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士業広告の未来に関わる一つの問題についての私見(2)

八坂 玄功
弁護士
士業適正広告推進協議会 監事

1 士業広告に対する見方の温度差

士業広告に対する見方 都市部の士業者と非都市部の士業者との間の温度差として、「都市部の弁護士その他の士業者 広告宣伝に費用や手間をかけるのは当然のこと」「非都市部の弁護士その他の士業者 依頼者は紹介、口コミ等で来所されるのが健全、広告宣伝に費用や手間をかけるのは邪道」という温度差が感じられることを私の以前のコラムで述べました。

2 現在行なわれている日弁連会長選挙での一方陣営の政策

上記のような温度差が存在することについて、現在行なわれている日弁連会長選挙(2月9日投票日)において、陣営の一方から明示的に政策として提起される状況に至りました。

会長選挙の一方の陣営は、政策を宣伝するFAXニュースにおいて、
「広告規制を見直すべきです!」として

日弁連は「元々面談が物理的にできないような遠方に所在する債務者から受任し、直接面談による事情聴取を行なわず、結果的に家計状況を無視した任意整理を選択して破産に移行せざるを得ないようなケース」、「破産事件を引き続き受任することなく放り出してしまうようなケース」との事例を紹介しました(令和5年3月、アンケート依頼文より抜粋)。
平成29年には法律事務所の広告が景表法違反として措置命令の対象となり、今年(令和5年)12月にはホームページに国際ロマンス詐欺の被害者救済を掲げていた弁護士が、名義貸しの疑いで逮捕されたと報道されました。
今年(令和5年)6月の日弁連総会では「高額の広告料を要する広告は、大量販売・大量消費を前提とするものであって弁護士業務には馴染まない」との声もあがりました。
日弁連が、このような広告の問題を放置していれば、いずれは国民から手厳しい批判を受けることになり、弁護士自治を揺るがしかねない事態にもなりかねません。弁護士に対する国民の信頼が失われないよう、金額面・内容面も含めて広告規制を見直すべきです。

との政策意見を表明しています。

3 士業広告事業者団体として考えるべき問題

上で述べたような日弁連会長選挙の一方の陣営の主張がただちに日弁連の方針として採用される可能性は高くはありません。

しかし、日弁連会長選挙の一方の陣営の主張にすぎないとしても、会長選挙で政策論戦が行なわれる結果として、会長として当選する陣営の政策に反映される可能性が皆無ではないということには注意が必要です。

4 士推協として

士推協としては、上記のような政策意見が表明されていることもふまえて、ますます、日弁連や単位弁護士会やその他の士業者団体との意見交換のための努力を強めるべきであると考えられます。

5 地方で業務を行う士業者に有効適切な広告宣伝のありかたの積極的な提案を


また、これ以降は、以前のコラムで述べたのと同じ意見ですが、私は、士業者への依頼を必要としている人に適切な情報を提供して適切な士業者にお繋ぎするという広告宣伝の公共的な価値を重視する立場に立てば、地方で業務を行う士業者に有効適切な広告宣伝のありかたを積極的に提案するという方向に努力を傾けるのが適切であり、士業広告業界の発展のためにも有益なのではないかと考えています。

広告は、依頼者のアクセスを容易にし、弁護士等と依頼者を結びつける良い役割を果たしています。現状に困っていなければあえて広告を出したくないと考える弁護士等が少なくないことも頷けますが、とはいえ、弁護士等の公的な使命を考えると、弁護士等が困ってなければいいという問題ではありませんから、やはり地方においても、広告が必要だと考えられていくようになっていくのではないでしょうか。

もちろん、会員事業者さんの中には既に地方都市での士業者広告で実績をあげているという方も多くいらっしゃると思います。その場合は、既に宣伝広告で成果をあげている士業者さんと、宣伝広告に抵抗を感じている士業者さんというように読み替えていただきたく思います。

以上


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