高いレベルにあることが分かっています。これらの悪影響は、子どもの行動問題や家族の葛藤と関連しており、父親よりも母親でより顕著であることがわかっています。
しかし、あなたは一人ではありません。
もしあなたが同じような苦痛を感じている場合は、専門家による行動的ペアレントトレーニングがお勧めです。ペアレントトレーニングを受けることで、適切な関わり方を学び、悪循環を断ち切り、良好な親子関係を築くことができます。
ADHD育児に推奨される行動的ペアレントトレーニング
このようにペアレントトレーニングの介入は、親子関係の改善や親のストレスの軽減に効果的であることが分かっています。
ADHDは何もしないで放置していれば、そのうち治るものではありません。ある程度、理論的に対応していく必要があります。感情のまま対応してしまうと、悪化してしまう恐れがあります。まだ問題が小さいうちに、適切な関わり方を学んだご家族たちは、専門家と協力して、子どもが症状や行動をうまく管理できるよう手助けすることができます。
【親が対応を間違うとどうなる?】私の残念なADHD半生
前半は、いつものように科学的根拠に基づいた信頼できる情報から、ペアレントトレーニングの必要性をご紹介しました。
今回は個人的な経験からも、少しお話したいと思います。
私は大人になってからADHDと診断されたADHD当事者です。結婚するまでの家族、特に母親との関係がうまくいっていませんでした。
私が小学生だった約40年前は、ADHDという言葉も概念も知られていませんでした。そのため、私は「おしゃべり」「悪い子」というレッテルを貼られ、母や先生から常に叱られ続ける幼少期を過ごしていました。当時は虐待や体罰という意識も薄かったので、かなりの体罰を受けてきましたが、今でも覚えているのは、叩かれた痛みよりも、言われた言葉の方です。
それでも小学生だった頃は
「お母さんは怖くて嫌だな」
「先生はなぜ私ばかり叱るんだろう」
と思っているくらいでした。
【思春期】抑えられない怒り
中学に入った頃から、私はものすごく反抗的になりました。とりわけ母に対してものすごく反抗的になって、毎日のように、泣きわめき、手足も出し、ケンカしていましたね。
自分が壊れてしまうほどの強い怒りで
「怒りすぎて死んじゃうかも」
と思ったくらいでした。
なぜ、こんなに怒っていたのか?
それは、わかって欲しかったからです。母に自分の気持ちや考えを理解して欲しかった。愛情が欲しかったんでしょうね、きっと。
でもどんなにわめいても、欲しいものは全く手に入りませんでした。
父と姉とは特に悪い関係ではありませんでしたが、良好でもありませんでした。それは、私を助けてくれなかったし、味方になってくれることもなかったからです。そしていつも
「私のせい」
という結末で、問題を収めようとしていたからです。
父も姉も、母を怒らせない方法や、うまくおだてることができる人たちでした。
そして、いつも
「ともこが悪い!」
「お前が悪い!」
と私のせいにしていました。
「お母さんが悪いのに、どうしてわかってくれないんだろう」
と悔しくて、怒っていました。
父と姉の「私が悪い」説は、
お母さんはあーゆー人なんだから、もう変わらない。
だからお前が変わるしかない。
単純な人だから、ちょっとおだてればうまくいく。
だからお前もうまくやれ。
それができないお前が悪い。
という説でした。
今思えば、よく私も意地を張り続け
「自分は悪くない!」
と言い張ったもんだなと思います。
でもどうしても自分の気持ちや考えを曲げてまで、母に譲歩することができませんでした。
「自分の気持ちに正直であること」
は今も昔も変わりませんが、やっぱり物心ついた時から叱られ続け、「私が悪い」と言われ続けていたので、自己肯定感は非常に低く、やっとなんとなく自分の生き方やキャリアに自信がついたのは、つい最近のことです。
「母親になればわかる」
とよく言われましたが、母親になってわかったのは、
「あー、私の母親は本当に未熟な人だったんだな」
ということです。
「よく子供に、あんなことを言ったりやったりしたもんだな」
全く理解も共感もできませんでした。
全く分かり合えない親子
ですからその後も分かり合えず、かなり最近まで、会えばいつもケンカになっていました。だから会わないようにしていました。
今ではすっかり歳をとり、私に文句も言わなくなりました。私も、別にもうどうでもいいので何も言いません。
年老いた親を見ても、当時のことを許すとか、親孝行をしたいとか、心配したりする気持ちはあまりないですね。
臨床心理士の友達から
「親が死んでから後悔する人が多いから、今のうちに関係修復した方がいいよ」
なんて言われたことがあります。
まぁ統計的にはそうなのかもしれませんが、私は別にこのままでいいです。後悔するなら、それでいいです。
結局、結婚する前の家族には、全く理解されることがなかったな、という気持ちですし、それで一生を終えるんだろうけど、後悔もないな、と思っています。
分かり合える幸せ
多分ここまで割り切れているのは、私は自分の子供たちとはかなり良好な関係を築けているからだと思います。別に息子たちはマザコンでもないし、私も子離れできていないということはなく、お互いに好きなことに没頭している毎日を過ごしています。
私は彼らと話すのが楽しいし、彼らの思考回路や意見も手に取るように共感でき、息子たちも私の意見にかなり共感している様子です。
自分の子供たちとの関係を考えると
とポジティブな気持ちを、彼らのおかげでたくさん体験できています。
私の母はそんな気持ちになったこともないでしょうし、そんな気持ちが人間の中に存在することすら知らないでしょう。まぁ彼女は彼女なりの幸せを感じているのだと思いますが。
母に感謝できることといえば
「あのつらい幼少期があったから、今の自分があるんだろうな」
ということです。
母が反面教師になったので、
「自分がされて嫌だったこと」はせず
「自分がして欲しかったこと」を、子供にはしてきました。
そして母に譲歩して考えれば、
私のような子供を育てるのは大変だったんだろうと思います。
当時ADHDという概念もなく、ただの「悪ガキ」としてみなされるわけですから。力尽くで私を「良い子」にしたかったのだろうと思います。
ペアレントトレーニングを受けていたら、人生は変わったのか?
母と私がもし今の時代に生きていて、ADHDに関する知識があり、行動分析という考え方を学び、ペアレントトレーニングでも受けていたら、多少は違っていたのかな?
母も私ももう少し分かり合えて、もう少し幸せに過ごせたかもしれませんね。
より幸せに、後悔のないように
ですから、これを読んでいる保護者の方にお伝えしたいのは、子育てで悩んだ時は、専門家に相談して、正しい接し方を教わって欲しいなと思うんです。私のように、一生
「親子で分かり合えることがなかったな」
と思って過ごしませんように。
行動療法は、とりあえず、心や気持ち、感情はちょっと横に置いといて、行動を学ぶ療法です。ですから、あなたの基本的な考え方や感じ方まで「変えよう」と思うわなくていいんです。そのままで。
気持ちはどうであれ、ペアレントコーチに具体的に教えてもらった通りの行動をするだけでいいんです。行動科学で証明されている正しい「子供との接し方」「声の掛け方」のコツを習得し、ペアレントコーチからの具体的な指示通りに関われば、子供の反応が変わるんです。
今まであなたが何か言えば必ず否定したり文句を言ったり、睨みつけてきていたあなたのお子さんが、あなたにキラキラの笑顔を見せながら、とっても可愛いことを言うようになるかもしれません。
あなたの働きかけによって、子どもが可愛く反応するようになれば、あなたは自然と子供をもっと笑顔にしたくなってきます。正の強化が起こっています。
あなたはそんな良好な関係を今後もキープしたいので、今までのように感情のまま説教するのは止め、行動理論的に考えて接するようになるかもしれません。
もしそれでうまくいったら、正の強化が起こり続けていますから、また同じように適切な対応が取れるようになっていきます。
これを繰り返していくことによって、あなたはもう頭で行動分析をしなくても良くなります。
心から子供を思いやれるポジティブな人に変化しているはずです。
応用分析専門家によるペアレントトレーニングを始める予定です
References
Centers for Disease Control and Prevention. (2022, August 9). ADHD awareness. Centers for Disease Control and Prevention. Retrieved May 1, 2023, from https://www.cdc.gov/ncbddd/adhd/features/adhd-awareness.html#:~:text=Behavior%20therapy%20is%20the%20recommended,child%20better%20manage%20their%2n.d.HD.
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