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「楽しんで、何より自由でいて」ゴルティエ、ファッションフリークショー/パリ、フォリ・ベリジュール・シアター

年明け、ベルギーの中世都市ゲントとパリを旅してきました。

パリで、「Jean Paul Gaultier Fashion Freak Show」を観ました。

革新的なファッションデザイナー、ジャンポールゴルティエの半生と内面世界を、彼に影響を与えたスペインの映画監督ペドロアルモロ、リュックベッソン、マドンナ、フランスで活躍する歌手のミレーヌマルメール、などの音楽やクリエイティブを織り込んだミュージカル仕立てのエンタメです。

パリ行く人、とにかく必見です。

ゴルティエがプロデュースするので、当然、衣装は素晴らしい。リアルの舞台と映像の融合も素晴らしい。出演者のプロポーション、パフォーマンスも素晴らしい。音楽も、演出も、何もかも、素敵でした。

冒頭で、ゴルティエが祖母のクローゼットの中で美しく楽しいもの(彼にとってのファッション)と(おそらく)自身の性について目覚めたことを表現する場面で、男女のウエストを締め上げるコルセットの紐(リボン)にコーラルピンクが用いられていました。

これぞ、ゴルティエ初のフレグランスJean Paul Gaultierに、わざわざ彩色された色、舞台を観ながらそう思いました。

ゴルティエ初のフレグランスは缶入りでした。香水は液体の宝石、ボトルやパッケージは香水の棲む家、形のない香りを伝える大切な手段、どのブランドも趣向を凝らし、あるいはポリシーを守って美意識に適うボトル、パッケージデザインを行ってきました。

ゴルティエは缶!そう、香水が缶に入ってたっていいよね、というやはりとらわれない彼の自由さがそこに如実に出ていました。同時に、この香りがリリースされた1993年当時は珍しかった、液体に着色する、という”こだわり”をゴルティエは世に放ちました。

その液体の色こそ、クローゼットで展開されるアーティスト、ゴルティエの目覚めの場面に使われたカラーだったのです。

フィナーレの前にゴルティエのメッセージが映像で出てきます。

「to fun,be free」

彼は自由を欲した。そのキャリアのスタートから、楽しむこと、そのために自由であることをポリシーにしていたはず。

ショーを観て、ゴルティエは今、自分が楽しむこと以上に、不自由でそのために楽しめていないあらゆる人たちを解放してあげたくて仕方ないのだ、そのためにこの舞台を創ったのだと、心底思いました。

簡単とシンプルが違うように、自由と猥雑も違う、なんでもありのように見える舞台に、見事な均整があり、演者が避妊具を観客にばらまいて歩いたりもあるのに、下劣さの微塵もないのは、そこに蔑みがないからだと思います。ゴルティエのあらゆる思想や思考への愛情を感じました。だから、あらゆる人に「楽しむこと、そして自由を」サービスしたいとねがっているのかな、と思いました。舞台を見て、ゴルティエに畏敬の念を覚えた夜でした。


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