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母の生きざま

いつか母について書いてみたいと思っていました。
けれど
どこからどう書いたらいいのか迷い、なかなか書くことが出来ずにいました。

そんなとき、ある出来事が起こりました。
母の人となりを知るに至る出来事がたて続きに起こりました。
その出来事が私を書く気にさせてくれました。


ある日、父の病院の付き添いで母と待合室で待っていたときのことです。

前に座る老夫婦か、話しているのが耳に入ります。「冷房が効いていて寒い寒い」とお婆様がお爺様に訴えかけてます。お爺様はなすすべもなく、ただお婆様に寄り添っています。お婆様は「歩いても寒い、足が冷える」と言いながらお爺様に寄り添っています。

その光景を黙ってみていた母が、おもむろに自分が履いていたレッグウォーマーを脱ぎ、「私が履いていたものだけど、よかったら履きませんか?」とそのお婆様に渡しました。びっくりした様子のお婆様に「気持ち悪かったら捨てても構わないですから」と笑顔で話していました。

お婆様はその場で履いてくれて「とっても温かい、温かい」としみじみ言い、笑顔になって「ありがとうございます。」とご夫婦で頭を下げてくださいました。

母とそれほど年の変わらないお婆様に、自分も冷えるだろうにあげてしまう母。

そんな光景を見ていて、「母はいつもそうだったな」と、とても誇らしい思いになりました。


そして、家に帰ってきたら、ご近所のおばさま(近所とのおつきあいはなく、あっても挨拶もしてくれない…)がうちに来て、母に笑顔で、「これ作ってみたの」と言って、出来たての煮物をくださいました。
私はビックリです。先程も言いましたが、挨拶もしてくれないおばさまがなぜ?

私は母に聞きました。
母は、淡々と、けれど嬉しそうに話してくれました、この間、「お母さんがおかしいって」娘さんがうちの母に頼ってきたらしいのです。娘さんとも挨拶を交わす程度だったと思うのですが・・。
母はあわててお宅に向かったそうです。そして、おばさまの話を、ずっと聞いてあげたそうです。
そんなことが、今まで何回かあったそうです。
私は全然知りませんでした。

母はただそれだけだと言っていましたが、ご近所のおばさまが、少しでも心を開いてくれたのが、とても嬉しそうでした。


コロナの影響で、家にいることが多くなり、母とも一緒にいる時間が増えたおかげで、今まで見ることのできなかった母の姿をみています。

普段、自分の事はあまり話さず、感情を表に出すこともなく、人の噂話、陰口を言っているのを聞いたこともありません。いつも静かで穏な人です。
もちろん、私は怒られたこともありません。

母は「嫌なことがあったら、騒がずただじっと時が過ぎるのを待てばいい」「なるようになる」が口癖です。

とても苦労をしてきたからでしょうか。とても強い女性です。

私は母を尊敬しています。面と向かってはなかなか言えませんが、母を誇りに思います。

母の「生きざま」格好良いと思います。

私には偉大すぎる母です。

「本当に優しい人間は強くなきゃいけない」

母の生きざまが私に教えてくれます。


私はいつか母に聞いてみたいことがあります。

「お母さんは今、幸せですか?」と・・・。

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