雨のちペトリコール
驚いた
自動ドアだとは思わなかったから
openthedoor
中に入って右手
はじめまして世界観
closeしているような人気のない明度だったから
外から様子を伺っていただけだったのに
ドアがウィーンって開いてしまったからには
無かったことにもできず
しかして様子を伺っていた手前
気恥ずかしさもあり
嬉し恥ずかし
迷い込んだワンダーランド
アトリエの
本たちは突然の来訪者を静かに迎えてくれた
何湖は庭園だ
その何湖の片隅に
箱庭ができたようだった
マトリョーシカ
庭庭庭庭がある
渋沢栄一の幟がそこかしこにたなびく公園
以前から渋沢栄一の顔と名前が
たなびいていただろうか
以前からあったような気もするし
大河ドラマの影響でかもしれないし
偉大な功績を称える幟
称える人がいるからこそ
すごいわと気づくのだ
新
緑は
雨によって
鮮明に色づいていた
雨の匂いって
ペトリコール
と言うらしい
肺にペトリコールを取り込んだ
呼吸は過去のエモーショナルを
吐き出して今の最前線を吸い込んだ
キュンキュン
たっんたっんたっんたっん
さぁーんさぁーん
静かに騒々しい自然と不自然
緑緑緑
知らず知らず知らず
迷い込んだワンダーランド
切り取られたような
取り残されたような
何湖の片隅に
お菓子屋さんも
お花屋さんも
カフェも
やっていなかった
ここだけ
灯りが点っていた
みず文庫atelierは
かこさとしに溢れていた
他の本がまだ少ないから
かこさとしの本屋さんみたいだ
椅子に腰掛ける
外は雨
窓は
四角に切り取られた移ろうキャンバス
最果タヒの絵本を捲って
不意にタヒって字面が死にみえた
生き生きとした緑に一抹の寂しさ
本と庭園と雨
既視感を覚えた
この懷かしさはなんなのだろう
モラトリアム
アトリエに
みかさんはいなかった
旦那さんが言った
みかさんは
17時30分くらい
帰ってくると
キーボードのタップする音が
アスファルトを叩く雨音とシンクロしていた
打
打打打 打打打打
打打打打打打打
好き好き大好き超愛してる
わたしを空腹にしないほうがいい
ラックに
並んだ
本の
一部は
私が
選んだ
本だ
桜前線も梅雨前線も
最速らしい
春は終わった
夏が始まった
水辺のみず文庫
誰かの歌声が聴こえてくる
鳥は囀る
雨が弾ける
誰かの歌声が聴こえてくる
パッケージングしてよこの時間
時は止まらないそれでも
ワンモアタイム
雨ニモマケズ 風ニモマケズ