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ドラマ「牛に願いを Love&Farm」感想

 こんにちは、田中圭さんのファンです。以前書いていた感想を加筆修正いながらちょこちょこ載せていきます。

 このドラマの田中圭が演じた芦崎克也ことかっちゃんという役。私はこの役が好きで好きでたまりません。田中圭さんが演じた役はどれも魅力的で大好きなのですが、このかっちゃんには自分でも信じられないくらい心を揺さぶられました。
 ドラマとしては、青春を詰め込んだような青臭くて観ててとってもむず痒い内容。ところどころにつっこみ入れながら観ちゃうのは私がもう悟った気でいる大人になったということなのだろうけど、でもやはり「なんでだよー! どうしてそうなるんだよー!」という気持ちが拭えない。もしこのドラマの登場人物である彼らと同じ十代後半から二十代に差し掛かる学生の頃に観ていたら、酪農の未来に共に思いを馳せることもあったのかなと感じます。そして何より槇原敬之さんの曲がすごく良いんです。この曲のためだけにアルバムを買ってしまったくらい。聴くたびに、ドラマのオープニングやかっちゃんたちの未来に思いを馳せてしまいます。
 高清水高志(玉山鉄二)という主人公を含め、メイン5人を中心にストーリーは進みます。北海道の田舎から東京へ出て、スレてカッコつけて(個人の見解です)戻ってきた高志。官僚の父を持ち、エリートである兄に劣等感を抱きながらもリーダー意識の強い真野(小出恵介)。恋愛脳全開で彼氏がいるのに高清水のことが気になる彩華(相武紗季)。唯一最初から本気で酪農家を目指し、真面目ながらも空回りもする和美(戸田恵梨香)。宇宙人に興味津々の変人若松(オリエンタルラジオ中田敦彦)。お嬢様で婚約者有りの、片手間に実習に来た美帆子(香里奈)。そんな癖のある5人が、様々な問題にぶち当たり、互いにぶつかって成長していくわかりやすい青春ストーリー。しかしその中で語られている酪農家の実態、シビアな現実は目を逸らせないものがありました。私の推しキャラであるかっちゃんも、お母さんが病で亡くなった直後に発覚する莫大な借金と牧場の存続の危機という非常に重い現実と向き合っていきます。個人的には、かっちゃんのお母さんに対して「自分が危ないってわかっていながらもう少し何か準備してやれたんじゃない?」とか、かっちゃんがガチで大変な中で(なんとかコンクールで優勝したら的な)夢みたいな提案して盛り上がる高志たちに対してもいろいろ思うところはありましたが、ひとり苦しむかっちゃんを皆がどうにか救いたいと思うところはいじらしく、それでもうまくいかない現実に彼らと一緒に悔しくなりました。それに対して「俺はみんなが好きだから、負担になりなくない」と自ら去るかっちゃんはすごく健気で。前に「ここは田舎だし、娯楽が無いから、人の家の事情にみんなが首突っ込んでくるのが嫌」とを愚痴ってたけど、それ以上に町の人の温かさを知っているんだなあって、なんだかかっちゃんの人となりがまざまざとわかるストーリーでした。おそらく早くから母子家庭だったかっちゃんは、母と共に町の人たちにたくさん救われてきたんでしょう。負担になりたくないと言う前に、かっちゃんが行きつけのレストランの扉の前で中の会話を聞いてしまいます。店長(相島一之)が「克也ひとりくらい、腹いっぱい食わしてやるんだ」と言い、まだ子供である太郎(森永悠希)も自らのお小遣いを「克兄のためなら」と差し出し……。そんなあたたかい中の様子に、かっちゃんはレストランの前から立ち去ります。このときのかっちゃんの気持ちを考えるとたまらない。すごく嬉しいのに、そうさせてしまう自分が悔しくて。この町にいたい。でもみんなに迷惑かけたくない。辛い。苦しい。周りをあてにして、誰かに頼って生きていくしかない自分が惨めでしんどくて。そんなふうに思ったから、最終的に町を去ることを潔く決められたんじゃないかな。バスの前でのみんなとのお別れのシーンで、また笑顔で「ただいま」と胸張って帰ってこられる未来を見つめたかっちゃんの決意が見えました。圭くん、けっこうこういうお母さんが深く絡む役どころが多い気がするんだけど、それは圭くん自身がお母さんにすごく影響を受けて生きているっていうのも無関係じゃないと思います。そういうことは、きっと圭くんの役者としての糧になっているんだろうなと。同じようなことをドラマの中でもかっちゃんのお母さんが言っていました。全てを糧に出来るんですよね。特にドラマの中のかっちゃんたちの世代は。大人やおせっかいな人たちは、そういうのを若者に教えたいんです。だけどうまく伝わらない。それをどうにか伝えようとしていたドラマだったように思います。
 実習生5人のストーリーもそれぞれ盛り込まれていますが、個人的には(ファンなのも手伝い)かっちゃんメインの回がとても印象的でした。他の子たち、どうしても偽善者的な面や夢を見すぎているような印象も持ち、随所に気になる点があったのが正直なところです。住民投票など政治的要素も組み込まれていましたが、賛成が一票も無かったらなんて無理だし、「俺は賛成に入れた」という高志の言葉には、ただ怒るのではなくもう少し耳を傾けてほしかった。突っ走る若者を描きたかったんでしょうが、冷静な役がもうひとりくらいいても良かったんじゃないかな。かっちゃんが感情を露にするシーンもありますが、美帆子がかっちゃんのお母さんの元で泣いているときに黙って二人を見守っている様子も良かったし、お母さんのことで余裕が無くなっているときに思わず怒鳴ってしまったり、お金に困っているのを高志たちに知られてプライドが傷つけられたところなど、感情の発露がとてもうまかった。かっちゃんの涙はとても綺麗で、切なかったです。
 タオル振り回すのが明日遊ぼうの合図だとかっちゃんが言い出した時には、別れのシーンで使われるんだろうなと思い、そして全て予想通りでしたが号泣しました。「高兄、高兄」と繰り返し叫び泣くかっちゃん。恥も外聞もなく、ただ高志に届くようにタオルを回して、それはお互いが見えなくなるまで続きます。今は色気のある役も難なくこなす圭くんですが、この頃は純朴な感じがすごく「あーいるいる」っていう田舎の青年で、良い意味で野暮ったく演じていました。近年の魅力は近年の圭くんのものなのだと改めて感じました。彼は進化しています。この頃の純朴さを失わず備えているのがとても強い。あと、かっちゃんと別れたあとの高志の「克也ひとり守れないこんな町消えてしまえ」という急な重い愛も個人的には良かったです。
 実は解決していないことやあやふやのままのことも多いですが、それでもみんなが前を向いて未来に希望を持って終わった素敵な最終回だったと思います。現実もなかなか全部は解決しないしね。そして田中圭さんのファンとして、かっちゃんには愛しさしか感じません。何度も会いたくなる役でした。
 

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