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Amanda



アマンダは勝手なイメージをもたれるのが嫌いだった

小さい頃から名前負けしていると陰口を叩かれていた、名前のわりに身体が貧相だとか、顔が地味だとか、名前が豪勢すぎるとか、耳によく入ってきた

確かにアマンダと言う語感の割には地味な女の子で決して垢抜けたタイプでは無かった、だが誰もまともに顔など見たことがないくらいアマンダは髪が長いのだ


クラスでは一番前の席に座っても、一番後ろの席に座っていても気付かれないし、筆箱や教科書はよくなくなるし、ついたあだ名はキャベツ
恋愛を初めて知ったのはサマーパーティーで罰ゲームに飲まされたテキーラの味がしたし、初体験の思い出は農園の匂い

アマンダは学校を主席で卒業し金持ちで自分には無関心な両親や、自分をいびることとSEX、テキーラにしか学校生活の楽しみを見出せなかった同級生たちを捨てて、生まれ育った街から離れた市へと引越した
自分のことより出来がよく私とは似ても似つかない弟を溺愛している両親が手切金としてくれたお金で部屋をかりた、何も無い部屋
シャワーと、キッチン、ワンルームそれだけ
キャリーケースには手切金の札束と、列車で買ったチョコレート
札束から数枚抜いて、人生で初めて履いたホットパンツのポケットに押し込み何も知らない市で一番近くにある美容院に向かった

「いらっしゃい」
よく言えば趣があり、悪く言えば錆びれてる
三頭身しかないんじゃないかっていう老婆が出迎えてくれた
こっちよ、と3つあるうちの1つに促されて座ると見た目よりもふかふかとしていて自然と笑ってしまった
「どうかしたかい?」
いえ、ごめんなさいとだけ言って鏡越しに店内を見渡すと壁に古めかしいポスターがあった

あの人くらいにして、

そう口をついた
「あんなに短くかい?いいよ任せな
笑うと可愛い瞳がよく見えるべきだよ」


キャベツだと言われていた髪は玉ねぎやチコリよりも軽くなった
こんなにフェイスラインを風にあてるのはいつぶりだろうか
この市には誰も知っている人は居ない
私をキャベツだとか、蛹だとか、ホコリだとか罵るやつもいない
不思議と身体が軽い

「昨日引越してきたのかい、
いいとこだよここは、南に歩くと海が見えるよ」


海はきらきらとして、眩しくて、目が眩んだ
まるで自分のこれからを映してくれるみたいだ


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