自ずから然る(おのずからしかる)
動物の世界、例えばライオンは人間の批評はもちろん、ライオン以外のあらゆる存在からの批評など一切気にしないで、本能の動くままに行動します。野生動物であるライオンが、鹿の群れを木や岩に隠れていて、そこから突然と鹿の群れに襲いかかるのです。逃げ遅れた鹿はたちまち猛獣の餌食になってしまう。
人間の心から見ると、如何にも残忍至極ですが、ライオンの方から見れば、お腹が空いたということだけです。鹿を殺して楽しもう、面白いから殺してやろうというよりもお腹が空いたから鹿を襲ったということだけです。反省などということは一切ありません。鹿の方でもそれを甚だ不合理だと不平を言いません。ライオンに食われて死ぬ時でも、鹿は天を怨んだり、自然界の摂理を怨んだりしないのです。鹿としての「生きる権利」もライオンとしての「生きる権利」も互いに主張し合うことはありません。何等の判断をしないのです。ですから、善いも悪いも、是も非も何もありません。人間のように自分の行為の価値や意味を考えることはしないのです。
自ずから然る(おのずからしかる)ように、つまり、そうなるようになった、言い方を変えれば自然にそうなった。ただそれだけです。
人間はなまじ自分の行為の価値や意味を考える能力を持ってしまったが故に、幸福と不幸とか成功と失敗ということを分けて考えてエデンの園に居続けられないのです。でもそれが人間らしい、人間であることの誇りでもあると思います。
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