Sarah
今日なら甘えられる気がするのよぉ〜
そんな上機嫌に響く声は電話の向こうで珍しく酔っていた
大酒飲みではないけれど、そう簡単に管を巻くタイプではないサラが上機嫌で私の電話を鳴らした月も霞む曇り空の夜
別にそんな飲んだわけじゃないよ、楽しくなっちゃってぇ〜
楽しそうなのは別に口調から伝わるし家で飲んでいるようだから大した心配もいらないのだけど、いつもは私が大いに話してサラが相槌を打つことが大半で、いつも私の話にケラケラと笑う
私は大して話もせずに相槌を打つだけで、サラは鈴のようにというよりは大聖堂の鐘かのように笑い続けている
静かな真夜中にやたらと響く大聖堂の声は、久しぶりの電話で上機嫌
この間食べたランチのラムが美味しかったとか
新しい服を買ったのに着る休みがないとか
気に入っていたマスカラが廃盤になったとか
リリースされた曲がたまらないとか
そういうサラから聞く他愛もない話が私はすきだった
上機嫌に喋っていたのが、だんだん大聖堂の鐘からハンドベルくらいアンダンテになった
そろそろ眠いんでしょ?もう寝なさい
明日仕事なんじゃない?
そう促すが早いか、煩いなと口答えされるが早いかくらいでサラはすやすやと眠っていた
雲は晴れだし月明かりがカーテンの隙間から差し込めた真夜中
サラのところからも見えてるかしらね
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