帰路:壱
湿気は少ないが陽射しは相変わらず刺すように強い。そういえば通販で頼んだ日焼け止めはそろそろ家に届く頃だろうか。毎年まいとし腕時計焼けに後悔するサイクルをいい加減止めなければならないのだが、果たして成功するのかは些か疑問である。
一仕事を終えてコンビニのアイスカフェラテを飲みながら駅に向かって歩いていると遠目に見えたのは艶やかな黒髪の集団。
カラフルなTシャツとジャージを着て肩からタオルをかけ、みな一様に黒く大きな鞄を背負っていた。体育祭が無事終了したらしい。
前を歩く男女二人組。
2位、すごくない?1位よりすごいよ。と彼は力説していた。それに同調するようにうなずく彼女。
そういえばほんの数分前にすれ違った女子二人組もやたらと、2位だよ!?やばくない??と興奮していたっけ。
この短時間に2位というキーワードをたくさん耳にした。なぜ、2位…?
誰しもこのまま3位で終わるのかと諦めかけた時に奇跡の大逆転を起こした誰かがいたのだろうか。
どうせ最下位だろうとのらりくらりしていたのに今日はめちゃくちゃ風向きが良かったのだろうか。
ぼんやりと色んな会話を聞き流しながら歩いていると横断歩道に差し掛かって流れがつっかえる。
人溜りにもかかわらず、その空間はなんかキラキラしていた。
そもそもクラス対抗なのか学年対抗なのか…今の体育祭事情を知らないが故のちょっとした疑問を解消する暇もなく集団の間をすり抜け改札を抜ける。
勝手にキラキラのお裾分けをもらいつつ西日から逃げるように冷房の効いた電車へ乗り込んだら、夏の陽射しにまだ慣れていないのか少しだけ目眩がした。
Kodak ColorPlus200
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