小遣い制が敵対型家族になる理由。家庭内で奪い合っても何も良くならない話。

1.夫婦が敵になるか、チームになるか

(1)利益を奪い合う+負担を押し付け合う夫婦(以後、敵対型とする)
(2)家族全体の利益増+負担減を目指す夫婦(以後、チーム型とする)
 どちらになるかは夫婦仲の良し悪しだけではなく、家計のルールでも変わってくると考えている。
 過去の記事では、「家事の押し付けあいは、家庭内のキャパオーバーという根本的な問題を夫婦間の不毛な争いに変換している」と説明したが、これと同じ不毛な押し付け合いを生み出すのが小遣い制だと思う。

2.小遣い制が敵対型になりやすい構造的理由

 小遣い制が良くない理由は「自由にお金を使いたい」とか「搾取されたくない」とかそういった短絡的な話ではなく、あくまでも構造の話である。
 例えば、小遣い額up/down交渉は家事育児の不毛な押し付け合いと同様、「家庭全体の収支が釣り合っていない」という根本的な問題から目をそらし、キャパオーバーを押し付けあってる状況だと言えるのではなかろうか。

小遣い交渉は負担の押し付け合いではなく、全体が不足している構図

(1)非小遣い制家計における利害関係

 家計の構造は利害関係の構造を作る。例えば、通常の家計では
 ①労働力を提供し、その結果に対して会社は②対価を支払う。
 という対等な構造であり、昇進・副業・投資といった手段により解決を目指すことになる。解決に向けた努力が直接自分に返ってくる自然な構造である。また、不満がある場合は転職することで利害関係の構造から抜け出すことも可能である。
 共働きの場合、それぞれ2箇所で独立してこの構造がある状態となる。

(2)小遣い制で発生する利害関係の歪みについて

 夫がメインで家計負担をしていて、妻が家計を握る(=夫が小遣い制)家庭の利害関係を図に表す。

小遣い制の構造的欠陥

 この状況では、①労働と報酬が交換されず、労働対価が②家計に支払われている。その後、家計管理する妻が決定した金額で④小遣いとして受け取ることになる。基本的に小遣いをもらっている側に決定権はない状況だ。

 お金が不足したとき、夫婦が取れる対応はそれぞれ
<夫側>
 ③小遣いを増やすため、妻に対して努力・交渉して対価を得ようとする。(※会社に対して努力しても小遣いは増えないor 増えてもわずかのため、自分の行動により大幅に待遇改善をする手段がない)
 よって、努力の方向が家計全体を改善する方向に行かず、「小遣い3万円をどう増やすか (orごまかすか)」という狭い思考回路で毎日を過ごすことになるのである。

<妻側>
 ④夫の会社に対して直接働きかけることができないので、夫の小遣いを減らすことで家計を確保しようとする。これは共働きだろうが、家庭全体のお金を増やそうしない構造になっていれば本質的には同じである。

 つまり、結局は小遣い制は家庭内でお金を奪い合う構造を生み出し、家計全体を改善できない状態に陥っているといえる。
 とくに、昨今のインフレにより食費が高騰しているが、たとえ必要なお金が増えても家庭への収入を増やす方向にはいかないので、家計は苦しくなる一方という状況に陥りやすい。

3.家計へ無頓着、マネーリテラシーの低下

 管理する側にとってもデメリットがある。夫と家計の苦労を共有できず、1人で抱え込むことになる点だ。昨今の値上げラッシュや電気代高騰で、家計管理は本当に大変だと思う。同僚達と話していると、小遣い制の人とは明確に悩みや危機感意識に差があることが見えてくる。
 共同管理している人からは
  ・節電や買い物の工夫
  ・還元率の良いクレカ、ポイ活
  ・車の燃費
  ・保険見直し
  ・資産運用(NISA)
といった家計改善の話が出るのだが、小遣い制の人から出る言葉は常に
  「小遣いが減らされた」 だけである。

 値上げ(インフレ)に立ち向かおうというなるのではなく、「小遣いを減らした妻」に怒りの矛先が向かうのである。
 仮に家計簿を共有して値上げの事実を伝えたとしても、心の底では
「管理して値上げ含めても工夫して家計管理したらどうだ。こちらは自由を制限されているのだから」という、被害者意識が少なからず沸いてきても不思議ではない。

4.お金で敵対すると家事育児も敵対型へ

 家計管理で敵対型家族に陥ってしまうと、家事分担でも敵対型の思考に陥り、利益を奪い合い・負担を押し付け合う夫婦になってしまうのだと思う。
 外部環境の変化が激しいこのご時世こそ、夫婦はチームとして協力関係を築くことが何より重要なのだと改めて思った。

 
 
 

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