鬱になっていて辛い…。創作続き

 結局哲学は自然言語でしか表現できないうえ、不確定性という現実を無視していると思います…だから、何だろ、とりあえず本を読んでも真実自体は絶対につかめませんという話です。ところで創作続きを書きました。内容はぶっ飛んでいるのですが、色々コメントで講評してくださるとありがたいです。

神ー第二部ー

 振り返れば、かつて私の周りには神が散らばっていた。母体と組織を分かち合っていた私は、血を入れることに何ら抵抗が無かった。しかし私は子宮を超えて空気に触れた途端、母体が一瞬で裏切るのを知った。へその緒が名前も知らないような人間に裂かれ、触れた痛みが私の身体中を釘刺しにしたのだ。そしてもがき苦しみの中で、呼吸をすることが正解だと知らされた。それは母体からの捨て子である私の肉体が、生に対する執着を求めていた。かつて私は母体とともに物質であった。その血肉とともに腐る運命であったとしても、私はそれを引き止めやしなかっただろう。しかしその血の循環が途切れた時、私の安定性が崩れたのだった。それが私の意識を呼び覚ましよたようだ。母体への信仰は、そこで初めて生まれた。
 母体を卒業すると父母が目前に現れ、急に責任を語りだした。そして慢性的な性交渉が生んだ当然の産物に、奇跡であると泣いて騒いだ。口元には、唯一の食料源を吐く乳首と口を覆う栓のいずれかを、彼らの都合の良いように与えられた。それを拒めば私は死んでいたに違いない。私はなぜ拒まなかった?絶望的な背信が、私に絶対的な死への恐怖を与えたからだ。かつて一体化していた母体は、私を裏切ると共に依存させたのだ。しかし母体は私を拒み、かの頼みの綱であった乳は消えた。母体は精神的性質からしても私を裏切ったのだ。

 裏切りの”ツケ”は、私への教育に回ってきた。父母は私に圧迫し、職場からの帰りに感情を私に焚べて焼いた。母は私への心配を膨らまし、父は私への責任から目を逸らした。それにも疲れたようで、他の子と同じように扱うことに慣れた。私は学校に通った。それからの15年ほどは何ら進展もなく続いた。定められた周期の中で、常に上の存在から任命され、役割をこなし、名声を得た。時に不条理な当てつけで抑圧を受けたこともあった。カーストを知り、格差を知った。憧れを知り、やがて遠い朧気な夢さえ見つけた。神として崇める私の憧れは、私に無限の可能性を与えた。その神は初めて私に希望を与えた。
 夢は砕かれるまで、それが夢だとさえ気付かない。それは夢の性質そのものであり、夢が到着地でしかないことに起因する。夢は常に非現実な信仰を伴侶とする。非現実な信仰は、世に蔓延る周期性という虚構をいくらか繋ぎ合わせるだけで説得力を生む。それが思考の内部に潜む葛藤や憔悴に対し悲観的な発想を促すために、夢を追わなければかつての母体が犯した罪の痛みを再度被ることとなろうなどと、自身の精肉を削りたがるに至るのである。
 どこか熱狂の裏に冷めた顔をする自分の顔を知った。夢は無数にあり、それは幾つかの種類に分けられ、各セクシヨンに有り余るほどの人を集める。その大衆に自身との僅かな歪を感じた時、私は夢に対して初めて懐疑した。神は、無数に存在する。そして神は常に人が作りし概念であった。
 金に困りだしてから、如何に人間が飢えているかを知った。夢が資本価値を生み、夢が愛のすれ違いを否認していた。そして資本が我々に夢を与えていた。母体を求心する肉体の枯渇は、超人への血色悪い愛情にすり替わっていたのだ。母体と共有していた確定性の血流が、今や金脈のポンプとなり、金銭的成功を奪い合い殺戮を繰り返すまでになった。そう思えば、大人になった今こそ社会組織と肉体が同等のように感じる。夢のために罠にかかってさえも、循環させなければ死ぬのだ。それは呼吸という残虐な本能を止める楽な道を選びようとも死への恐怖が纏わりついて離れないのと似ている。そうして母体たる母は老い、帰る場所さえ無いというのに、諦めも付かない人間が死人の顔をしている。私の肉体に流れる輝かしい血液1滴1滴さえも壊死した人間の面をしているのか。
 神は、存在を肯定されなければ人に苦痛を与え、肯定するほどにと闘争を生んだ。そして時間が経過するごとに神が書き殴った己の穢れを認め出す。すると、今度は性交渉に依存し神になろうとする。資本に囚われぬ、唯一無二の神である親こそが、子供に血肉を与え、その時間を逆転させ、あたかも美しいかのように褒め称える。神の子であるかのように。そして子供は裏切りを知り、学び、伝承する。
 私はもう嫌気が差したのである。汚れを伝承する価値の無い、美しい世界を知りたいのである。それは石のように無機で感動の無い世界だろう。もう電車のホームに飛び降る恐れも、試合に打ち勝つ歓喜も無い。このどうしようもなく周期に満ちた世界に別れを告げよう。

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