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選挙の投票について考える

前回に引き続いて選挙、それも投票所について考えたいと思います。
先日行われた参院選の投票率は52.05%では、前回の48.8%に比べて伸びたとは言われていますが、有権者の大多数の意見を反映したとは言い難い数字のように感じます。これまでの投票率の推移をみると、過去最高だったのは昭和55年(1980年)の75.54%で、それ以降14回行われた参院選で投票率が6割を超えたのはわずか2回のみでした。これでは「最大多数の最大幸福」である民主主義が健全な状態にあるとは到底言えないと思うのです。
選挙のたびに投票を呼び掛ける広報は盛んにおこなわれてはいるものの、あまり効果にはつながっていないように思えます。その原因はどこにあるのでしょうか?

旧態依然とした投票方式

選挙が公示されると、投票所入場整理券が居住していく市区町村の選挙管理委員会から各世帯に郵送で送られてきます。封書で送るところもあるようですが、私の住んでいる習志野市では3つ折りの圧着はがきに世帯全員の入場整理券が印刷されており、各々の名前の個所をはさみで切って投票所に持参することになります。
投票所で入場券を提出すると、居並ぶ立会人の前で所在確認を行ったうえで投票用紙が渡され投票することになりますが、立会人の存在はいつも気になって仕方ありません。立会人とは、投票及び投票事務が公正に行われているかどうか見届ける人ですが、かつては投票を行う人が間違いなく当人であるかを確認する役割もあったと聞いたことがあります。もちろん、町村民が互いに顔見知りだった頃とは事情が異なるため、今日では投票所や投票箱の管理以外は一連の投票行為をじっと見守っているだけの役割になっています。
かつて、総務省との会議の席で、今の時代には立会人は不要ではないのかと発言したことがありました。マイナンバー制度が成立した直後だったこともあり、マイナンバーカードで本人確認を行う方がより確実な確認ができると考えたからです。その場では、マイナンバーカードの普及には時間がかかるなどと反論され私の意見は却下されましたが、実はこの時の発言には立会人が必要かということ以外に、全国どこででも投票ができる仕組みを考えるべきではないのかという私なりの問題意識がありました。

参考になる韓国の投票方式

こうした問題意識を抱いた背景には、韓国で行われている投票の仕組みへの強い関心があったからです。
韓国の選挙の最大の特徴は、全国どこの投票所であろうが投票が可能になっています。例えば、駅の構内屋ショッピングモールなど人の集まる場所にも投票所が設けられています。ソウル駅の構内に設けられた投票所に大勢の有権者が投票に並んでいる写真も見たことがあります。もちろん、その際に日本のような<投票場入場券>なるものを持参する必要はありません。つまり、有権者は身分さえ証明すれば投票が可能となっているのです。
本人であることの証明は、マイナンバー(韓国では”住民登録番号”と呼びます)に紐づいた証明書をスマートフォンに入れてありますので、それを提示して本人であることが確認できれば、その場で投票用紙が渡され投票を行うことができます。

左の写真は本人確認機です。スマートフォンを置いて右下の指紋読み取り機に指をかざすと本人であることが確認され、右の写真にある投票用紙発行機から投票用紙が出力される仕組みです。もちろん、そこで印刷される投票用紙は、投票者の選挙区のものが出力されるため、全国のどこにいても投票が可能になるわけです。

投票に行かない理由

公益財団法人 明るい選挙推進協会では「第49回衆議院議員総選挙 全国意識調査」を公表しています。そのなかで、投票に行かなかった理由について、以下の回答があったとしています。

選挙を棄権する理由には、政治そのものへの不信や不満などもかなり多いようですが、仕事が多忙であることなど投票そのものへの負担感も見逃せない要因であると考えられます。
また、古いデータですが総務省は昭和49年に行った「選挙(棄権)に関する世論調査」で、棄権を少なくするには?という設問への回答では、投票の簡略化や投票時間の延長といった回答が40.5%に及んでいます。
こうしたことからも、投票所のあり方という側面だけ見ても、投票率を上げる方策は様々考えられるのではないでしょうか。さまざまなメディアを駆使して投票を呼び掛け、その結果投票率が思わしくなくても所詮は国民の選択だったと達観することなく、政府・行政はより積極的に投票のあり方について検討し実行していくことが重要ではないかと考えます。



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