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色々ある!スポーツ車椅子の種類

こんにちは。wamです!
理学療法士として働きながら、障害者の余暇活動について
発信しています。

今回は、以前の記事でも触れた「車椅子」について
記事にしたいと思います!

学生時代に理学療法士の勉強をしていく中で
パラスポーツやパラアクティビティに興味をもちましたが、

そういった行動的かつ心の自由を生む
「車椅子」や「義足・義手」の
構造的なカッコよさに魅かれていました。
それも卒業論文で車椅子について書くほど!
(拙著すぎて思い出したくないですが笑)

そんなわけで今回は「スポーツ用車椅子」に絞って、
あまりなじみのない方向けに書いていきたいと思います!

普通の車椅子と何が違うの?

一般的に想像される車椅子は↓こんな感じかと思います。

株式会社幸和製作所より

押してもらったり、自分で漕いだりを想定して
作られているタイプで主に病院や施設、
高齢者の自宅用に使用されていることが多いです。

比較的安価だったりレンタルが可能である代わりに、
重かったり操作がしづらかったりという点があります。
(もちろん製品にもよりますが)

一方、スポーツ用車椅子に関しては、
特定のスポーツに特化して開発・製造されているので
競技をする上ではなくてはならない要素を
ふんだんに盛り込んだ秀逸な構造をしているのです!

中でも特徴的な6種をご紹介したいと思います。

スポーツ用車椅子のそれぞれの特徴

①テニス用車椅子

先日車椅子テニス界のレジェンド国枝慎吾さんが
引退され、国民栄誉賞を授与されたことでも注目を浴びましたね。

テニスは細かい左右前後への移動が重要になってくるので、
車椅子のタイヤが「ハの字」になっています。

パラスポーツガイドHPより

こうなっていることにより、直立しているタイヤよりも
旋回しやすかったり、倒れにくかったりという
メリットがあります。

また、サーブなどでラケットを振り上げた際に
ボールを見上げたり上体を後方へのけ反らせたりすると、
身体の重心が車椅子の重心よりも後方へ移りやすいため、
通常の車椅子では後方に転倒してしまう危険がありますが、
テニス用車椅子は後方の転倒防止キャスターが長いため、
後方への転倒がしにくいつくりになっています。

②バスケットボール用車椅子

東京オリンピックでは銀メダルの快挙を成し遂げ
さらに注目が高まった車椅子バスケットボール。

自コートや相手コートを行ったり来たりの切り返しや
ボールの取り合いなどで転倒シーンも多い競技です。

車椅子としては、テニス用と同様、タイヤがハの字に
なっている点や、転倒防止キャスターが長い点が共通しています。

加えて特徴的なのは、足元前方にある”バンパー”です。
テニスと異なりボールを相手と取り合うゲームなので、
接触プレーが起こるため、選手の足元をガードできる
バンパーがついています。

OXgroupより引用

テニス、バスケ車ともに国内生産もされているため
新品本体で30万程度で販売されています。

ですが、この一台があれば割とどんなスポーツでも
できることから、各自治体の障害者スポーツセンターなどで
貸し出しを行っている場合もあります。

③ラグビー用車椅子

ウィルチェアラグビーと呼ばれる競技で使用される車椅子です。
手や脚、体幹にも障害がある頚髄損傷者などが
対象となるスポーツのため、車椅子はテニスやバスケ用のものと
比較して、座面の角度が深く安定して座れるつくりになっています。

また、4対4のプレイヤー同士で得点を競うゲームなのですが、
自チームの中でも攻守によって乗車する車椅子が異なります。

下の写真の左がオフェンス用、右がディフェンス用です。
共通しているのが、タイヤがハの字になっている点と
タイヤの外側に、スポークカバーと呼ばれる板のようなものが
張られている点です。
接触が多い競技のため、タイヤへの巻き込みを防ぐために
取り付けられています。

オフェンスでは、素早くボールを敵ゴールまで運ばなければ
ならないためコンパクトなつくりになっています。
また、相手からの接触を避けるために足元からタイヤにかけて
「ウィング」とよばれるもので囲われています。

一方、ディフェンス用は相手の動きを止めたりするのに使う
バンパーが長いのが特徴的です。

http://www.rehab.go.jp/rehanews/japanese/No361/2_3_story.htmlより引用

海外でのみの製造販売となっており、かつオーダーメイドなので
一台約170万円ほどします。

④陸上競技(レース)用車椅子

陸上競技の中でも、レースで使用される車椅子です。
とても特徴的な見た目をしていますよね。

oxgroupより引用

簡単にいうと、普通の車椅子に長ーい前輪が一つついた形です。
逆に、テニスやバスケ用とは異なり
後方に転倒防止キャスターがありません。

なぜかというと、レースとはすなわち速さを競う競技なので
「いかに速く漕いで前方への推進力を得るか」
に特化したつくりになっています。

速く漕ぐためには、常に前方重心かつ
大きい車輪の前方を広範囲に漕ぐ必要があります。

そのため、競技中に後方へ転倒するリスクは
低いため転倒防止キャスターはないのです。

そして、速く進むために
空気抵抗を減らす工夫がなされています。

キャスターが一つのため、二輪の場合に比べ
地面との抵抗が減り、空気抵抗も軽減されます。
さらに、乗車姿勢を正座のような形にすることで
漕ぎやすさに加え空気抵抗の低減を図っています。

車体が長い分、直進安定性が良いかわりに
方向転換が難しいという特徴があります。

方向転換は、手元のレバーで前輪の向きを固定することにより行います。
急激な方向転換の際は、前輪を浮かせながら行います。

新品本体は40~80万とピンキリのようです。

⑤スキー用車椅子

スキーに関しては以前もnoteでまとめましたので
参考にしていただけたらと思います。

スキー用は「車椅子」というと語弊があるかもしれません。
正確にはタイヤがついていないので。
普段車椅子に乗られている方が競技対象になるため
紹介したいと思います。

構造としては、
普通のスキー板1枚の上に、
斜面の凹凸の衝撃を緩衝してくれるサスペンションやショックアブソーバー
などの金属部分と、専用のバケットシートと言われる椅子のようなもの
を取り付けて滑ります。

スキー板への固定は、通常のスキーブーツと同じように
ビンディングにより行います。

ストックの代わりに用いるのは、”アウトリガー”と呼ばれる棒。(棒?笑)
スキーの板の様になったりストックの様になったりを手元で調整
できる優れものです。

静止していたいとや、推進力を得たいとき、方向転換をしたい時などは
ストックモードに、
滑っていて方向を変えたい時や減速したい時などはスキーモード(?)
にしたりと、状況によって調整します。

⑥サッカー用電動車椅子

CP(脳性麻痺)サッカーやパワーチェアーフットボールなどと
呼ばれる競技で用いられる車椅子です。

前述した5種の車椅子と違うのは、
「電動」の車椅子であるという点です。

主に脳性麻痺など、脚と手、さらには体幹にも
障害がある方でもできるサッカーということで、
前述した手で漕ぐタイプのものではうまく漕げなかったり
バランスが不安定になってしまう人が
電動の車椅子に乗って行います。

手や足、口や顎など自分で動かせる場所に
ジョイスティックと言われるコントローラーの
ようなもので電動車椅子を操作します。

(操作さえできれば、障害・年齢・性別問わず参加できるのが
この競技の魅力でもあります!)

通常の電動車椅子は座面、背もたれ、ヘッドレストという
枕のようなものがついたつくりになっています。
車輪は手動のものよりも小さく、モーターで動く仕組みです。
電動なので、充電式のバッテリーが座面の下に着脱できるようになっています。

競技用はこれに加え、電動車椅子の前にフットガードと呼ばれる
バンパーのようなものがついており、
おもにここにボールを当ててパスやシュートを行います。

JPFA様サイトより引用

総重量は10㎏以上、
多く使用されているストライクフォースは
日本円で約130万ほど(2023.2時点)です。
送料等はまた別途になるのでしょうか?
詳しい方おられましたら教えてください!

競技用を普段乗ることはできる?

余談になりますが、、、

テニス車やバスケ車を見て
そんなに動きやすくて転ばないなら
普段乗って生活すればいいじゃん!
と思う方もいるかもしれません。

しかしそこはあくまで競技用。
普段乗りには適さない理由はいくつかあります!

まず一つ目に、競技車にはブレーキがありません
ブレーキは大抵の車椅子で、大きいタイヤの前方についています。
競技する上で、スピードが重要になったりしますが
早く車椅子を漕ぐにはタイヤを広範囲に握って
押し出さなければなりません。

タイヤを時計に見立てて説明したりしますが、
左方向へ進む場合
普段漕ぐ場合なら13時から11時の範囲で漕ぎます。
身体を垂直にした状態で、肩が無理なくタイヤを押せる範囲です。
競技で漕ぐ場合は、人や競技にもよりますが
14時から9時くらいまでの範囲を漕いだりします。

大体ブレーキが9時くらいのところについているので、
手にぶつかったりしてとても危険なのです。
ブレーキ機構を付けると重量もやや増えるため、
競技車にはついていないことがほとんどです。

普段乗るにあたって、ブレーキがないのはやはり不便で、
安全性にも欠けますので不向きと言えます。

二つ目の理由として、
段差を登れるようにはできていない”です。

先程ご紹介したように、後方に転倒防止バーが
長く伸びているのが大抵の競技車の特徴です。

競技する上でも、日常生活でも転倒しないことに
超したことはないのでは?と思いますよね。

ですが、日常で街中を漕いでいると平らな道ばかりではありません。

車道と歩道を分けるために少し段差になっていますし、
点字ブロックやタイルの道路など、車椅子で通ると
ガタガタしている所がほとんどです。

躓かないようにどう対処しているかというと、
前輪(キャスター)を少し浮かせるのです。

前輪は車輪の径が小さいため、段差に引っ掛かりやすく
そのまま漕ぐと体が前へつんのめってしまいます。

そこで、体の重心位置を車椅子の重心から少し後方へ
”あえてバランスを崩す”ことで前輪を浮かせ、
段差などを乗り越えるという手段を使います。

しかし、競技車には転倒防止バーが長いことにより、
その前輪を浮かせるために
”あえてバランスを崩す”というのができないのです。

競技はテニスコートやバスケットコートなど、平らな場所で
行うことがほとんどですので問題ありませんが、
日常生活、特に外で使用する人には不向きなのです。

そして三つ目に、タイヤの角度です。
前述したとおり、タイヤがハの字になっていることで
回転しやすかったり、転倒しにくかったりという
メリットがありました。
しかし、日常生活においては
”ハの字になっていることで幅が広がる”
というデメリットになるのです。

nagoya phenix様HPより引用

写真の通り、タイヤが直立している車椅子に比べ、
ハの字になっている競技車のほうが物理的に幅が広いのです。

外で使用する際にはそこまで気にならないかもしれませんが、
家の中ではかなりのネックになります。

特に日本の家屋は海外の住宅に比べても
廊下の幅が狭く、ドアの幅も狭いという特徴があります。

普通の車椅子でもぎりぎり通れる、曲がれるレベルの
廊下幅であることがほとんどなので
競技車で家の中を走行するのはかなり難しいです。

そして最後に、あくまで競技用ということは、
”競技ができるレベルの体の障害である”
=座っている姿勢や動いた時のバランスが崩れにくい
ことが競技用車椅子(以下、競技車)に乗るための
条件になっているわけです。

しかも、普段乗るということは乗り移りなども
自分一人で行わなければならないため、さらに難度は上がります。
そのため、「乗れる人が限られる」といえます。
障害の程度は様々であり、普段乗り(特に一番初めに紹介した車椅子)は
どんな障害の方でも大抵の方が乗れるよう設計されています。

まとめ

今回は、代表的な競技用車いすを6種ご紹介しました。
しかし、パラリンピックなどの競技になっていない
競技で使われている車椅子などもまだまだあります。

さらに言えば、同じ競技内でも乗る人の障害に応じて
微妙に違ったりもします。

知れば知るほど奥深く、面白い世界ですので
パラスポーツに興味がある方もない方も
”選手が乗っている車椅子に着目してみる”と
新しい発見があると思います。

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wam


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