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《サス経》 COP28をあなたはどう評価しますか?

 気候変動枠組条約のCOP28の会期が昨日(※)まででしたので、今日はその結果について簡単に報告するつもりでした。ところが合意文章になかなか合意できず、会期が延長となっています。どうやらこのままでは「化石燃料を段階的に廃止する」という当初の案に合意することは難しそうで、「削減する」というきわめて弱い表現になってしまいそうです。

 この結果については、あなたはどう感じられたでしょうか?

 ちょっと考えてみてください。

 私は、この結果をどう感じるかで、自分が長期的な視点で見ているのか、あるいは短期的な視点で見ているかが分かると考えています。


私たちがいる場所

 実のところ、私たちはかなりギリギリの瀬戸際にまで追い詰められています。COP28がスタートした11月30日、世界気象機関(WMO)は、2023年の世界の平均気温が産業革命前を約1.4度上回る見通しだと発表しました。つまり、1.5度までもうあとわずかのところまで来てしまっているのです。

 こうしたこともあり、国連のグテイレス事務総長は、「地球のバイタルサイン(生命兆候)は破綻しつつある」と警告を発しました。このままでは人間社会は継続に赤信号が点ったということです。

 イギリスのチャールズ国王も「我々は自然界を均衡の取れた規範や制限から逸脱させ、危険な未知の領域に導いている」と懸念を示しましたが、それはきわめて真っ当な認識であり、指摘だと思います。


再エネは2030年までに3倍に!

 良いニュースもありました。日本も含めて約130カ国が2030年までに再生可能エネルギーによる発電容量を今の3倍に拡大することに同意しました。素晴らしいスピード感であり、これが額面通り実施されることを願うばかりです。しかし、日本は合意しながらも、すぐに伊藤信太郎環境相が「(国内には)必ずしも3倍にできる容量があるとは考えていない」と述べて予防線を張り、新興国の排出量削減を支援して二国間クレジットを得るようにする考えを示しています。

 さらに気をつけなくてはいけないのは、国際エネルギー機関(IEA)は、この合意が完全に実施されたとしても、また同時にこれも今回合意された2030年までにメタン排出をゼロにし、日常的なフレアリングを排除するという石油・ガス脱炭素検証のメタン公約が完全に履行されたとしても、GHGの排出量は4ギガトン減であり、それだけでは1.5度目標を達成するために必要な削減量の3割でしかないとの指摘を発表していることです。

 本当に恐ろしい指摘だと思いますが、気候危機は物理現象であり、科学的に数値で予想できてしまうのですから、厳しい事実として受け入れるしかありません。


あなたの視点は?

 さて、こうしたことを考えた上で考えると、今回の合意文書に化石燃料の「段階的廃止」が含まれないであろうことはどういう意味を持つでしょうか?

 長期的に見れば、廃止に合意できなかったことは、1.5度目標の達成をかなり遠ざけてしまったことを意味しており、きわめて残念なこと、落胆すべきことになります。そして、その結果、近い将来私たちや、私たちの子どもや孫の世代に降りかかってくる運命(というより私たちが導いた結果ですが)を考えると、深刻に成らざるを得ません。

 一方、なるべく自分の仕事を増やしたくない、新しいことはしたくない、困難なことには挑戦したくないと考えるのも人間の性でしょう。そういう自然な気持ちからすれば、「廃止」という合意がなされず、行動が先送りになったことは、歓迎すべきことかもしれません。ただしもちろん、それはかなり短期的な視点であることは否定できないでしょう。

 どちらが正しいかはさておき、今回の結果をどう受け止めたかで視点が長期的か短期的かは分かります。冒頭で述べたのは、こういう意味なのです。

 サステナブル経営アドバイザー 足立直樹


※この記事は、株式会社レスポンスアビリティのメールマガジン「サステナブル経営通信」(サス経)481(2023年12月13日発行)からの転載です。


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