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《サス経》 もはや1.5度目標の達成は不可能!?

 こんにちは、サステナブル経営アドバイザーの足立です。今日が満月ですので、これに合わせて旬のサステナビリティの話題をお届けしたいと思います。

12万年で最も暑い年!?

 それにしても毎日本当に暑い日が続きます。京都では連日最高気温が体温よりも高い状態です。こうなると、とにかく建物の外に出る時間は最小にしたいと思うばかりです。お仕事で外出せざるを得ない方は、どうぞくれぐれもご用心なさってください。

 このように、実感として気温が高くなってきていることを感じている方は多いと思いますが、今週月曜日の日経夕刊トップに掲載されていた世界気象機関(WMO)などの発表によれば、今年7月の世界の平均気温は、観測史上最高となる見通しとのことです。さらには過去12万年の中でも最も暑かった可能性が高いというのですから驚きです。毎年最高気温を更新していることを考えれば、気候変動は確実に進んでいるようです。

 少し前には、2027年までのどこかで年平均気温が1.5度を超える可能性が66%という科学者の予測が発表されています。もちろんこれは1年限りのことですので、これをもってすなわち気温上昇1.5度以内の世界目標が達成できないと言うわけではありません。けれども、この予測が大変真実味を帯びているように感じるのは確かです。

1.5度突破は不可避か?

 そして先月、さらに衝撃的な「告白」がありました。それはイギリスの著名な科学者であるロバート・ワトソン博士がBBCのインタビューに対し、「人類は1.5度目標を達成できないだろう。2度目標の達成すら私は大変悲観的である」と述べたことです。

 ワトソン博士はイギリスの環境・食糧・農村省(Defra)に首席科学顧問や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の議長、2000年から2005年までミレニアム生態系評価の共同議長、さらには2016年からは生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学ー政策プラットフォーム(IPBES)の議長を務めるなど、イギリスを、いや世界を代表する科学者がこのような発言をするのは、かなり悲観的な状況になっているといるでしょう。

 実際、温室効果ガスの排出量の変化を見ると、コロナの間ですら足踏みをしているものの減少することはありませんでした。1.5度目標を達成するために必要とされる大幅な削減にはとても至らない状況です。もちろん以前に比べれば増加のペースは減って来ていますし、多くの国で多大な努力がなされているのは事実です。それでも、まだこれでは削減努力が足りないという厳しい現実が突きつけられているのです。

もう努力しても無駄、ではない

 ただ誤解していただきたくないのですが、私が申し上げたいのは、私たちは1.5度目標を多分達成できないのだから、もはや何をやっても無駄だ、諦めたほうがいい、ということではありません。話は逆で、だからこそ私は今まで以上に削減努力をしなくてはいけないということ、もしくは今までとは異なる異次元の削減方法を考えなくてはならない、ということです。

 もう一つは、今後しばらくは地球の平均気温は上昇を続け、気候は悪化していく可能性がいよいよ高いので、それを前提にあらゆることを設計し、被害を小さくする努力をしなくてはいけないということです。

 私たちはついついイチゼロで考えがちです。しかし実際にはいきなりすべてがダメになるわけではないので、被害を最小限にする努力をすることが重要です。その努力に応じて被害は少なくなるのですから、少しでも多く努力をする必要があるのです。

 もはや誰も傍観者を決め込むことはできなくなりました。世界中のどこにいても、どのような立場であっても、何らかの影響を受ける事態になってきました。そして残念ながらこの状態はさらに悪化し、私たちはいよいよ瀬戸際に追い詰められるでしょう。そのことを今一度強く認識し、そして、その前提でどうするか、それを真剣に考えざるを得ない状況になりました。特に適応策については、きちんと対応した場合とそうでない場合で将来の運命は別れるでしょう。ぜひそうした認識のもと、組織としても、個人としても、行動する必要がありそうです。

 サステナブル経営アドバイザー 足立直樹


株式会社レスポンスアビリティのメールマガジン「サステナブル経営通信」(サス経)472(2023年8月2日発行)からの転載です。

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