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ある広告に見る広告の「本質」と「使命」

櫻井 光政
弁護士
士業適正広告推進協議会 代表理事

1ヶ月ほど前、ある司法書士法人の過払金返還請求の広告で、「現金が戻る可能性があります」という大書のもとに貸金業者各社のカードの写真のそれぞれに平均〇〇万円と表示されているのを見かけました。
ところがその母数については全く触れられていません。要するに、「平均」と言いながら、何を平均したものかどうか、全くわからないのです。

これを見て、少なからぬ消費者は、「私が持っている××カードの平均は△△万円と書いてあるから、私もその前後の現金を返してもらえるかもしれない。」と誤解するでしょう。
この広告は、その誤解を利用して、幅広い消費者からアクセスさせることを企図しているものと言えます。実際には××カードの保有者の大半は過払いのない人たちです。

率直に言って「悪質」な広告だと思い、X(ツイッター)で指摘しました。

私と同じようなことを考えた人は他にもいたようです。司法書士法人にその旨の指摘をした人がいたのかもしれません。

最近同じ法人の広告を見たところ、カードの写真と平均〇〇万円の記載は残っていましたが、「その平均額」という記載の右肩に★印がついていて、広告の末尾に、小さな字で、同法人が2018年1月から12月までの間に調査した結果、過払い金が判明したケースにおける各カードごとの平均額という趣旨の説明がありました。

なぜ5年も前のデータを載せるのかなどと突っ込みたくもなりますが、ともあれ、調査の結果、過払いがなかった人は除外して、過払いがあった人の平均だということ(つまり、調査の結果、過払い金がなかった人がたくさんいても、この平均には影響しないということ)がわかりました。

「平均」についての説明を加えたことは小さなことのように見えますが、消費者に正しい情報を与えるという意味では大きな違いがあります。
なるべく対象者の多くの関心を引きたいという広告の本質と、消費者に対して正しい判断材料を提供しなければならないという広告の使命との関係について考えさせられる出来事でした。

以上

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