見出し画像

憧れの聖地インカ・トレイル4〜いよいよフィナーレ!「今、この時代を歩けるということ」

2日目は、いよいよ標高4,215Mの1st PASSを越える行程です。
テント場Paqaymayuは3,500Mにあるので、1,115Mを登り700Mを一気に降るという正念場。

私にとって「歩く」ということは、生きている証と言っても過言ではありません。

なぜなら、大病の時に歩くこともままならない苦労があったので、2本の足で立って、普通の速度で歩けるということ自体が奇跡だと感じてしまうからです。

相当の覚悟と想いを持って、ここペルーに来たわけですが、実際に現地へ行き歩いていると、どんどんその想いが薄れていくというか、土地に同化していきました。

途中までは村があり、古代インカ人の血を受け継いでいる人々が、普通に暮らしを営んでいます。

生活道路として使われているので、村人たちがロバを使い物資を運んでいます

家族がいて、仕事をし生計を立て、あたりまえの日常を過ごしています。
私がどんなに強い想いを持っていても、目の前にある「暮らしの風景」が、私の想いを「こっちにおいで〜」と取り込んで同化し、「あんた大変だったねえ、ここいらで少しのんびりとしていきな」と言ってくれているように思えたのです。

不思議なものですね。
気持ちが一気に落ち着いて、緊張しているのに安心している私がいました。

いきなり人里離れた登山道だったら、こうはいかなかったのかも知れません。

気になってしかたなかったブーちゃん
いつか誰かのお腹の中に入ってしまうのかしら…

****

さすがに4000Mが近づいてくると、相当息が上がってきましたが、落ち着いた気持ちで一歩一歩を重ね、無事にPASS!

そしてここからが古代のインカ道です。

とにかく驚くほど整備されていて「これってほんと?」と疑ってしまうほど。
歩を進めていくと、アンデスの山深く入っていくのにも関わらず、その山間を縫うように張り巡らされている道が、どこまでもどこまでも続いているのです。

一体なぜこんなところに道を作ろうとしたのか?
そのためにどれだけの人の命が懸けられたのか?
そこまで君臨したインカの王様は一体どれだけの人物だったのか?

たくさんの疑問が頭の中を巡っているのに、なぜか思考回路が止まってしまったような不思議な感覚に陥りつつ歩き続けました。

古代からのインカ道が延々と続いています


大きな一枚岩を削って作られた階段にビックリ!

時代はめぐり、他民族の私が「今この時代」を歩いているのに、自然は変わらないのでしょうね。
2nd PASS近くにできた池には、鹿が水を飲みに来ていたり、雪山とサボテンのコントラストや肉厚な花々が咲き乱れていたりと、時を超えて受け継がれてきたものの存在がとても大切に思えて仕方ありません。

標高3900M近くにこんな池があるとは!


もはや名前なんかわからない


ハチドリを激写!←私じゃありません、撮ったのはリーダーです
後ろは遺跡


****

トレイルを歩き出すとすぐに遺跡がありましたが、道中にそれはそれはたくさんの遺跡が急に現れてきます。

インカ帝国は文字を持たなかったため、伝承か「キープ」と呼ばれる結び目付きの紐の解読でしか、文明が判明していません。

たくさんあるその遺跡は一体何なのか?
誰が住み、どんな暮らしをしていたのか?

疑問はたくさん湧くけれど、正直どうでも良いような感覚にさえなってきてしまいました。

ただ一つ言えるのは「卓越した技術と計算され尽くした精密さ」があるということ

そしてそれらはマチュピチュのように注目されず、ひっそりとアンデスの山中で歴史を語っているのです。

Runkurakay



Sayaqmarka



遥か遠くに遺跡が!
名前は分かりません


****

いよいよ最終日となる4日目となりました。

「ご来光をみてマチュピチュへ行きましょう」と、現地ガイドのミチコさんの粋な計らい。マチュピチュ到着を急がずに、私たちはかなり手前のガラガラなテント場で朝を迎えました。

まだ薄暗いうちにテントを出て、ヘッドランプをつけ、テント場から小高い丘へと登っていきました。

だんだんと明るさが増してくると、黒い山影と灰色の雲が広がり、一日の始まりがやってきます。
すると陽の光に押しやられたように、現れてきたのが雪を纏ったアンデスの山々。
その堂々たる姿に、インカの人々は脅威を感じていたとともに崇高し、そして守られていることに感謝を捧げていたのだろうなぁと、深く心に響いてきました。

Mt.Salcantay(6,271M) 
ビルカバンバ山脈の最高峰


余韻冷めやらぬ中、歩をすすめ、いよいよフィナーレへ。

トレイルの目的地マチュピチュへは、マチュピチュ山の裏側をグルッと巻いて、鞍部近くにある「INTIPUNK(太陽の門)」へ後ろ側から到着します。

この行程中、マチュピチュはずっーと見れずに、太陽の門から一望するという最高のフィニッシュなのです。

その道には、まるで祝福しているかのように色とりどりの花たちが咲き乱れていました。
中でも自然に咲いた「ラン」を見るのは初めてだったので、色の勢いの強さを感じ全身に震えがくるほどに。

花に疎い私は、これが蘭だとは!


最後は急な登りを迎え、息が上がったところに現れてきたのが念願の場所・INTIPUNK。

この写真を撮ったときは、まだ裏側なのでマチュピチュが見えていません

ここまで来るにあたり、ガイドブックや本を読み、どれだけ妄想しイメージしてきたことか…
門を越えた瞬間、目の前に広がった景色を、ただ私の脳だけが受け入れ感情がついていかずに涙だけが溢れ出てきました。

するとどこからかパチパチパチと拍手の音が!
そこに居合わせた観光客の方々が、みな讃えてくれたのです。
やっと自分を取り戻したときには、涙と鼻水で顔はくしゃくしゃ。

お誘いを受けたとき、悩みもせずに即決したインカトレイルの旅。
亡き母を懐かしみながら準備をして望んだこの日、最高のメンバーとともに過ごせたことが嬉しくてたまりませんでした。

人生ってすごいなー
出会いって素晴らしいなー
生きていると数年前には想像もつかなかったことが広がってくるもんですね!

全4回に渡り、ご拝読ありがとうございました。
9年も昔のことですが、思い出ってまた思い出せるから、「思い出」なんですね。
書いていて、楽しかったです!




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?