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「牛に願いを」のかっちゃんがずっと愛しい。

 私は俳優の田中圭が好きだ。
 彼を好きになって最初にしたことは、彼が出演した作品を観まくるということだった。配信やDVDになっているものを探し、観られるものは片っ端から観てきた。「牛に願いを」もそのうちのひとつだ。

 「牛に願いを~Love&Farm~」は、2007年に放送されたフジテレビのドラマだ。
 ドラマの内容をすごく簡単に説明すると、主人公である高清水高志(玉山鉄二)を始めとする大学生たちが北海道の酪農家のもとへ実習に行った中で、酪農家の現実、自分たちの考え方の甘さなどに直面しながらも、友情を育みながら前を向いていく青春ストーリーだ。田中圭演じる芦崎克也ことかっちゃんは、そんな彼らを受け入れる側の酪農家のひとりだった。
 この頃の田中圭演じるキャラクターに多かった印象なのだが、かっちゃんは所謂当て馬とまではいかないが、顔面の良い主人公と結ばれそうな女の子に一方的に想いを寄せたり、思い悩む学生たちに浮ついた話を持ちかけながらも優しく声をかけるような、そんな脇役のポジションだった。少しシリアスに進んでいく中でもかっちゃんが登場すると場を和ませてくれるような、そんなある意味安心感のあるキャラクターで、私も最初はただその登場を楽しみに観ていた。しかし雲行きが怪しくなるのは早かった。かっちゃんと二人三脚で酪農を営むかっちゃんのお母さんが、心臓が悪く度々入退院を繰り返していた。これは間違いなくフラグである。母親を心配しては寄り添うかっちゃんは、絶対に訪れる未来へのフリだった。
 ドラマ後半、やはり亡くなってしまったかっちゃんのお母さん。そんなお母さんが、死に際に言ったのだ。「グラスウィンドがもう一度、競走馬として活躍する姿を見たい」と。グラスウィンドは、かっちゃんの家で世話をしている元競走馬で、怪我のため以前のように走ることが出来ないでいた。その話はドラマの中でも出ていたので、私も最初は「そうかぁ、かっちゃんのお母さん、グラスウィンドの走る姿が観たかったのかぁ。かっちゃん見せてあげたかっただろうなぁ」と鼻水垂らして観ていた。
 ところがどっこい。
 そのあとの話で、なんとかっちゃんひとり残された牧場には、ウン千万の借金があることが発覚したのだ。グラスウィンドどころじゃないよママ!!!
 もしこのとき、私の年齢がかっちゃん(10代後半~20代前半)と同じくらいの歳で学生だったのなら、違う視点で観られたかもしれない。途方もない借金に実感がわかず、呆然とするかっちゃん側の気持ちになれたかもしれない。しかしこれを観たときの私は、すでに我が子もいる母親だった。途方もない借金が、どれほど途方もない額なのかがより現実的にわかるし、それを背負わされる子供がどれほどの苦労をするのかも想像に難くない。かっちゃんのお母さんも、もし自分が病気で長くないことをわかっていたのなら、グラスウィンドよりかっちゃんでしょうよ。病気が酷くなる前にもう少しやれることが無かったの? 死んじゃったら終わりは自分だけで、かっちゃんの未来はこれからも続いてく。続かなきゃいけないのに、なんの保険もなかったの??? そんな疑問が後から後から湧いてきて、悲しくて仕方なかった。

 でもね。

 そんな中でかっちゃんは、誰に文句を言うことも無くそれを受け止めて、ひとりでどうにかしようとしてた。借金のことだって自分からは言わなかった。悩んで苦しんで、それを出さずに笑ってた。

 ドラマの終盤、かっちゃんがひとり、町を去っていった。

 遠い場所での酪農ヘルパーという仕事を見つけて、そこでグラスウィンドも見てもらえるからと。かっちゃんは借金を返しながら、いつかお母さんの願いを叶えられるかもしれない道を選んだ。

 かっちゃんが抱えることになった借金を知った町の人たちも、主人公ら仲間たちもかっちゃんのためにやれることはないかと動いていた。かっちゃんに懐いていた少年は、自分のお小遣いをかっちゃんとグラスウィンドのためにと貯金箱に入れて、行きつけのレストランでは「克也1人くらいいくらだってタダで食わせてやる」と笑ってて。それを影で聞いていたかっちゃんは、黙ってその場を去った。かっちゃんはそんな仲間たちを見たからこそ、町を出ていく決意をしたのだと思う。

 かっちゃんが諦めたことは、たぶん、ただ1つ。
 これからもこの町であたたかい人たちと、仲間たちと、ずっとずっと共に暮らしていきたいという自分自身の想いだった。

 このドラマは、最終的には青春ドラマらしくハッピーエンド。主人公たちがみんなそれぞれ成長し、前を向き、夢に向かって行く姿が描かれている。そんな中で、かっちゃんだけがいない。借金を抱えて、遠い場所でたったひとりで頑張っているはずのかっちゃんは、ドラマの終盤でお別れしてからは手紙の中にしか出てこなかった。

 とてもあたたかいドラマだったと思う。だからこそ、かっちゃんが可哀想で、とてもとても愛おしい。

 ドラマを観終えてからずっと、かっちゃんの幸せを願わずにはいられなかった。
 どうか幸せでいて欲しい。どうかどうか、グラスウィンドの勇姿をその目に映し、生まれ育った北海道の大地で、あの町で仲間たちと肩を組んで笑っていて欲しい。

 そんな渇望にも似た願いが、今でもやまない。

 主人公でもないドラマのキャラクターに対して、ここまで幸せを願ったことがなくて自分でもたまに引いてる。
 けど、やっぱり何度だって思ってしまう。

 かっちゃん、どうかどうか、幸せになって。

 以上、推しキャラへの愛語りをいったん終わります!!!

「牛に願いを~Love&Farm~」はFOD、huluで全話観られる(たぶん)から、観てね!!!!!!!

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