見出し画像

東京最後の夜

3日間に及んだ引越し作業最終日。
無事に全ての家財が、航空便、船便へと搬出されていった。
伽藍堂の家の迫力、すごい。

この家を初めて見に来たとき、一目惚れしたのは私だった。
完全なる、びびる程のボロ家だったけど、その時も今日と同じように伽藍堂だったこの家をよく覚えている。

何もない、あちこち壁紙の剥がれた部屋に風が、ぶわっと吹き流れていく真ん中に私は立っていて、窓から光が差していて、その感覚だけでここで暮らしたいと強烈に思った。その時の光景を言葉にするのは難しいのだが、この先もずっと忘れることはないと思う。
ここで楽しく暮らせるという確信のようなものが生まれて、始まっていた。そして沢山の人に支えられて、手を貸してもらい、この家で今日まで過ごせたことに感謝しかない。ご近所さんもいい人ばかりだった。

この家に来た当初は、まだ2歳前の長男しかいなくて。ぐずる長男を抱いて壁をぬったりしていた。
冷蔵庫をどかしたら、記念の落書き出てきた。2007年7月のものだから13年、この家で過ごしたことになる。

そして今日再び家は空っぽになって、まるで大きな舞台が終わったような、お化粧を落としたような表情。
そうだったね、私はこの家に一目惚れしたんだったねと、音が良く響く部屋で思い返している。
日本最後の夜。

今日も沢山の友が!
来てくださって。
後ろ髪ひかれすぎて、後ろ向いたままおいおいメソメソと進みそうになるけど、そんな私の姿を見たら優しい友達が悲しんで泣くからわたしは前を向く。

…笑われるだけかも知れんけど。

友達っていいよな。

2020/0805
最良の日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?