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士業広告の未来に関わる一つの問題についての私見

八坂 玄功
弁護士
士業適正広告推進協議会 監事

1.士業広告に対する見方 都市部の士業者と非都市部の士業者との間の温度差

士業広告が原則自由化されてすでに長い期間が経過していますが、下記のような温度差を感じることはないでしょうか?
 
都市部の弁護士その他の士業者
広告宣伝に費用や手間をかけるのは当然のこと
 
非都市部の弁護士その他の士業者
依頼者は紹介、口コミ等で来所されるのが健全、広告宣伝に費用や手間をかけるのは邪道

2.前記の見方の差異は客観的に根拠があるのか感覚的なものに過ぎないのか

上記のような温度差が存在することについてはおそらく業務の中でみなさん多かれ少なかれ感じていらっしゃると思います。

では、非都市部の弁護士がそのように考えるのにはどのような理由があるのでしょうか。これについては実証はされていませんが次のような仮説が想定できます。


非都市部の士業者は、大都市部に本拠を置き大量広告を行う士業者が、自分達が受任できていたはずの事件を受任して非都市部の士業者の仕事を奪っていると感じている。

さらに言えば、大量広告を行う大都市部の事務所は、経済的にペイしやすい定型的な事件処理が可能な事件のみを選別して受任し、経済的にペイしにくい複雑困難な事案は受任しないため、困難な事件のみが地方の弁護士のところに依頼される。


都市部の士業者、弁護士急増時代に都市部に事務所を構えるようになった弁護士等は、広告によってしか自身の存在をアピールする術がなかった、また、専門化が進むに従って自身の取り扱い分野を鮮明にして、対象たる顧客にアピールする必要があった、等などの事情があると考えられます。

他方で、地方の弁護士等にとっては、紹介によって良質な顧客を確保することがこれまでできてきたし今もできているという面があるのでそのような必要が強く感じられてこなかったとも考えられます。
 
上記の仮説はあくまでも仮説であり、客観的な根拠が明らかになっているわけではありません。

しかし、私たち弁護士が地方で業務を行う弁護士と話をすると、上記のような意見を表明される方は少なからずいらっしゃいますので、地方で業務を行なっている弁護士さんの一定数の少なくとも主観としては、上記のような仮説が事実として認識されているのではないかと思われます。

3.士業広告事業者として考えるべき問題

上で述べたような問題があるとして、士業広告事業者としては何か対応できることがあるのかないのかという点について考えてみたいと思います。
 
士業広告事業者の仕事はクライアントである士業者の依頼があってこその仕事ですし、広告宣伝活動を行うのも行わないのも士業者の自由な判断ですから、なにも対応できることはないとの考え方もありうると思います。
 
しかし、私は、士業者への依頼を必要としている人に適切な情報を提供して適切な士業者にお繋ぎするという広告宣伝の公共的な価値を重視する立場に立てば、地方で業務を行う士業者に有効適切な広告宣伝のありかたを積極的に提案するという方向に努力を傾けるのが適切であり、士業広告業界の発展のためにも有益なのではないかと考えています。

広告は、依頼者のアクセスを容易にし、弁護士等と依頼者を結びつける良い役割を果たしていることも事実ですが、モラルの低い利用者をも呼び込むことになった側面もあります。現状に困っていなければあえて広告を出したくないと考える弁護士等が少なくないことも頷けます。

とはいえ、弁護士等の公的な使命を考えると、弁護士等が困ってなければいいという問題ではありませんから、やはり地方においても、広告が必要だと考えられていくようになっていくのではないでしょうか。
 
もちろん、会員事業者さんの中には既に地方都市での士業者広告で実績をあげているという方も多くいらっしゃると思います。

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