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スタートアップのファイナンスや資本政策を考える際に読んだ方がよい記事や本10選(前編)

「ファイナンスの知識がないのですが、スタートアップの資金調達を考える際には、まず何から学べば良いですか。」

私はスタートアップ関連の資金調達や事業計画作成の支援等を行なっていますが、こういった質問をよく受けます。これまでファイナンス関連業務に携わってこなかった多くの人は、スタートアップ企業のファイナンスや資本政策について何から手をつけて良いのかわからない傾向にあります。

そこで、本記事では資本政策を考えるにあたって基礎知識を身につけるために読んでおいていた方がよい記事や本をご紹介します。以下で紹介する記事や本は、私が資本政策を相談された時に最初にご紹介するものです。

まずは以下で紹介する文章に書かれていることをしっかりと身につけた上で、資本政策を考えることで、自社にとって望ましい資金調達のあり方を模索できるようになります。また、投資家と話す際に、専門用語を言われて「何それ?」みたいな状況になることを避け、投資家と対等に話ができるようにもなります。

文章が長くなったので2回に分けて投稿をします。後編はこちらとなります。では、早速見ていきましょう。

※タイトルの箇所がリンク先になってますので、引用元のサイトに飛びたい時にはタイトルを押下いただければと思います。

1.スタートアップ資本政策の6箇条

まず必読となるのは五常・アンド・カンパニーの創業者である慎 泰俊さんが書かれたnoteの記事です。後半でもご紹介しますが、資本政策といった場合、まず紹介されるのが磯崎さんが書かれた「起業のファイナンス」と「起業のエクイティファイナンス」です。慎さんのnoteでもこれら2冊を読むことが推奨されています。

ただ、この2冊をいきなり読むには時間がかかりますし、わかりやすい文体で書かれているとはいえ、この分野に慣れていない人にとって読むには多少なりともハードルは高いです。

そのため、まずは資本政策はどういったものか、何に気をつけるべきかを把握するにはこちらのnoteをお勧めします。こちらのnoteでは以下の6つについて書かれています。

1.創業者たちの持分は投資家目線で決めること
2.共同創業者が仲違いしたときのために必ず株主間契約を結ぶこと
3.外部から資金調達を始める前に、自分の事業にいくら必要なのかを計算すること
4.必要なお金を集めた時点で「創業者持分3分の1以上」を目指すこと
5.エンジェルの顔をしたデビルに気をつけること
6.調達時の株価は自分たちが適正と信じる水準にすること

その中でも2の株主間契約と4でリンクが記載されているcap table(資本政策表)は確実に押さえておく必要があります。

とくに2の株主間契約について、私に資本政策の相談がある時点で締結をしているケースは極めて稀です。 創業者のメンバーは、バンドのメンバーのようなものです。バンドが音楽の方向性の違いで解散をしたり、メンバーが変わったりするように、創業者のメンバーの意見も時間の経過により変わってくることが多いです。そのような場合のためにも、株主間契約を手当てしておくことは肝要です。

さらにエンジェル投資家からの資金調達を考えている方は、5のエンジェルの顔をしたデビルに気をつけるという箇所も必読です。

2.調査レポート: 資金調達のタイミングと調達額を事例と相場を元に徹底解説!

資本政策の相談に来る方で一番多い質問は「どれぐらいのValuationでどれぐらいの資金調達をすればよいのか」というものです。

もちろん、事業内容やターゲットとしているマーケットによって調達する金額は変わってくるので、一概には何ともいえません。また、上述した慎さんのnoteにも次のように書かれているように、調達すべき金額は自分で考えることが必要です。

「この会社がやりたいことを達成するためにはいくらお金が必要なのか」をちゃんと計算することだ。最初の時期にそれを見込むのは簡単ではないかもしれないけど、でも、この思考実験は絶対にやっておいたほうがいい。

とはいえ、どういったラウンドでどれぐらいの資金調達が行われているかを把握しておくことは、ベンチマークとしては参考になります。

プロトスターの栗島さんが起業ログで書かれた記事では、どういったフェーズでどういった仮説検証を行い、そしてそれぞれのフェーズでどういった調達をすることが望ましいかを丁寧にまとめられています。例えば、チーム有り・プロトタイプ有り・トラクション無し(Angel Roundレベル)では、Post Value1億円で、調達額は1,000万円というようにです。

こちらの記事では、資金調達のタイミングと調達金額について解説がされていますが、そもそもで調達を株式で行うのか、融資を使うのかといった論点については、同じく栗島さんが書かれたベンチャー企業が活用すべき資金調達方法ごとの利点とリスクもおすすめです。

3.23社に投資したエンジェル自らが語る、エンジェル投資家の活用法 2020年版

エンジェル投資家の小原さんが起業ログにて書かれた記事です。私が主催をしているFED(Financial Education & Design)でも、小原さんが書かれた「凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法。」を課題図書として、小原さんをゲストとして読書会を開催しましたが、アンケートでは5段階評価でアンケート回答者が全員が5という大好評の読書会となりました。

こちらの記事では「初めての起業にあたりエンジェルにどうアプローチし、どう活用するのが良いか」について実際ご自身の経験を踏まえて書かれています。起業をする際に、投資家と上手にコミュニケーションをすることは非常に重要ですが、ひとえに投資家といっても「エンジェル投資家」「ベンチャーキャピタル」そして、「Corporate Venture Capital/事業会社」では、投資金額や投資スタンスはまったく異なります。

本記事では、自ら起業されVCから調達をして、事業会社に事業を売却してExitを経験した後、エンジェル投資家をされている小原さんだからこそ書くことができる各投資家の投資スタンスやエンジェル投資家との付き合い方の内容が解像度高く解説されています。

エンジェル投資家からの出資を検討している場合やエンジェル投資家との付き合い方に迷っている場合は、こちらの記事を熟読することをお勧めします。

関連で、上述した小原さん著の「凡人起業 35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法。」にはベンチャーキャピタルから投資を得る時に注意することとして、優先株やドラッグ・アロングライトの仕組みについてわかりやすい事例で書かれています。エンジェルから投資を受けた後、VCからの調達を検討する際にはこちらも是非ご参考にしてもらえればと思います。

4.調査レポート: 186社の登記簿から分かったスタートアップの資金調達の「相場」

2の「調査レポート: 資金調達のタイミングと調達額を事例と相場を元に徹底解説!」にも引用されているCoral Capitalの澤山さんがかかれた記事では、2016年1月〜2017年3月に1億円以上の資金調達を行ったスタートアップ起業186社について登記簿を取得し、調達額、Valuation、ストックオプションの比率などを調査しています。少し古い情報なので、直近のマーケットでは多少変わっている可能性がありますが、目安としては参考になります。以下、エッセンスのご紹介です。

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出所:「調査レポート: 186社の登記簿から分かったスタートアップの資金調達の「相場」」から作成

なお、上記の記事では、A種優先株、ポストバリュエーション等、多少専門的な用語が出てきます。これらの用語については後半で紹介する「起業のファイナンス」や「起業のエクイティファイナンス」を通じて理解を深めてもらえればと思います。

また、上記の記事の最新版は国内スタートアップの資金調達相場レポート「Japan Startup Deal Terms」最新版に書かれています(ダウンロードが必要です)。

5.Visionary  Base

上記1-4の記事よりも各個別のスタートアップ企業の資本政策まで落とし込んで解説している記事としては、会計士のヤマオカタスクさんが書かれたnote 「VisionaryBase」がおすすめです。

こちらのnoteでは、実際のスタートアップ企業の資本政策を各調達ラウンド毎に解説をしたものや、上場した企業につき、第三者の視点から創業から資本取引を将棋の棋士が行う感想戦のように1手1手振り返り、その背景で動いていた資本政策の意図を考察している「資本政策の感想戦」といった記事等、スタートアップ企業の資本政策に関するものが多数掲載されています。

具体的に掲載されている企業としては、メルカリ、FiNC、識学、Gunosy、SanSan、スペースマーケット等があげられます。これら記事の分析では、資本政策だけではなく、調達時に、例えば以下FiNCの記事のように、人事や事業はどのような施策をうっているのかも分析をしていて、企業の戦略をより立体的に把握することができます。

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出所:調達15回、積み上げた資金の累計68億円。FiNCの攻める資本政策【全体像編】

ヤマオカタスクさんが書かれた数ある記事の中でも特におすすめなのが、資本政策の感想戦「株式会社Gunosy」です。

こちらの記事では、(1)会社設立から早期に上場を果たしたこと、(2)共同創業者の持株比率が極端に少なかったことという特徴があるGunosyの資本政策をレビューしています。有料noteとなっていますが、1万字以上文字数があり、十分な読み応えがあるとともに、公開情報だけでここまで分析できるのかという内容に感動さえ覚えました。具体的な資本政策の事例を知りたい方は是非こちらのnoteを読むことをお勧めします。

前半は以上となります。後半はこちらをご確認願います

GOB Incubation Partners株式会社 CFO
村上


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