2019年9月の記事一覧
【掌編小説】 昼下がりのチャーリー
少年とブル・テリアのチャーリーはリビングにいる。対峙している。
少年が右手を拳銃の形にして、チャーリーに向ける。
チャーリーはおすわりして、銃口(指先)を見つめている。
少年がチャーリーを撃つ。
チャーリーが倒れる。
死んだふりをする。
少年が人差し指に息を吹きかける。
チャーリーは仰向けになって、白いおなかを見せている。
少年がポケットからドッグスナックを出す。チャーリーに差し出す。
【掌編小説】 エッセイ
グーとパーの問題からチョキを導き出せません。バイノーラルビート的な課題に折り合いをつける機能も不順なのです。それだけでなく、哨戒しているはずの両耳から入ってきた周波数の違うその問題を、明日考えることにする癖がついてしまいました。
しかし、それでもアイツだけは居座ります。
アイツは残像のようなものです。生き続けて動けば動くほどアイツは——残像は産まれます。アイツは僕の後を必ず追って来て、そうし
【掌編小説】 猫車の一日
午前八時、猫車《ねこぐるま》はお母さんと一緒にいる。
お母さんは猫車に粗大ゴミをのせて、ゴミ置き場まで引いていく。
午前十一時、猫車は畑にいる。
おじいさんとおばあさんが育てたニンジンを、猫車はのせてあげる。
午後二時、猫車は軒下の犬走りにいる。
昼寝するウサギを猫車はのせてあげる。カメが犬走りを歩いている。
午後五時、猫車はテッポウユリが一面に咲き誇る岬にいる。
わんぱく坊主とおてんば娘を